火薬と鋼

2008-07-29

[] 駿台予備校と代替医療のつながり

 先日、ある教授の研究室で待たされていた時に一冊の雑誌をみかけた。雑誌の名を「駿台教育フォーラム」という。教授の話では勝手に送りつけられてきた要らないものらしい。読んでみてちょっと面白い(真っ当な意味ではない)内容だったので貰ってきた。今回はこの「駿台教育フォーラム」第25号(2008年7月4日発行)から一つの記事を紹介しよう。

 この雑誌は教育、受験に関する論文・記事を中心としている。大学紀要に近い感じの雑誌だ。わざわざこの雑誌のこの号をもらったのは、冒頭の記事が帯津良一の講演採録だったからである。帯津良一と言えば、ニセ科学の中でもかなり根の深い分野である代替医療の日本の親玉のような人物だ。サトルエネルギー学会会長、日本ホメオパシー医学会理事長、国際波動研究所所長と、肩書きにもそっち関係のものが多い。ホメオパシー、気功、漢方と医療とのつながりを深める大物と言えよう。

 ホメオパシーについて知らない人にはSkeptic's Wikiの項目がお勧めだ。

ホメオパシー - Skeptic’s Wiki

 この雑誌によると、駿台予備校講師*1との縁があって20年弱も駿台市谷校舎で医学部志望者に講演をしているそうだ。代替医療ガチガチの帯津の講演を未来の医師に聞かせるというのも凄い話だと思う。

 講演内容はもっぱら「西洋医学は患者のことを精神的な部分で支えていない」という批判が根底にある。そして漢方やホメオパシーが医療でいかに活用できるか、患者を救うかを解説している。後は「予感と直感」が大事だという話で講演を結んでいる。色々とつっこみ所はあるのだが、特に気になった部分を引用してみよう。


・西洋医学が患者を重視していないで一つの治療法にこだわることを批判した部分から

抗がん剤を使う場合に、漢方薬だとか、サプリメントとかあわせると、抗がん剤の副作用の白血球が減少したり、吐き気を感じたり、脱毛したり、それらの副作用が、和らげられるのは間違いないんです。私の経験ではそれは、ちゃんといえるんです。

 この話に限らず帯津は主観、経験談重視である。代替医療の定番だ。西洋医学を批判するパターンも代替医療おなじみの「副作用」についての話。


・ホメオパシーについての解説の一部

私のところでは、非常に戦略的ながん治療の中で、ホメオパシーはなくてはならない存在です。これはどういうことかというと、その人の心や命のレベルで働きかける治療なんです。

 帯津は講演中ホメオパシーの方法についての説明はせず、上記のような感じでいかに患者のためになるかだけを説明している。

 この文章にも若干現れているのだが、ホメオパシーが肉体に及ぼす科学的効果よりも「心」「命」といった形而上的なものに効くといった側面を重視しているのが分かる。それって「波動」とか「エネルギー」とかをオカルト・疑似科学的な意味合いで使う人が好きなパターンだよね。


・患者との信頼、コミュニケーションの重視を訴えた部分から

プラシーボと言うのは偽薬といって、薬の効果以上の効果が得られることをいうんですけれども、これは医療というものを考えた場合、人間対人間の哲学ですね。プラシーボ効果は基本的な力なんですよね。

 この前後の説明からすると「患者と医師の信頼関係があるとプラシーボ効果で薬の効果が2倍にも3倍にもなる」*2ということらしい。プラシーボ効果(プラセボ)を素晴らしいもの、積極的に取り入れるべきものとして捉えるあたり、尋常の医療とは別の認識でいるのだろう(プラセボ効果を使う医師は多くいるだろうが、ここまで積極的な人がいるだろうか)。また、プラセボ効果込みの治療効果をどこまでちゃんと把握しているのかという点も気になる。

このような考え方をしている人間が日本のホメオパシーの信奉者にいるとなると、ホメオパシーの効果はプラセボ効果にすぎないと批判しても通じないのではないだろうか。


 講演の内容は西洋医学の批判に始まり、死生観や魂の話などにまで及んでいるが、かなりの部分をホメオパシーの有効性に割いている。生徒達の感想が知りたいものだ。真に受けて将来トンデモ医療の世界に走る人がいなければ良いのだが。駿台予備校は他に講演に呼べる医療関係者はいないのだろうか。

(7/30追記)

 ざっと検索してみると(例えば「帯津+予備校」など)、駿台の帯津の講演はかなりの人間が聞きに来ていて好意的な感想がある。しかも予備校生で帯津の病院に手伝いに行った人間もかなりいるらしい。影響を受けた生徒がどこまで代替医療にはまるのかが気になる。

*1:この講師とは最首悟最首悟 - Wikipedia)である。

*2:「信頼関係が細やかなところで使うと、このプラシーボ効果が乗っかってくるわけです。だから2倍にも3倍にも効果が出てくる。」とある。