ぼちぼち そこそこ

脱力と諦観でつづるおっさんの日常

そこまでやるか、立命館

ひさしぶりに書きます。ひさしぶりに立命館がやってくれましたので。以下は京都新聞。

新入生に転部募る 立命大・生命科学部 定員超過で
 立命館大(京都市)が4月にBKCびわこ・くさつキャンパス草津市)で開設した生命科学部の入学者が定員を大幅に上回ったため、入学者に他学部への転籍の希望を募ったことが14日、明らかになった。大学側は「教学上の配慮」と説明しているが、入学後の転籍募集は異例で、混乱も出そうだ。

 立命館大によると、生命科学部は定員280人に対して、一般入試や推薦、内部進学などで414人が入学手続きを行い、1・48倍の定員超過になった。本年度の入試が初めてだったため、大学の見込みよりも一般入試の合格者の多くが入学手続きをしたためという。

 生命科学部は、実験などで少人数クラスを基本にカリキュラムに組み込んでいる。大学側は大幅な超過は教育を進める上で支障になると判断し、他学部との併願者も多かったことから、転籍の希望を募ることを決めた。現在8人が転籍を希望しており、本人の意向をあらためて確認している段階だという。

 本年度は入学定員の1・4倍を超えると私立大学経常費補助金の対象から除外されることになるが、「補助金不交付を避けるためではなく、あくまで教学上の問題」(教学部)としている。

 立命館大では1990年代にも国際関係学部などで入学定員の超過により転籍募集を行っているという。

開設初年度だから歩留まりの予測が難しかったのはわかりますが。当欄じゃないですが、合格者数をそこそこ、ほどほどにしておけばいいのに。
毎日新聞によると、以下のようです。

立命館大:入学補助金基準を超過、新入生に転部募る 生命科学部、定員の1.5倍
 立命館大(京都市中京区)で今春開設された生命科学部(滋賀県草津市)の入学定員超過率が1・48倍にも達し、大学が同学部の新入生から、他学部への転籍希望者を募る騒ぎになっていることが14日、分かった。補助金受給や新学部設置への影響を懸念した措置とみられる。難易度も受験科目も違う学部への転籍が可能で、内部では「学生側への十分な説明もなく、不公正ではないか」との声が上がっている。

 関係者によると、生命科学部の今年度の入学定員は280人だったが、予測を大きく上回る414人が入学手続きをした。

 文部科学省の私立大学等経常費補助金は、定員超過率が1・40倍を超えると交付されない上、補助金不交付の理由を付さずに公開されたり、新学部の設置を制限されたりするなど、大学運営に支障をきたす可能性がある。

 このため、同大学は定員超過率が1・39倍となる学生数389人に目標を設定。今月初め、25人の転籍希望者を募集し、応募した8人全員の転籍が認められた。選考は無料で、転籍志望理由書の審査や面接の総合評価で行われた。国内私学文系では最難関クラスの国際関係学部や生命科学部よりも難易度が高いとされる法学部への転籍も可能だった。

 転籍者からは転籍先学部の学費との差額を徴収または返還し、生命科学部の教科書を購入していれば費用も返還。学生証番号も変更となり、事実上は転籍先学部の新入生と同じ扱いとなる。

 立命館大は「このままでは教育条件の少人数教育ができなくなるし、補助金をもらえなければ他学部にも迷惑がかかる」としている。

こっちの記事によると、補助金目的なのが見え見えですなあ。このままだと超過率オーバーだから、補助金は入らないことになります。補助金は入らないわ、新聞には書かれるわ、で散々ですやん。
私立大学等経常費補助金取扱要領によると、補助金交付の有無は5月1日時点の在籍数で決まるみたいなので、今月中にいろいろ動きがありそうですなあ。こうなったら奨学金(迷惑料)でも出して学生をつるしかないのかなあ。
立命館は京都大学「連携協力に関する基本協定」を締結してるらしいし、京大への転学というウルトラCとかだめでしょうか。
立命館のHPには、こんな記述もありました。
文部科学省経常費補助金予算額と本学補助金の推移

立命館大学の私立大学等経常費補助金は、2005年度に学園史上最高の51.8億円(一般補助:28.1億円、特別補助:23.7億円)を得、はじめて50億円を突破しました。これは、「一般補助の停滞・減額と特別補助の漸増」という厳しい補助金動向のもとで、補助金獲得に向けた全学をあげた取り組みの成果であり、新学部・新学科設置などによる学生数増加、教員体制整備、補助項目に効果的に連携した教学創造・改革などを反映したものです。

「もらえるものは1円たりとも逃さない」との強い意思がにじみ出ていてあっぱれです。04年度私立大学等経常費補助金交付全国ベスト10によると、立命館は第5位で、京都ではだんぜんトップとなっています。このへんも意識してるんでしょうか。
ちなみに全国1位は日本大学です。これは立命館でなく、日大の話ですが、このあたりのコメントも生々しいですなあ。

さきごろ公表されたR&Iからの格付け「AA」は,国内の学校法人では最高位の評価です。これは,本学が組織を挙げて補助金に対応している結果であり,今後,本学の総合力を結集することで補助金の上乗せも期待できます。15年度も大学院関連や高度の学術研究に対する新規の特別補助が創設されますので,教職員が一丸となって積極的に申請し,補助金の増額を目指していただきたいと思います。

日大は学生数がけたはずれに多いから別格でしょうが、補助金が多ければ大学のランクが高いということなんでしょうか。すくなくとも私大関係者にはそういう意識があるんでしょうか。
立命館の話に戻りますが、今後は学生から「小人数教育といったのにそうならないのは契約不履行だ」として提訴とかあるのかなあ。こういう事態って、他の私大関係者はどうみてるのかな。これだけ大学のイメージがあがっているのに、なんかもったいないですね、立命館さん。

追記

転籍問題について大学側からコメントがでてますなあ。

京都新聞の取材には補助金が理由とは認めていなかったのに、一転、補助金が理由だと認めています。一方、気になるのは、報道機関の取材に対しては答えている転籍の人数に触れていないことです。ということは5月1日までまだまだ「工作」(毎日新聞)をやっていくってことなのかな。
これだけたたかれても、「適正だった」って、懲りないよなあ。
航空会社とか、オーバーブッキングだと、お金やマイレージがもらえたりするはずです。さらに「工作」を続けるのなら、4年間授業料免除とか真剣に考えないといかんのではないでしょうか。
もう一点。そもそも歩留まりはどうやって決定しているのか。朝日新聞によると、以下のようです。

同大学によると、びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)にできた生命科学部には一般入試で9298人が志願し、2957人を合格とした。入学手続きをした学生は、推薦やAO入試も含め415人に達した。

定員280人に対して3000人近くが合格というのが素人ではよくわかりません。立命館の担当者は2957人(これに推薦やAO入試も入ってくるんですが)の合格者のうち何人が入ると考えたのでしょうか。280人から390人の間であるのは間違いないのでしょうが、詳しく知りたいところです。
それと、上記の日大のコメントはカネの話とわかっていたんですが、なんとなく大学のランクの話にすりかえてしまいました。
あらためてカネの話で調べてみました。
キーワードは、格付け、財務、学校債といったところでしょうか。
補助金をたくさん得ていることが大学の経済的な信用につながり、その信用が高まる(格付けが上がる)ことで、また補助金をたくさん得られるという構図みたいです。
大学の格付けについては、日大のコメントにもあるR&Iが詳しいです。↓
http://www.r-i.co.jp/jpn/rating/rating/rating_list/school_jpn.pdf
そして、学校債は私立だけでなく、国立大学も出してるんですな。↓
http://www.zam.go.jp/o00/pdf/060208.pdf
これは立命館の2006年度財務。↓
http://www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/koho/zdb2007/zaisei_02_02.html
立命館の幹部が国立大学財務・経営センターの論文集に寄せている論文も興味深いです。↓
http://www.zam.go.jp/n00/pdf/nf003010.pdf
このなかでは「大学の教育・研究活動は『非営利であっても事業(ビジネス)である』」と言い切っています。今回の転籍もその延長線にあるんでしょうか。他にも「『教授会自治』の弊害は顕著である」とも言ってるんですが、まあここではおきます。
大学経営ついでにこんなのもありましたので、挙げておきます。
立命館と早稲田の経営比較
まあ、今回の件のような当局の方針は、教職員組合には評判はよくないと容易に想像できます。日本私大教連の08春闘方針でも立命館の現状について以下のように触れています。

また立命館大学でも、2005年度の一時金カット強行にはじまる闘いが、学園運営の民主化を求める段階に進んできています。立命館大学では長年、業務協議会方式をとり、労使の協議を重視して政策の協議・一致をはかってきましたが、近年、教学政策ですら全教授会が反対や強い懸念を表明しても強行するなど、理事会によるトップダウンが急速に強まっており、職場や教職員にさまざまなフリクションをもたらしています。
組合の春闘方針において、教職員・職場の気分・要求を踏まえ、学園政策の意思決定や進め方に危惧を表明しましたが、理事会はその中に「当局の拡大路線」との文言があったことを取り上げ、これまでの労使協議の到達点を組合が一方的に逸脱したとして、組合に対し「総括と謝罪」を求め、それを理由に春闘交渉の引き延ばしや制限をかけてきました。他にも同様のことが繰り返されるなど、これらに象徴されるように、理事会は組合を敵視する態度を強めています。また理事会は、学生との交渉においても同様の態度を示しました。学生自治会が前理事長・前総長への退任慰労金大幅増額反対の取り組みを進めたことに対し、役員の学生を個別に呼び出して方針変更を迫ったり、議題から取り下げないと交渉に応じないという態度をとりました。
立命館大学の組合にとって、学園の民主主義を取り戻すことが課題となってきています。

いやあ、やっぱり立命館はいろんな意味で話題の中心にいる大学ですなあ。