集団で戦え〜第二次大戦の銃剣集団戦術から〜

集団戦術を描かないフィクション

以前、あるイベント会場でナイフに関する現実とフィクションの話を来場者とした。色々な話をしたが、その中の一つに「集団戦闘をどう描写するか」という話題があった。
日本の漫画やゲームでは、軍事的な知識に基づく集団戦闘をうまく描写した作品は少ない。例えば多人数でも一対一を繰り返すか、全員が同時に同じ動きをする。たまにコンビネーションを駆使する敵がいたとしても、それは集団戦闘に慣れている軍人ではなく兄弟や双子のような出自が理由にされている。
実際には銃撃戦でも白兵戦でも、警察や軍では互いにサポートし合う戦術をとる。銃のマガジンチェンジの際に他のメンバーがカバーする、警戒する範囲や攻撃方向を振り分ける、といったように。
軍の近接戦闘向け技術と民間向けの格闘技の大きな違いもそこにある。格闘技で、味方複数で敵一人を倒す技術を習う人がいるかどうかを考えれば容易に理解できるだろう。大雑把な話をすると、一般に競技化が進んだ格闘技は一対一の状況を想定している。他方、実戦的な武術は複数人数の戦闘に対応する技術を備えていることがある。それでも多対多ではなく、敵が複数で味方がいないことを想定しているものがほとんどだ。これに対し、軍の格闘技術では敵・味方が複数いる状況を想定した戦術を基礎から教える。

銃剣の集団戦術

前置きが長くなったが、今回は実際に軍で集団戦闘の技術をどう教えているか、第二次世界大戦中の米軍の教本を元に説明する。

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