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2009-02-10

仕組まれた無知の連鎖――後退する中東報道(3)

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 昨日の続き。今日はイスラエル総選挙なので、さくさく進めるよ。

ガザ攻撃―――黙認された罪なき人々の犠牲 米国が掲げる人道はどこへ (2009.01.27 毎日新聞 8面)

 http://mainichi.jp/select/world/news/20090127ddm007030030000c.html

 だが、問題は米国国際社会乖離(かいり)である。米国の2人の大学教授が書いた「イスラエル・ロビーとアメリカ外交政策」(講談社)によれば、米国は72年から06年の間に、イスラエルに批判的な42の国連安保理決議を拒否権で葬り去った。こうした状況で世界の懸案を公正に解決できるのか、拒否権行使は本当にイスラエルの平和につながるのか、という重大な問題がある。

 まずは「問題は米国国際社会乖離である」について。国際社会乖離することが、そのまま問題行動である、とは言えないだろ常考いじめは、いじめっ子がクラスから浮いてるからでも、いじめっ子がクラスメートをうまく取り込んでるからでもなく、いじめという行為そのものとして、批判するべきなんだから。とすれば、クラスから浮きまくっていた落ちこぼれブッシュよりも、クラスメートを巧みに抱き込もうとするオバマ学級委員長の方が、もしかすると、世界にとっては、よっぽど厄介な存在なんじゃないだろうか?*1

 次に、米国が「世界の懸案を公正に解決できるのか」について。よくわかんないんだけど、米国が「世界の懸案を公正に解決」した事例って、有史以来何かあったんでしょうか?いやマジで何一つ思いつかないんですけど、誰か知ってる人いたら教えてもらえます?*2

 最後に、「拒否権行使は本当にイスラエルの平和につながるのか」について。『イスラエル・ロビーとアメリカ外交政策』の結論は、イスラエルアメリカにとっての戦略上の資産ではなく、むしろ戦略上の負債であり、重荷である、というもの。この主張が正しいとすれば、どうして米国イスラエルという重荷を抱え続けているのだろう?この問題に対するひとつの興味深い解釈は、たとえば次のようなものである。

 「アメリカイスラエルとはともに、神に託された使命に基づき、他民族が住んでいる土地に侵入して、他民族を虐殺あるいは追放して建国した国であり、その点でアメリカは自己をイスラエルと同一視しており、したがって、アメリカにとって、イスラエルの正当性が崩れることはアメリカの正当性が崩れることを意味し、断じて、あってはならないのである」

 「アメリカは、共同幻想としてのアメリカを守るためにはイスラエルを守らなければならない。アメリカイスラエルを守るのは、アメリカユダヤ人大統領選挙に莫大な資金を献上するとか、ジャーナリズムを握っているとかの現実的理由のみによるのではない」

 「アメリカの現実的国益から言えば、イスラエルを守ったところで大してメリットはないし、イスラエルが滅びたところでアメリカは別に困るわけでもない。にもかかわらず、アメリカの国際的評判を落とし、イスラム教徒に憎まれてまでもあれほど必死にイスラエルを守るのは、アメリカの国家としての「自我」にかかわっているからである」

一神教vs多神教

一神教vs多神教

 「ガザは時限装置付きの原爆だ」とアラブジャーナリストから聞いたのは、イスラム原理主義組織ハマスがガザで旗揚げした80年代後半だった。希望がなくなると過激な勢力に支持が集まる。力で抑え込もうとすれば相手はますます過激になり、こちらの攻撃も激しくなる。誰も止めなければ「過激」と「過剰」の争いはエスカレートするだけだ。

 「「過激」と「過剰」の争い」って、どう考えても、イスラエル野党リクード与党カディマのことじゃないのか?ついでに言えば、パレスチナ側を「相手」、イスラエル側を「こちら」って書いてる時点で終わってるでしょ。毎日も朝日に続いて、イスラエル支援企業リスト入り決定だね。

 ハマスも考えなければならない。かつてハマスの幹部は、パレスチナ自治区での独立国家樹立に満足せず、イスラムの連帯による「大きな家」を建てたいと語った。これはイスラエルとの果てしない戦いにつながる。だが、戦火に耐える庶民の苦しみを思えば、非現実的な夢を追わない勇気も必要ではないか。

 いやー、思わず吹いちゃったよ。ここまで強固な鉄のごとき無知への意志(©toledさん)がないと、やっぱり大新聞の論説委員にはなれないのかな?あのね、イスラエルが進めている占領政策(入植地の拡大、分離壁の建設、経済封鎖・・・)を容認した上での「パレスチナ自治区での独立国家」なんて、バンツースタンの別名でしかないんだよ。

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 著作者:現代企画室『占領ノート』編集班/遠山なぎ/パレスチナ情報センター

 http://palestine-heiwa.org/map/s-note/

 かつてハマスの幹部が口にしたという「大きな家」を批判して、イスラエルで公然と主張されている大イスラエル主義*3を不問に付すのは、なんでだよ?イスラエル軍事力を持ってすれば、大イスラエル主義も「非現実的な夢」ではないからだとでも?

 まあ、要するに、こういうことかもね。

  1. 60年以上も夫に暴力を振るわれている妻がいる。
  2. かつて、彼女は、DV被害者の会(「大きな家」)を立ち上げて夫と戦うことができたら、どんなにいいだろう、と思っていた。
  3. ところが、近所のママ友だった山田さん(エジプト)も鈴木さん(ヨルダン)も、いつのまにか夫に取り込まれてしまったので、妻はおそるおそる夫に離婚(1967年グリーンラインの遵守)を持ちかけることにした。
  4. すると、夫は激怒して、彼女と子どもをスパナで滅多打ちにしてきた。妻は大根(カッサムロケット)を片手に応戦したが、子どもは顎の骨を割られて入院する。
  5. 毎日新聞論説委員布施広記者の言葉。:「父親の暴力に耐える我が子の苦しみを思えば、非現実的な夢を追わない勇気も必要ではないか」

 終わり。

*1:少なくとも、オバマアフガニスタンでやろうとしていることは、そうした文脈から捉えるべきだと思う。

*2:ハリウッドとか漫画以外で

*3:ガザ・西岸地区をすべてイスラエルに併合してパレスチナ人を追放しようとする思想運動。ちなみに、ガザ・西岸地区での入植と占領政策を放棄しようとする小イスラエル主義も、1967年以前の違法な入植地を手放そうとしない点で十分批判に値する。

zames_makizames_maki 2009/02/10 17:56 こんにちわ、イスラエルのガザでの攻撃は本当に恥じるべき行為、それは単にイスラエルのユダヤ人のだけの罪ではなく、日本人も含め人類全体の罪ですね。貴殿は毎日新聞の論説をテコして論をなそうとしているようですが、そこでお聞きしたい。
1パレスチナ問題は今後どのように推移するのか、イスラエルの目指すゴールは何か
2対してパレスチナ問題はどのように解決されるべきなのか?
3その時アメリカ、又日本はどのような動きをとるべきなのか?

以下は参考のための私の意見です。
 現状ではイスラエルの虐殺はパレスチナ人全員を殺すまで止まらないでしょうね。食料も建設資材も武器も制限されたガザでは、だんだんと抵抗はできなくなる。数ヶ月後、数年後には再びイスラエルによる虐殺が行われ、その時には物理的に抵抗する資源はなくなっているかもしれない。イスラエルはそれを何回も繰り返し、次第にパレスチナ人の抵抗のための資源と環境を奪っていき、最後には意志をも奪って、パレスチナ人がガザから「自主的に」逃げ出すのを待っているのでしょう。そしてその次は同じことを入植地を基盤にしてヨルダン川西岸で行うのでしょうね。今の情勢ではそれが完結するまで数十年かかり、その間我々人類全体はこの不正を見逃し続けるのでしょうね。

 問題のキーはイスラエルの不正を世界1の大国アメリカが強力に支持している事でしょう。今でもアメリカの強力な支持がなければ、国連の非難があり各国からの経済封鎖にあえば、イスラエル国民は考え直さざるを得ないでしょう。ここで大事なのは軍事力ではなく国際的な批判という圧力が、イスラエル国民に紛争の実際の姿に気づかせ、反省を促し動かす事ではないか。国際的批判という言論の力が民主主義国家の主権者であるイスラエル国民に「なんらかの妥協」を探る方向へ動かすでしょう。

 「なんらかの妥協」とはより平等な形でのイスラエル−パレスチナ2国家の建設でしょうね。あるいはイスラエル国家へのパレスチナ難民の帰還を認めることかもしれない、どちらも今のイスラエル政府にとっては到底受け入れることの出来ない妥協(いや敗北)でしょう。

 しかし現状では不正の基盤たるアメリカ自身の不正さはなくなりそうもありません。強力な政治的影響力を持つアメリカのユダヤ人は自らの行為を自分で反省し正すことはないように思われる。彼らは自分への表立った批判がないので、パレスチナの全ての土地がイスラエルのものになるまで平気な顔をしてイスラエル支援をアメリカにさせ続けるのでしょう。
 しかし私にはアメリカの非ユダヤ人がなぜ自国の不正さに目を向けないのかわかりません。ここまでの60年間でイスラエルの不公正に関する「より多くの情報」がアメリカの非ユダヤ人に入手しやすくなったはずです。しかし現状ではアメリカ社会が自国の不公正さを正す方向に動くように思えません、その兆候もあるように思えない。

 こうしてアメリカが変わらない限りパレスチナ問題は解決するとは思えない。であれば、日本やイギリスなどその他の国がするべきことは何か?それは世界的な言論の力しかパレスチナ問題を解決する事はできない、という事です。
 唯一の解決の方向は、日本でそして欧州各国でイスラエルの不公正さを糾弾することであり、又イスラエルを強力に支持するアメリカを批判することでしょう。同時に日本を含めた中国やアジア、アフリカ諸国など第3者からも公正さという点からイスラエルとアメリカへの批判が起きること、それが圧倒的になること。それによって初めてアメリカのユダヤ人、そしてアメリカの非ユダヤ人にこの問題への反省と見直しが起きるのではないか?また同時にイスラエル国民にも自らの行為への反省が起きるのではないか?

 そういうかなり遠い先までパレスチナ人は殺され続ける、彼らは殺される事で世界にイスラエルの不正を訴え続ける事になる。パレスチナ人は自分が根絶しになる(絶滅される)のと、世界がイスラエルの不公正さに強く声をあげてくれるのと、どちらが早いか、自分たちの命をかけた賭けを強いられている、と言うべきではないでしょうか。それは現状では見通しの暗い不利な競争かもしれない、しかしパレスチナ人にはそれしか選択肢はないように思えます。

m_debuggerm_debugger 2009/02/10 18:15 >zames_makiさん
率直なコメントありがとうございます。
いただいたご質問とご意見については、コメント欄ではなくエントリーでお答えしたいと思います。しばしお待ちください。

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