02. スクール・オブ・ロック

スクール・オブ・ロック スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

スクール・オブ・ロック スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

万人向けの爽快感

前回がアレなんで、本作は誰にでもお薦めできる(最近では珍しいくらいの)映画です。一通りの内容紹介は画像のリンク先を見てもらうとして、楽しかったのは、クライマックスでカタルシスを得ることに素直に乗っかれるとこです。細かな設定には目をつぶり、気持ちを高めていくといいでしょう。Yeah!
ですが、難題もあります。怪優と呼ばれる、主役のジャック・ブラック(↑写真)、この人のウザさにどんだけ耐えられるかというのがあるんです。苦手な人だと途中で疲れちゃうかも。そういう意味で『スクール・オブ・ロック』の爽快感は山登りに通じるものがあるかもしれません。
ところで、ロックに通じてる人はさらに楽しめるのでしょう。僕は詳しくないんですが、サントラは買っちゃった。曲、選曲がすごくいいです。
オリジナル・サウンドトラック スクール・オブ・ロック

天才子どもミュージシャン【ネタバレ】

こういう設定の映画の場合、子どもに演技だけさせて演奏をさしかえたりということはあり得ることだと思うのですが、本作では違います(メイキングより)。北米から天才子どもミュージシャンをオーディション(またはオファー)し練習したそうです。だから、クライマックスの物語、ステージ演奏(あ、いっちゃった)が凄い! 迫力あります。
ジャック・ブラックのおっさんダミ声 & ちびギャルの高音ハーモニー & 男子の勢いある演奏 & などなど。さらに、演奏曲がキャッチーでノレるから、必見ものなんです。
ここを妥協しなかったから、ハリウッドでありがちな子供・動物・家族万歳、お気楽モノとは完全に一線を画する映画になったんでしょうね。

ロックの学校という矛盾【ネタバレ】

文句なしとはいいつつも、見た後に少し考えちゃうことがありました。エンディングのこともあったんですが、作中でもいわれる「ロックの本質」=「反抗」というのを考えたときに、この映画収まり良すぎないか? という疑問。みんなで楽しくロックを学んで問題解決となれば、それはロックじゃないだろう。いいがかりのようにも聞こえますが。ジャック・ブラックの扱いもうま過ぎる。
本作ですっかりジャックのウザさの虜となった僕は、試しにほかの出演作『ハイフィデリティ』もチェック。微妙に同様な使われ方。でもその効果は本作が上。
ハイ・フィデリティ-特別版- [DVD]
少しわかりやすく例えましょう、薬のベースに毒薬(ジャック・ブラック=「反抗」)をまぜて良薬(「秩序」「調和」)をつくるイメージです。これって危険じゃない? 悪く言えば、社会秩序維持のためにガス抜き(→ロック)を利用するイメージ。こうなると、その謎のアルケミスト、黒幕は誰だ!? てことになります。

監督リチャード・リンクレイター【別作のネタバレ】

で、監督を検索したのですが、『ウェイキング・ライフ』の監督であり、米インディペンデント映画あがりの人とのこと。…もう笑うしかありません。監督自身がロック、反抗の人らしいのです。    google:リチャード リンクレイター
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『ウェイキング・ライフ』はデジタルアニメーションの技術や、実験的なストーリー(延々セリフが長かったり)が注目されます。だけどテーマはタイトル通り、大人になる直前の青年の感情、他人との距離で自我を確立し、人生に目覚め、やがて社会への融合というシンプルで普遍的なものだと思いました。(それまでが結構退屈なんですが)
この映画は、以前に恵比寿の劇場で見たのですが、そのときは、大掛かりにこういう映画を作った人は大人になるのに苦労したんだろうなぁとか、自分もこういうモヤモヤしてた時期があったなぁとか簡単に思ったもんです。それが『スクール・オブ・ロック』に至るとは。
実際、ハリウッドメジャーに対して、この監督さんは非常に戦ってるようです(本作の音声解説版など)。一方で、ロック野郎を活かすことにも長けてるんでしょうね。保守的秩序派では決してないわけで。
リチャード・リンクレイター作品には、これからも、ピリリとした娯楽作を期待してしまいます。前の作品もチェックしたいな。
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