「岡田斗司夫の ひとり夜話2」その1

もう先週のことになるのだが、「岡田斗司夫の ひとり夜話2」に行ってきた。
今回は第一回とうって変わって延長に延長を繰り返した結果、丸々半分が熱いガンダム話という、以前やっていた「遺言」イベントを思い起こさせる内容だった。や、こういうのを待っていたよ。映像こそ使わなかったものの、話の合間に岡田斗司夫がタイミングよく絵や写真をモニターに写し、笑いを増幅させていたのが印象的だった。


ちなみに第一回の内容のまとめと感想は↓の通り。
「岡田斗司夫のひとり夜話」その1 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな


以下、いつものように印象に残ったことを中心にメモとしてまとめたい。いつも通り、岡田斗司夫が言った内容そのままではなく、私なりのバイアスがかかったまとめ方なのでご注意を。括弧内は私の感想。質疑応答は上手くメモできなかったので、印象に残ったもののみをまとめる。

理屈民族

  • 前回のイベント後に気づいたのだが、世の中には理屈民族というのがいる。僕を含めて、今この場にいる人は皆理屈民族。これは理屈っぽい話を聞いて楽しむイベントです。
  • 理屈民族を増やし、理屈民族の方がモテるんだ!というイメージを世の中に広めるのが目的。EXILEに対抗したい(笑)。そこまでいけばan・anの「好きな男性のタイプ」に「屁理屈をこねる男」がランクインするはず。
  • このイベントで提示するのは一つのものの見かた。テレビやニュースといった誰でも入手可能な情報でも、論理的に構成することで別の面がみえてくる。たとえば以前、宮崎駿宮崎吾郎の確執を公式に入手可能な情報のみから読み取る、ということをやった(笑)。このイベントはそういうロジカル・エンターテイメントショーです。

フカダくんの話

  • 面白い話をする人は自分が笑っちゃいけない。熱くなってハイテンションになっても、クールに話さなきゃいけない。出川哲郎はトータルでみて面白い芸人だけど、この能力が低い。
  • 今まで何十回とした面白い話があるのだけど、最後にはどうしても笑ってしまう。今回は笑わずに話すことに挑戦したい。
  • 中学の時の同級生で「アホのフカダくん」というのがいた。大阪でいう「アホ」とは愛すべきヤツというニュアンス。フカダくんはとにかく憎めないウソをつく。
  • たとえば、「今度、オレはバイク競技にでることになった」などという。その前夜、テレビの洋画劇場でスティーブ・マックイーン主演の「大脱走」が放送されていた(笑)。「大脱走」のクライマックスでは、マックイーンがバイクに乗ってドイツの国境を走るのだ。フカダくんはそれに影響されたのだろう。でも、だいたい中学生はバイクの免許とれないだろ(笑)。
  • しかし、僕たちはある程度フカダ君のウソを泳がせ、遊んでいた。「へ〜、どんなバイクに乗るの?」とウソにのる。
  • ジャンプ競技に出んねん」と返してくるので、「何ccのバイク?」と尋ねる。フカダくんはバイクに詳しくない。きっととんでもない数字を出してくるに違いないと期待していたら、馬鹿な友達が「ナナハンちゃうの?」なんて言いやがる。当時「750ライダー」という漫画が流行していたのだ。
  • しかし、これが基準となった。「ナナハンちゃうで。5000 ccや!」(笑)。
  • 「フカダくん。750 ccのバイクでさえエンジンは馬鹿デカくて、脚を大きく広げなきゃ乗れないよ。5000 ccのバイクなんてまたがれるの?」
  • 「またがれるよ。エンジンに穴が開いていて、そこに脚入れんねん」(笑)。確かにたいていのエンジンには、エンジンヘッドの合間に隙間がある(笑)。
  • 「そんなバイク、誰がのるの?」
  • スティーブ・マックイーン」(笑)

フカダくんの話-2

  • そんなフカダくんはヤンキーからパシリ扱いだった。でも大阪の中学生はドライで、生存競争を生き延びるのに精一杯なので、誰もフカダくんを助けようとは思わない。
  • フカダくんもヤンキーがいないところでは強気で、「俺のバックには梅田会がついている」なんて強気にフカしていた。梅田会というのは住吉会の下部組織で、当時の不良高校生が作っていた暴力集団なのだが、多分フカダくんは「ガキ帝国」を観たのだろう。今でいうところの「ビーパップ・ハイスクール」だ。
  • 「俺のバックは四條畷高校のウラ番や!」いやフカダくん、そこはウラ番じゃなくて普通に番長で良いだろう(笑)。
  • そんなフカダくんは8mmカメラを持っており、それを利用して自主映画を撮ることになった。ギャング映画で、フカダくんは銀行強盗役。警備員役の友達がフカダくんをボコボコにして撮影終了。
  • フカダくんは不満たらたらで、しつこく文句言ってきた。普段ならフカダくんをいなしたり、泳がせて遊んだりするのだが、この時はあまりにもフカダくんがしつこくいので、とうとう友達のスドウくんが言ってはならない一言を言ってしまった。「おまえウソつきやんけ!」
  • そう言われたフカダくんは黙ってしまい、おとなしく帰宅したのだが、後日フカダくんから電話がかかってきた。「あのな、おまえとスドウたいへんなことになってん。梅田会から処刑宣告出たぞ!」
  • 処刑宣告!(笑)フカダの頭の中ではいったいどういうシナリオになっているのか?「えー、それは大変だ!梅田会に狙われるなんて、もう死んだも同然だ!せめて、どういう風に死ぬのか教えてくれ」と聞いてみた(笑)。
  • フカダくん、そこでちょっと会話が止まった。フカダくんの凄いところは一拍で凄い量の物語を考えることで。
  • で、フカダくんが何といったかというと「コンボイに轢かれて死ぬ」おまえ映画「コンボイ」観てきたな!
  • コンボイに轢かれるのは分かった。でも、いきなりコンボイが来るわけじゃないよね。梅田会に連絡して、そこからコンボイのドライバーに連絡が行く筈だよね?どういう手はずなの?連絡はどうとるの?」
  • ラジコンヘリが飛んで連絡すんねん」(笑)おまえの家にラジコンヘリ無いやんけ!
  • 「屋根裏にあんねん。屋根がパカっと開いて、そこからラジコンヘリが発進すんねん」フカダくんの家がどんどん改造されてきた(笑)。ちなみにコンボイはフカダくんの家の地下にあるそうだ(笑)。

フカダくんの話-3

  • ここからが本題だ。フカダくんの8mmカメラで新たに映画を撮ることに。今回、脚本はフカダくんが書き、文化祭での上映を目指すという。。フカダくん、一晩で脚本書いてきた。7分くらいの小編なのだが、当時流行っていたカンフーもので、悪者に誘拐された村の娘を助ける話。最初は師匠から戦ってはならぬと言われた主人公がボコボコにやられる。で、「もうガマンできへん!」と悪者を倒して終わる話。
  • 主人公はフカダくん。悪者はスドウくんや他の友達。村娘は岡田がやれという。何故と聞くと、「おまえ姉ちゃんいるから、女の服借りれるやん」(笑)
  • でも、楽しくやれた。何故なら撮影の大半がフカダくんをボコボコにするシーンだったから(笑)。
  • 撮影は順撮りだった。とうとう主人公が反撃するパートにさしかかる。「もうガマンできへん!」とヌンチャクを取り出すフカダくん。当時、玩具のヌンチャクは三種類あった。ゴム製の”こどもヌンチャク”。プラスチックのパーツがついた”スポーツヌンチャク”。重たい樫の木でできた”本ヌンチャク”。
  • フカダくんは本ヌンチャクを持っていた。当然、体に当たると痛い。シナリオでは1分間振り回すシーンが続くことになっていたのだが、ヌンチャクが自分の体に当たり、痛くてニ秒くらいしか振り回せない。
  • 仕方が無いのでラストシーンを先に撮影した。村の娘を助け、荒野の向こうへ消えていくフカダくん。映画でよく観るシーンだが、大分遠くまで歩いていっても人影が小さくならず、実際に撮るのは大変だった。
  • ヌンチャクを振り回すシーンはフカダ君の自宅で撮ることとなった。僕の家にあった三脚を貸してあげて、自分撮りをするのだ。
  • 映画の撮影開始が春休み。新学期になっても、映画はまだ完成しなかった。毎日少しずつ撮影しているようだ。夏休みに入りフカダくんを遊びに誘っても「俺、撮影があんねん」と家から出てこない。夏休み後、やっと「できた!」とフカダくんが叫んだ。
  • 文化祭で上映することになった。上映にはカーテンで暗室を作れる理科準備室を借りることができた。自宅にあった湿式複写機を使い、燃えよドラゴン」のロゴを途中で切って「燃えよフカダドラゴン」としたポスターまで作った。
  • でも、どうせフカダの作った映画なんてつまらんモノだろうと、文化祭当日は友達と他の展示物を観たりしていた。そこへ別の友人が慌ててやってきて、こう言った。「岡田、フカダの映画観たか?!」
  • 会場となる理科準備室へ行ってみるともの凄い人だかりで、パニック状態だった。二回、三回と連続して観る客ばかりなので、全然人数が減らないのだ。


(以降、ネタバレになるので省略。DVD化や地方講演等が予定されているとのことなので、是非そちらを)

勝間和代香山リカ対談

  • 最近のAERA女性誌化しているのだが、この前の号に勝間和代香山リカの対談が掲載されていたのだが、これがとても面白かった。
  • 勝間和代の主張はこう。「もやしもん」の樹教授みたいだが、豊かさとは選択の幅である。各々の社会的ポジションの中で自己投資を惜しまなければ、誰もが「相対的に」強くなれる。ここでいう「相対的」とは、昨日の自分よりも、という意味。円周率を3にして日本は豊かになったのか?他人ではなく昨日の自分が競争相手である競争社会が必要。
  • 対して香山リカの主張はこう。勝間的な生き方が成功への道であることは分かるが、そういう生き方や励ましが女性にストレスを与えている。人生に成功や意味を求めてはいけない。人間には上がり・下がりがあるので、セーフティネットが必要。
  • 弱者であることにはデメリットもあるのだが、香山リカはそれに気づかないフリをして対談を進めているところがズルい。
  • それに、勝間和代はロジックで話を進めている一方、香山リカは医者としての経験や情緒をバックボーンとして話している。こういう患者がいて、こういうことがあったんです……ということを拠り所にされては、「へー」と言うしかない。医者でもないし、同じ患者に接していない身としては反論できない。そこがズルい。
  • しかし、全体的にみると良い対談だった。これは答えの無い問題なのだが、二人の意見が絶対に交わらないところが良い。アメリカの二大政党制における共和党民主党みたいなもので、両方大切。
  • 人には、世の中の全てを自分の理屈で統一したいという欲望がある。たとえばアインシュタインの統一場理論。もともとアインシュタインは変な人で、洗濯石鹸と髭剃る石鹸が違うのが嫌と言ったり、灰皿でごはん食べたりしていた。自分の周囲にあるものを統一したかったのだ。
  • 香山リカには自己実現社会に対する恐怖感がある。個人に対しての世界観を社会に当てはめようとしている。でも、弱者保護のデメリットは語らない。
  • 対して勝間和代は社会に対しての世界観を個人に当てはめようとしている。年収十倍になれば幸せになると言っている。でも、子供の幸せも十倍になるのか?彼氏が十倍になれば幸せなのか?
  • 誰もが自分の統一場理論を語りたい。おれに言わせりゃ世界はこうなっている、と。

十万円分のロケット花火

  • ガイナックスは理屈民族の集団だった。何をやるにも意味や理由や社会的意義が求められる。
  • 「愛国戦隊大日本」の撮影時に黒色火薬が必要になって……という話は以前にした。
  • 帰ってきたウルトラマン」のラストでは庵野ウルトラマンの背丈を大きく上回る爆発が必要になり、地面に穴掘って黒色火薬、ガソリンをビニール袋に入れてシェイクして気化させたものをその上に乗せ、見事火球爆発を作り出した。
  • しかし、上には上がいるもので、もっと凄いことをやる人が現われた。アニメーターの板野一郎だ。バイクに乗りながらロケット花火を水平発射し、そのロケット花火をバイクで追い抜く。そのさまを、バイクからビデオで撮るという超絶映像。とても格好良かった。
  • それに刺激された僕らは、十万円分のロケット花火を買い込んだ。当時、ガイナックスの社員旅行で大島に行っていたのだが、民宿の前に良い浜辺がある。そこで十万円分、浅草の卸問屋で買った一万発分のロケット花火を打ち上げ、カッチョ良い映像を撮ろうと試みた。
  • ロケット花火に火をつけ、打ち上がるまでには四、五秒かかる。真面目に一本ずつ火をつけると、一万発打ち上げるには14時間必要だ(笑)。発射台も問題で、たとえば牛乳瓶を一万本用意するわけにもいかない。
  • そこで、気の利く誰かが網を用意した。この網には60×60=3600の升目がある。レンガブロックを挟んで二重にし、さらにレンガの脚をつけ、約3300発のロケット花火を装填可能な発射台を作った。これを三台用意した。
  • 着火にはドラゴン花火を使うことにした。まず、ロケット花火を20 cm間隔で田植えする(笑)。その上に網で作った発射台を置く。ドラゴン花火への着火は両手に手持ち花火を持った30人のガイナックス・スタッフが行う。その手持ち花火への着火用として、四台のガスバーナーも用意した。
  • 大島の海岸で30人が両手に花火を持つ姿は傍からみたら新興宗教のようだ。いよいよ着火したのだが……。

(以下、ネタバレ防止の為省略)


(次回に続きます)