載せられなかったお話・その2:敷地境界線決めに立ち会うことも

荒木棟梁 大工は作事以外でもいろいろとお施主さんにかかわることがあります。たとえば、敷地境界線決めの立会いなど、今では弁護士や測量士がやりますが、昔はよく大工がしたものでした。「近隣の揉めごとは大工の仕事や」ってうちの親父も言うてたぐらい。

私らのときでも、揉めごとなどもみな大工が治めました。家の揉めごと、たとえば、隣の屋根は出てるのどうしよかとか、敷地の境界どこにしよかというようなことは、みな大工が決めてました。

向こうの大工とこっちの大工で「境はこのへんやな。ほなこれもう印いれよか」。それで、「お互いの大工が決めたんやから、それでよしとしよう」となりまして、丸く治まったわけです。当人同士やったら後感情が残りますやん、だけど大工がここが妥当やってなったら、もうそれで揉めることもない。

その場合も、簡単な測量図程度はつくりました。境界というのはいつも揉めるわけですが、合意できたら、あとはもう測量士にお任せをするわけです。京都の昔の家は、そんな境界に杭が打ってあるような家なかったですから。だから、やっぱり常識で解決するのが一番揉めへんね。