世界日報、またやってしまっただよ

GenderStudiesML 経由、朝日新聞記事

「キレ」防止に3歳までの愛情大切 文科省検討会が提言


「キレる子」にしないためには乳幼児期の家族の愛情や生活リズムの定着が大切だとする提言を文部科学省の「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」(座長・有馬朗人元文相)が12日まとめた。
 提言は、人間の情動は5歳ごろまでに原型が作られると指摘。「その後の取り返しは不可能ではないが、年齢とともに困難になる。3歳ごろまでに母親をはじめとする家族の愛情を受けるのが望ましい」と述べている。
 脳内でコミュニケーションや意欲をつかさどる「前頭連合野」の発達は8歳ごろがピークで、20歳ごろまで続くとも述べ、乳幼児から小学生までの教育の大切さを強調する内容になっている。
 一方、テレビやゲーム、インターネットなどが心に与える影響については「十分なデータがなく、一層の研究が必要」と述べるにとどまった。

これだけの記事が、世界日報にかかるとこうなるわけです:

「3歳児神話(三つ子の魂百まで)」に根拠あり


文科省報告書が指摘、「母親や家族の愛情が大切」

 「キレる」子供の心の問題の研究を進めていた文部科学省の検討会は先ごろ、情緒が安定した子供に育てるには、「3歳までの母親をはじめ
とした家族の愛情が大切」とする報告書をまとめた。乳幼児に対する母親の役割の大切さを説く「3歳児神話」について、「合理的根拠はない」と否定する厚生白書が出てから7年。しかし、その後進んだ脳科学などの成果は厚生白書の記述が偏ったものであることをはっきりと裏付けている。子供の心の健全な成長のためには、家庭からの女性解放を主張するフェミニズム思想を背景とした教育ではなく、「母性」の価値を認める伝統的な子育てを行うことの大切さが改めて示された格好だ。
 (略)
 さらに、文科省の検討会委員の一人だった脳科学者の澤口俊之・北大医学部教授は「一時期『母性愛は幻』『男性社会を維持するために押し付けられた観念』だという主張がなされたことがあったが、これはとんでもない誤解だ」と強調。「少なくとも生後八歳くらいまでは、母親は家にいること! そして適切で豊かな愛情を注ぎ続けてほしい」(『幼児教育と脳』文春新書)と訴える。脳科学の知見からすれば、母性や専業主婦を否定的に捉えるフェミニズムの主張は明らかな間違いで、多くの専門家は母性を大切にした伝統的な子育ての価値を再評価すべきだと訴えているのだ。
 こうした専門家の意見や科学的な知見は、乳幼児期における母子関係の重要性に「合理的根拠はない」と断言した厚生白書に重大な誤りがあったことを裏付けるだけでなく、近代家族と資本主義体制を維持する必然性を背景として形成されてきたイデオロギーなどでは決してなく、子供の一生を左右する、自己形成の核心部分であることをも示しているのである。
 ところが、厚生白書と同じフェミニズム思想を背景にした男女共同参画政策は現在も進行中だ。母性や専業主婦を目の敵にしながら、女性の社会進出に重点を置いているのは、子供の心の健全な成長には母子関係が大切だとする科学的知見を無視した危険な偏向政策といえる。

 実際の提言は、文部科学省サイトからダウンロードできるけれど、これを読む限り母性がどうという議論は一切ない。「保育者との愛着によって、子どもの対人関係能力や言語能力が伸長することから、乳幼児期からの親子関係をはじめとした人間関係が重要であることが分かる」「適切な情動の発達については、3歳くらいまでに母親をはじめとした家族からの愛情を受け、安定した情緒を育て、その上に発展させていくことが望ましいと思われる」というごく当たり前のことがうたわれているだけ。
 7年前の厚生白書に書かれた「三歳児神話には,少なくとも合理的な根拠は認められない」という記述ついて、世界日報の記事はやたらと攻撃するのだけれど、もちろん当時の厚生白書だって「保育者との愛着や関係が必要でない」とか「家族からの愛情が必要ない」とは書かれていない。以下は厚生白書平成10年版から引用。

 もちろん,乳幼児期という人生の初期段階は,人間(他者)に対する基本的信頼感を形成する大事な時期であり,特定の者との間に「愛着」関係が発達することは大切である。
 しかし,この基本的信頼感は,乳幼児期に母親が常に子どもの側にいなければ形成されないというものではない。愛情をもって子育てする者の存在が必要なのであって,それは母親以外の者であることもあり得るし,母親を含む複数人であっても問題視すべきものではない。両親が親として子育て責任を果たしていく中で,保育所や地域社会などの支えも受けながら,多くの手と愛情の中で子どもを育むことができれば,それは母親が一人で孤立感の中で子育てするよりも子どもの健全発達にとって望ましい,ともいえよう。大切なのは育児者によって注がれる愛情の質なのである。
 (略)
 これからは,昨今の子育てについての過剰な期待や責任から,母親を解放していくことが望まれる。そうすることが,結果的には,母親が心にゆとりをもって豊かな愛情で子育てに接することにつながり,よりよい母子関係が築かれることにつながると考えられる。

 はい、当たり前ですね。これが「否定された」と言うのであれば、他の誰でもなく母親しか子どもと適切な愛着を持ったり適切な愛情を注ぐ事ができないことを示さなければいけないけれど、少なくとも今回の文科省検討会の提言にはそのような内容は含まれていない。というか、今回の提言と厚生白書平成10年版はちっとも矛盾しない。またしても、世界日報はソースの恣意的な引用によって読者を騙そうとしているということ。ま、もはや驚くには全然あたらないけどね。
 ちなみに、伝統伝統と言うのであれば、厚生白書平成10年度版に書かれた「地域社会などの支えも受けながら、多くの手と愛情の中で子どもを育む」というほうが、母親だけに責任を押し付ける形態よりよっぽど歴史的に長く続いた伝統ですよね。