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2006-05-17

スティーヴン・コーベア@ホワイトハウス晩餐会のジョーク追加解説

ちょっと前の話だけれど、上山さんのブログで見るまで日本で紹介されているとは知らなかったので。まず、町山智浩さんが大部分を訳してくださっているので、そちらを参照。以下は、町山さんの訳では分かりにくいジョークを解説します。ジョークに特に関係のない部分は、誤訳でも抄訳でも直していません。

誰かつねってくれないか。わかる? 僕、ちょっと眠たそうでしょ。つねったくらいじゃダメだ。誰か狙撃してくれ! なんだ、今日は暗殺者は来てないのか。ちぇっ。あいつなら助けてくれるのに。

顔をつねったくらいじゃダメだから「誰か狙撃してくれ」の部分は、元は「誰か僕の顔を狙撃してくれ」。顔を狙撃と言えば2月にチェイニー副大統領が狩猟中に友人を誤射した事件を揶揄している。「今日は彼は来ていないのか、あいつなら助けてくれるのに」という部分では固有名詞を出してはいないけれど、明らかにチェイニー副大統領のこと。

私はアメリカを信じています。信じられないでしょうがアメリカは本当に実在するのです! 私の肝っ玉によると、私はそこに住んでいるらしいのです。アメリカはどうも大西洋から太平洋に広がってるようです。絶対に五十州あると思います。このスクープに明日のワシントン・ポスト紙が飛びつくのが待ちきれません。

保守系コメンテータは日頃から「大手メディアはリベラルに偏向している」と批判していて、ワシントンポストと言えばその代表格の一つ。ここでコーベアはそういう保守コメンテータのパロディとして、「明日のワシントンポストがこの話(米国は実在する、50州ある、など)をどのようにスピン(情報操作)するか見物だよな」と言っています。「スクープ」でないし、「飛びつく」というのはコーベアの意図の逆。

最近の世論調査でブッシュ大統領の支持率は史上最低の32パーセントまで落ち込んでいることは知ってます。しかし私も大統領も、世論調査なんか気にしません。世論調査なんてものは「現実的」に考える連中を反映したデータにすぎません。皆さんご存知のように、現実なんてリベラルのたわ言です。

「世論調査なんてものは、『現実に』人々が何を考えているかを示す統計でしかないのです。皆さんご存知のように、現実はリベラルに偏向しているのです。」

とにかく、国民の68パーセントがブッシュ大統領の仕事を評価していないという調査は無視すべきです。いいですか? これは論理的には国民の68パーセントが大統領を評価していない事実を意味してるわけじゃないでしょ? よく考えてみてください。私は考えてませんが。

正しくは「大統領の仕事を68%が評価していないということは、論理的に言って、同時に国民の68%が大統領がやっていない事を評価しているということも示しているのではないですか?」。ちっとも論理的でないけど一瞬騙されそうになる不条理ジョークです。続いて「よく考えてみてください、わたしは考えてませんが」ときたところであまりの不条理さに爆笑してしまいました。

私はこの大統領を支持します。なぜなら彼は何かを象徴しているからです。それだけでなく何かの上に立ちもします。たとえばペルシャ湾の空母とか、911テロの瓦礫とか、最近はハリケーンにやられた街の廃墟に立ちました。彼の姿は、アメリカは何かされれば必ず反撃する、という意志を表明しています。世界で最も強力なヤラセ写真によってね。

ここでは「because he stands for things」(かれは何か訴えるべき信念を持っているから)に続いて「he also stands on things」(何かの上にも立っています)を並べるのがジョーク。「ペルシャ湾の空母」「911テロの瓦礫」「ハリケーンにやられた街の廃墟」はそれぞれの場所で広報用の写真を取って政治的に利用してきた有名な場面。

とにかく私はブッシュ大統領が大好きです。彼は良き隣人です。妻を愛し、生涯の伴侶としています。世論調査も同意しています。

「生涯の伴侶」は英語で「(one's) better half」。「世論調査も同意しています」という部分は、大統領よりローラさんの方が better だと国民が思っている、というジョーク。

百科事典にはパナマ運河は1914年に開通したと書いてあるって? 私には「それは1941年だ」と言う権利があります。それがアメリカの自由です! 私は大統領の味方ですから、何が事実かは歴史に決めさせます。

これが多分このスピーチで一番強烈な政権批判。イラクに大量破壊兵器があるという証拠は嘘だとブッシュは知っていたのか? 国内の盗聴を行うよう命令しておきながら「絶対にそんなことはない」と言ったのは嘘だったのか? そう問われるたびに、「何が事実かは歴史が決める」と逃げることを皮肉っています。

もう一度ホワイトハウス記者の決まりをおさらいしましょう。何かを決めるのは大統領。それを記者に伝えるのは報道官。記者は大統領のお言葉をタイプして、編集部に送って、おうちに帰って、カミさんとセックスして寝るだけです。

 記者のなかには、頭をひねって本を書く人もいるかもしれません。反骨のホワイトハウス記者が権力に立ち向かうってな内容の本をね。要するにそれって作り話ですね!

2段落目の部分は、「小説を書くのもいいかもね。ほら、反骨の記者が権力に立ち向かうっていうような内容の本とか、要するにフィクションを書いてみたらどうかい?」。コーベアのパフォーマンスが翌日の主流メディアで当初完全に無視された理由は、こういうところで政権批判というよりもメディア批判・マスコミ批判をやってしまったことじゃないかな。

 これに続いてもう1段落あって、その後招待客をネタにしたジョークがしばらく続くのだけれど、よほど米国政治に詳しくないと分からないようなジョークが多いので町山さんは略しています。わたしもそれに習って略しちゃおうっと。(というか、文中でも何故か一段落だけ訳し忘れてるんだけど、その部分そんなに面白くないし、まいっか。)

 とにかく、コーベアさんに感謝しましょう!

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