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2009-01-11

ガザの虐殺をとめられるのは誰か(1)

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 昨日の朝刊で、読売・朝日・毎日新聞がガザの停戦を求める社説を一斉に掲載していたので、まとめて紹介します。はたして全国紙バグ発生率は販売部数に比例するのか?*1日本のクオンティティペーパー*2を検証します。

 まずは朝日から。

ガザ停戦 国連決議を受け入れよ (2009.01.10 朝日新聞 社説

 パレスチナ自治区ガザに対するイスラエルの侵攻について、国連安全保障理事会がようやく即時停戦を求める決議を採択した。

 空爆開始以来、民間人を含む約800人の死者が出ている。イスラエルと、ガザを支配するイスラム過激派ハマス双方は、速やかに決議を受け入れ、流血を終わらせるべきである。

 安保理の決議採択の後も、ガザではイスラエル空爆が続き、ハマスロケット弾を撃ち込んでいる。国際社会の圧力を横目に見ながら、双方とも相手を挑発しているとしか思えない。

 めんどくさいので、この手のバクをまとめて「アサヒバク」と呼ぶことにする。

 アサヒバグは特定の状況下で比較演算子を無効化するバグである。よくある例としては、「派遣切りに遭い、仕事も住居も失ってしまった人たちは、たしかに辛いだろう。だが、派遣切り経営者にとっても苦渋の選択だ。ここは労使が一丸となって難局を打開することを期待したい」「少女を自殺に追い込んだいじめは到底許されるものではない。だが、いじめを受けたからといって、安易に死を選ぶ少女の弱さもいかがなものか。今こそ子どもたちに命の大切さを諭す教育の実践が求められる」など。責任の大きさを比較しようとすると、Balance関数に飛ばされてしまい、無意味な出力(「どっちもどっち」)が返される。

 

 それから、イスラエルと、ガザを支配するイスラム過激派ハマス」っていうのは、「ガザの占領を続けるシオニズム過激派イスラエルと、ハマス」に言い換えた方がいいよね。少なくとも、誰が誰に何人殺されようと朝日新聞様の中立フレームには何の影響もないぜ、とか公言するつもりがないなら。

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http://www.guardian.co.uk/world/interactive/2009/jan/03/israelandthepalestinians

 停戦を実現させ、継続させるためには、決議でふくらんだ期待をしぼませてはならない。米欧はイスラエルの説得に全力を挙げ、アラブ諸国ハマスに働きかけてもらいたい。日本も安保理非常任理事国として、決議の受け入れに向けて当事者に直接働きかけるべきだ。

 即時停戦を呼びかけようという安保理の動きに抵抗してきた米国は、採決を棄権した。拒否権を使わない形で、米国なりに停戦を求める国際社会の大勢に従ったということだろう。

 「米国なりに停戦を求める国際社会の大勢に従った」って、どう考えても従ってないじゃん!従うなら賛成したところをあえて棄権してるんだから、最大限好意的に解釈しても、「勝手にしやがれ」ってことでしかないじゃん。自分の誕生日を宣伝したmixiの日記に、やたら足跡ばっかりついて書き込みが一件もないのに、「みんななりに俺様の誕生日を祝ってくれた」って、どんだけ自分をごまかしてるんだよ?

 決議は停戦を暴力の一時的な停止に終わらせず、永続化させ、平和の構築につなげるよう求めている。そのためには中東和平プロセスの推進者である米国が、積極的に関与する必要がある。20日に就任するオバマ次期大統領はすぐにも事態の沈静化と和平交渉再開に向けて動くべきだ。

 だから、その「中東和平プロセスの推進者である米国」ってのが幻想だから。

 決議は、ハマスアッバス議長が率いる穏健派ファタハとの和解も求めている。停戦後のガザの統治ではファタハの関与は欠かせないのだから、早く対話に乗り出してほしい。

 そもそもイスラエル生存権を認めないハマスと、ハマスを「テロ組織」と決めつけるイスラエルが直接ぶつかり合う構図になっていることが、ここまで事態を悪化させ、犠牲を増やした要因である。

 ハマスが「過激派」でファタハが「穏健派」であるというのは、被占領地では沈黙を守ることこそが平和的であると言っているようなものだ。沈黙を守る最良の方法は、占領者と手を結ぶことかもしれないし、占領者に殺してもらうことかもしれない。

 あと、「イスラエル生存権を認めないハマス」ってのも大嘘だ。ハマスは別に「イスラエル国籍をもつユダヤ人を石鹸にしろ」とか言ってるわけではなく、イスラエルが1967年の第三次中東戦争の境界線(グリーンライン)まで撤退しない限り、イスラエルとは交渉しない―つまりイスラエル国際法国連決議を遵守するべきだ―と主張しているにすぎない。

 「生存権を認めない」というのは、たとえば、約110人の住民(半数が子ども)を誘導して一箇所に閉じ込めた上で、そこを何度も砲撃して32人もの人々を殺したりすることだ。イスラエルこそ、そしてハマスを「過激派」と「決めつける」朝日新聞こそが、パレスチナ人生存権パフォーマティブに否定しているんじゃないのか。

 P-navi info:「雑感:ファタハが『穏健派』?」

 http://0000000000.net/p-navi/info/news/200701172353.htm

 イスラエルとの和平を前進させるには、パレスチナ側が統一した立場を決めなければならない。ヨルダン川西岸のファタハは和平を推進し、ガザのハマスは拒否するという分裂した対応では、混乱するばかりだ。

 パレスチナ側が統一されていようが一人一政党を掲げていようが、イスラエル軍が撤退しない限り和平が前進するわけない。

 ファタハハマスの和解のためには、かつて両者による連立政権づくりを仲介したサウジアラビアや、昨年後半、和解協議を仲介したエジプトが両者を招き、改めて和解のテーブルにつくよう強く働きかける必要がある。

 ガザではこれまでに3200人の負傷者が出ている。イスラエルによる1年半にわたる経済封鎖で、病院には麻酔や医薬品が払底している。決議はガザ全域での人道支援の提供を要請している。日本は緊急医療チームの派遣など積極的に加わる姿勢を示し、停戦受け入れを双方に迫るべきだ。

 ガザでは医療物資が不足しているだけでなく、病院そのものも攻撃対象になっている。「緊急医療チームの派遣」を本気で提案したいなら、ファタハハマスの「和解」よりも何よりも先に、イスラエルに攻撃停止を迫るべきだ。

 と、ここまで書いた時点で、こんな記事を見つけた。イスラエルユダヤ系市民の92%は、「(ガザの)インフラや民間人に被害があっても、ガザへの空爆正当化される」と考えているらしい。今さら驚くのは欺瞞だろう。これがパレスチナの現実だ。

 イスラエル市民9割、ガザ攻撃支持 「被害出ても正当」

 http://www.asahi.com/international/update/0110/TKY200901100091.html

 次は毎日新聞です。

*1:ただし産経は除く

*2マルクス主義弁証法(「量も積もれば質になる」原則)によりクオンティティペーパーに転化する

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