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2011-09-12

[]本や同人誌という媒体に愛着を寄せる人たちへ:『本フェチ』

かれこれ2ヶ月近くまともな更新をしていませんでした。その間にコミケコミティアも過ぎ去り、買ったマンガも相当数溜まってきています。

仕事が少しだけ落ち着きを取り戻しつつあるので(忙しいのは相変わらずですが)、久し振りに更新をしてみたいと思います。しばらくの間はコミケやコミティアで購入した同人誌の紹介が多くなるかと思います。


まず最初にご紹介するのはこちら。


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武川優『本フェチ』(サークル:本フェチ倶楽部)


武川優さんは同人誌・自費出版の印刷会社として知られる緑陽社の社長さんです。ご自身のブログや twitter もお持ちですね。


またこちらの同人誌は、既にアキバblog さんでも取り上げられているので、既にご存知の方は多いかもしれません。とは言えやはりこれは紹介しておきたいので、遅きに失した感はありますがあれこれと書いてみようかと思います。


上記リンク先、ならびに記事タイトルを読めばお判りのように、この同人誌で取り扱われる題材は「特殊装丁」です。同人誌は商業出版に比べ部数が少ない傾向が強く、且つ作り手と印刷会社で直接やり取りを行うことが可能であるため、(資金面・納期等は別問題として)装丁においても作者の要求(或いは欲求)を強く反映させることができる媒体と言えましょう。*1

『本フェチ』も、特殊装丁を題材とする同人誌に相応しく、実に独特な装丁をしています。


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函入で、函の正面左上には本体のロゴが見えるように空間があります。

そして本体の文字部分は銀箔を使っているのでしょうか?顔が映ります。書影の写真を撮る際、自分の顔が映り込まないよう注意しなければなりませんでした。(´ω`)


装丁のみならず、当然内容も充実。

冒頭を飾るのは、村田連爾さんと星野リリィさんの対談。


村田連爾さんはアニメ放映が近付いている『ラストエグザイル』のキャラクター原案を担当されたり、1990年代半ば〜2000年代前半に雑誌「快楽天」の表紙イラストを描いたり・・・というのは既に多くの方がご存知かと思います。イラスト集も多数出していて、これがまた独特の装丁をしているのですよね。『fufurhythm』は第38回造本・装丁コンクール展で日本書籍出版協会理事長賞を受賞しているとのことです。


[re futurhythm] standard edition

[re futurhythm] standard edition

(こちらは廉価版。基本的に村田連爾さんのイラスト集はすぐプレミアが付きます。)


星野リリィさんはBL作品を多く描きつつ、少し前には「BIRZ」で連載している『おとめ妖怪ざくろ』がアニメ化しましたね。また、『輪るピングドラム』のキャラクター原案も担当されています。同人活動も並行して行われているようで、かなり特殊な装丁を凝らした同人誌を多数作られているとのこと。


輪るピングドラム 上

輪るピングドラム 上


そんなお二方が、特殊装丁について語り倒す対談。特殊装丁の同人誌を作った際のエピソード・裏話や苦労話、好みの紙質の話等、10ページにわたり対談が続きます。無闇に専門的な用語(「クロマティコ」「エヴァネソングロス」「ハイバルキー」とか。何れも紙の名称らしいです)も度々登場し、無闇に濃い内容となっています。本そのものへの情熱が迸っているのが体感できるかと思います。


そして45〜85ページでは、数々の特殊装丁同人誌が紹介されています。全てオールカラー・図版付で、その同人誌を作った作者さんの詳細なコメント(アンケートの回答)も掲載されており、非常に資料性の高い内容となっています。高橋留美子さんの大学漫研時代の作品を復刻した『高橋留美子選集』とか、現物を見たことはおろか存在すら知りませんでしたよ。

1990年代、いわゆる同人バブルとでも言える時期の、噂でしか聞いたことのない贅を尽くした同人誌も多数収録されています。高河ゆんさんが作った「ビニールカバーで中に水と銀ラメが入っていて、本を傾けると銀ラメが煌めきつつ動く同人誌」とか、川原つばささん*2の作った「豪華声優陣*3に依頼して制作した自作ドラマCD付同人誌」とか、同じく川原つばささんの「香水入り同人誌」とか。


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ここに収録されている特殊装丁同人誌で自分が持っているものは、フランス表紙にレインボー箔を用いた司淳さんの同人誌『GunBlue』くらいでした。この世界は奥が深いですね。



巻末に掲載されている「同人誌の歴史と社会動向」は基本的には『コミックマーケット30’sファイル』に収録されている年表の転載ですが、発行時期の関係で同書に収録されていなかった2004年以降の情報が追加されており、これもまた簡潔ながら高い資料価値を持つ内容です(強いて言えば、映画とライトノベルの項目がもう少し詳細だと嬉しかった気もしますが、これは無いものねだりというやつでしょう)。



装丁に関心のある方、本好きの方は必読の1冊だと思います。

と、些か長くなりましたので、本日はこのあたりにて。

*1:商業誌においてもカバーの装丁・特殊な版型・革装・クロース装・上製本・豪華本等々かなりのバリエーションが存在する訳ですし、フランス綴じとか海外の装丁はまた特殊だったりしますが、これもまた別の話題ということで。

*2:BLファンタジー(という括りで大丈夫でしょうか?)の『邪道』シリーズで有名ですね。表紙イラスト・挿絵を担当されている沖麻実也さんによるコミカライズもありますね。

*3:図版によると、安達忍鈴置洋孝佐々木望子安武人大塚明夫他。このメンバーを同人CDで依頼できたというところに時代を感じます。

なかねなかね 2011/09/13 09:48 この本、知らなかった!
早速、秋葉原へ買いに行かねば。

>同人誌は商業出版に比べ部数が少ない傾向が強く、且つ作り手と印刷会社で直接やり取りを行うことが可能であるため、(資金面・納期等は別問題として)装丁においても作者の要求(或いは欲求)を強く反映させることができる媒体と言えましょう


戦前から昭和40年代ごろまで、斎藤昌三を代表とする愛書家たちは
凝りに凝りまくった装丁の(主に私家本として)限定本を作っていた過去があるんですが、どこかそれを髣髴とさせます。

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