『ボクシングはなぜ合法化されたのか』

夕刻からの会議のあと、同僚である著者から手渡しでご恵贈いただいた本。もう少していねいに読んでからの感想は、ご本人に直接お伝えするとして、まずは紹介しておきたい。
イギリスにおけるスポーツの近代化を同国の刑法との歴史的な関わりを通じて論じている。中世の弓術からアニマルスポーツ(牛掛け、牛追い、あなぐま掛け*1、闘鶏、鶏あて、あひる狩り、りす狩り、うさぎ狩り、闘犬など)、それらにつきものの賭博、そしてボクシングがとりあげられ、それらの正当性の根拠が考察される。前著『近代スポーツの誕生』でおなじみの話題もあるが、そこにはおそらく収めきれなかった、膨大な資料を渉猟して得られた数々の歴史的事実や興味深いエピソードなどが盛り込まれている。キモになるのは、安全化の流れの中で、それでもスポーツに含まれてしまう「暴力」が、どのように法的に正当化されていくかであり、その中心となるのは、中世まで遡ることが可能とされる「免責される殺人」の規定が、どう近代的なものに書き換えられてきたか、ということになるのだろう。そして本書は、刑法を分析装置としたことで、イギリス近代の社会史の一面をクリアに描き出すことにも成功しているように思われる。


ボクシングはなぜ合法化されたのか―英国スポーツの近代史

ボクシングはなぜ合法化されたのか―英国スポーツの近代史

*1:グレイハウンドのgreyって、そもそもはアナグマを意味しただなんて知ってました?