17. トレインスポッティング

トレインスポッティング (角川文庫)

トレインスポッティング (角川文庫)

サブカルチャー

また世紀末モノで申し訳ないですが、ある意味とても明るい作品です。内容紹介は、Amazonから怒涛の引用で。

内容(「BOOK」データベースより)
ドラッグとアルコールと暴力とセックスに明け暮れるエディンバラの無気力で身勝手な若者たち。仕事なし、将来の望みなしの無意味な毎日。絶望的な状況の下、ヘロイン中毒まっただ中のレントンは、明るい未来へのサバイバルを狙っていた―。ケミカル世代の熱狂的支持をうけた90’sを代表する英ポップ文学の傑作。

内容(「MARC」データベースより)
舞台はイギリス・スコットランドエディンバラ。仕事はない。学歴も役に立たない。金、酒、女、法律と悩みとしがらみはつきない。ジャンキーたちの繰り広げる騒ぎ。映画「トレインスポッティング」の原作。

映画版が有名です。ユアン・マクレガーかっこよかった。僕も映画から入ったんですが、ずっと違和感をひっぱってました。ラストがなんというか、「拝金主義」に感じたわけです。
トレインスポッティング 特別編 [DVD]
さて本作は、ジャンキーカルチャー、英ポップ文学、斬新な時代感覚とお上品に形容されがちで、時代状況がかわりモードがかわりで、流行っただけにすぐ忘れられるものかもしれません。
だけど単純に、映画に収まらなかった数々のエピソード(主に不幸話)を、しみじみと「みじめやなぁ」と感じつつ、リアルさに少し恐れながら、今読むのも、またアリかと思うのです。

ユーモアの源は不幸【ややネタバレ】

一つ僕にとって忘れられないエピソードを紹介します。
主人公の友人の1人。彼は、美しくフェロモン旺盛(おそらくセックス能力も)なため、ゆかいな無職仲間達とはバカンスの過ごし方が違います。南仏等で、その時その時の恋人と過ごすのです(買われている?)。そんな彼も新年となると、楽しくゆかいな無職仲間達と合流し、貧乏パブで過ごします。そんな彼らを見つめる視線が1人。パブで飲んだくれてるオッサンが思います、若者の1人は息子だと。オッサンは若い頃、何人もの女たちに惚れられ、相当な数の子供を産ませました。ただし、それも酒が彼の顔つきを変え、しょぼくれるまでのことなのですが。。彼は息子を見つけても、かける言葉もない。いや、もとからないと気づきます。

こんなに端的に、家族の崩壊、人間の過去と未来の因果を感じたお話もないし、どんな業があればこんな輪廻地獄みたいな状況に追い込まれるかと考えると、かえってさばさばとした不思議な気持ちにもなれます。
こうしたキッツイ話、貧困、ドラッグ、エイズなど、人間としての底辺の辛いエピソード集ともいえる本作ですが、何故かドンヨリした暗さはなく、逆転マジックで笑えるところが魅力です。
とはいえ、たたみかける不幸話の連鎖、この積み重ねでくる閉塞感は相当なもので、それゆえに終わりのない物語(=現実)となりかけるのですが、(小説では「出口」とつけられて)映画にもあるラストエピソードで収束します。ラストについては、原作読んでからは、「拝金主義」以前の現実からの脱出チケット、物語を終わらせるための便宜的な仕掛けとも感じたしだいで、わりと納得。
ブラス! [DVD]
ちなみに、この手のブラックユーモアが苦手な人、またそうでなくても、本作と比べて面白いのが映画『ブラス!』です。こちらもユアン・マクレガー(わざと?)出演。イギリスの炭鉱町のお話で、似たような社会状況(二人目のパパとか)ですが、こちらは一転して人情話なんですよね。

ニートカルチャー

僕は本作をわりと普遍的な話だと感じる性格なんですが(本当は全く無縁だと自信もって言いたいよー)、この小説が当時の時代感覚を見事に表現し、評価されるのも当然だと思います。
今読んで、古いとか懐かしいとか、感じ方は人それぞれなんでしょう。
ところで、本作にならって、日本でもニートカルチャーみたいなのでてくるのかなぁ、と無責任に考えてる昨今ですが、どうなんでしょ。
リアル鬼ごっこ (幻冬舎文庫)
知人に教えてもらった『リアル鬼ごっこ』は、成り立ちは自費出版で少しそれ臭いのですが、内容自体は空想モノなので、こうガツッとした辛さが(僕には)足りませんでした。たぶん地面が抜けるような理不尽さがウリなのかな。
電車男
この際、『電車男』を映画化するときに、励ましや「善」カキコをする人たちをチラチラ映像にして、み〜んな現実辛そうな感じにするのはどうでしょうか。
例えば、「電車男がんばれよ♪」とカキコしてる人が、ゴミ溜めみたいな部屋で、無造作ロンゲで、部屋のドアが「ドンドンドンドン!」とノックがなってたり。例えば、「プレゼントちゃんと返せよ♪」とカキコしてる人が、やはりゴミ箱部屋で、裸の彼女にティッシュ箱投げつけられてたり。延々そんな感じで、電車男自体はピュアな恋愛が進んでいく、と。なんか意味深く味付けされると思うんだけどどうだろう。
…ちょっと悪ノリ。カキコした人で、ここ見てる人いたらゴメンナサイ<(_ _)>