火薬と鋼

2008-03-23

[] それでどうするんですか

 この過疎ブログにしてはえらい反響があった図書館業界の腐りゆく状況に関して、コメントとブックマークで色々と意見が出ているので、まとめてフォローのエントリを書いてみよう。

 まず前提として分かっていてほしいのは、あのエントリは「図書館業界の派遣や請負は大変です」という話です。そもそも図書館がそうしたアウトソーシングによって成り立っていることを知らない人、あるいは図書館アウトソーシング業の大変さをよく分かっていない志望者に向けて書いています。派遣や請負なんて図書館に限らずそんなものだ、という意見もありますが、志望してくる人は案外わかっていないことがあるんです。もっと図書館ならではの問題と絡めて具体的な事例を紹介したほうが良いのかもしれませんが、自分と関係者の立場から書きにくいことなので書いていません。

 では、私が図書館業界の状況を知らせることで何か意義があるのか、というのも読者の当然の疑問です。外部委託や非常勤職員の問題について、雑誌の特集(例えば『ず・ぼん―図書館とメディアの本』の9や10の特集等)でも扱われていますが、まだまだ語られていないことが多いのです。しかしこの図書館業界の労働状況は、関連した多くの話題とつながり、様々な議論の種となり得る問題です。だから当事者に障害の出ない範囲で大雑把にでも状況を伝える意義はあると考えました。先のエントリに対して反響が大きかったのも、図書館そのものへの関心だけでなく関連した問題(行政のあり方、ワーキングプア等)への拡がりがあるからでしょう。

  • じゃお前は何しているんだ

 私自身の立ち位置や行動を書いていないので、その点についての疑問や批判がありましたが、それを公表したくないからこそあんな大雑把な書き方なのです。あと趣味のブログで仕事の話をすると、仕事の側に思い切り傾きそうなのでちょっと怖いというのもあります。もし本腰を入れてネットでこの話題を扱うとなると別のブログなりサイトなりを作らなければならないでしょう。今はこれが精一杯。

 なお、微力ながら、仕事では図書館の現状改善のために行動しています。そうそう解決の道がみつかるような問題ではありませんが。

  • あの話題から図書館関係のブログを批判するのはどういう訳か

 この点は自分でもうまく書けていないと思った点です。

 例えば大学人のブログでは高学歴ワーキングプアについて語られ、医師のブログでは勤務医の労働状況について語られています。それに対して図書館関係のブログでは労働状況に対する関心がまだ低い。指定管理者制度、外部委託といった「制度」とその結果生み出される「サービス」への関心は高いんですけどね。もっと金と人の動きに気を配ればいいのに…と思うことが多いので、ああいう文章になりました。この件についてはもっと具体的な例を交えて書くべきでしょうが、先に書いたように本腰入れるのが怖いので書けてません。

  • で、何が問題なの?別にそれでいいだろ

 図書館の状況に対して批判的なことを主張すると、反論としてその状況を現状追認する人がいます。そうした現状追認の意見ってわざわざ表明して何か役に立つんですかね。で、こうした主張をする人間とかつて議論をしたことが複数回あるんですが、彼らのイメージする理想の図書館は、現在の利用者から苦情が出そうな劣悪なものだったり、断片的な印象に基づく図書館だったりします。前提となる基本的な知識がないと議論は成立しない。だからその後この手の批判をする人に対しては逃げることにしています。「ちゃんと説明しろ」とお怒りの人もいるでしょうが、何せ私は短気なもので。

  • それでどうするんですか

―それでどうするんですか

デリダ「到来しないであろうメシアを待ちつづけるのです。

ピザの配達のように20分以内にやってくるメシアなどめし屋ですらありません。

パラドックスのアポリアの中で求めつづけるのです。」

―それでどうするんですか

デリダ「我々はまさしくイスラエル軍の軍事行動に反対する自爆テロで家族を失ったイスラエル市民であり

テロに反対するイスラエル軍に家族を殺されたパレスチナ難民です。」

―それでどうするんですか

デリダ「モリヤ山頂のアブラハムに降るヤハウェの『来なさい』あるいは『ウィ』だけが在り、

この会合の結論ははじめからなかったのです。

そうだったのです!

『それでどうするんですか』もまた『来なさい』であり『ウィ』なのです。」

―それでどうするんですか 言うてるやろ

デリダ「我々同様アポリアの中にある追い詰められたゲリラと途方にくれた軍の上に

このそれでどうするんですかがテスト終了5分前を告げる先公の声のように鳴りひびくことでしょう。

そこに『信』のチャンスがあります!」

いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』より

 というのは冗談としても、回答がないのは事実です。

 公共図書館・大学図書館の状況…特に派遣や請負の労働状況に関しては色々なレベルで語ることが可能です。国政、自治体行政の問題や大学運営の問題、図書館の公共性やサービスのあり方、一般的な労働問題との関連を論じることも可能です。また、図書館の利用者、自治体や大学の正規の職員、図書館関連企業の社員、パートやアルバイトといった立場によっても様々なことを議論できます。現在の、そしてこれからの図書館を検討するにはまだまだ議論が足りない。

 もっと議論を。戦いはこれからだ!

(注:アップ当初はここに石川賢のマンガのラストがありましたが、著作権上問題があると判断したため削除しました)


まとめ

 石川賢先生は偉大です。


>>図書館外部の人向け。待遇が悪くて困るの巻

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