消費税・財政出動のゆくえ

今日の朝早く、消費増税延期のニュースがあったのですが誤報なんですかね?
夏の参議院前に判断、という具合に後退していました。
サミットでは、今の状況がリーマンショック前に似ているという話をしたところ、あまり芳しい反応がなかったようではありますが、消費増税を避けたいという意思は分かったので良かったのではないでしょうか。
消費税は国内政策なので、国際経済に対する諸外国の認識の一致がなくても独立に判断すれば良いと思います。

政出動

消費増税を避けるのがとても重要なことですが、その実現の条件として財政出動がなされることもあるのかもしれません。
個人的に財政出動はそれほど要らないと思うのですが、増税が避けられるかどうかの方に関心が向きますね。
いま10兆・20兆を支出するのはいろいろ弊害があるとは思いますが、すぐ財政破綻するわけではないですし、日本の債務問題は長期的に問題となり続ける問題ですから。
安倍政権は自民党の規約では連続6年までしか存続できないので、政権の終わり頃に景気が良くなっている可能性があると思います。
となると、それ以降の政権が累積した債務とどう付き合うかが問題になります。
景気がよくなると金利が上がり、利払いが増加するわけですが、どのくらい増加するかについてひとつの推定法があります。
実質利子率が1パーセント上昇すると、
1%×(国債のGDP比率)
上昇する。
というもの。
GDPは名目、国債は純債務残高と理解しています。
日本にはケインジアンを自任する人がプロアマ問わず多く、その人たちはたいがい積極財政主義者なので予め確認しておきますが、この推定法は或るケインジアンが書いた教科書に記載された経験則です。
この推計だと、1パーセントの金利上昇によって、控えめにみて3〜4兆円の利払い増加があるということになります。
現在の利払いは年に10兆円程度なので、結構な増加です。
積極財政主義者は3兆5兆は財政出動としては少なすぎる、などと軽々しく言いますが、250万人が生活を依存している生活保護は3兆円であり、「たった3兆円」なのにNHKを筆頭として大げさに問題視して社会全体で弱い者いじめをしたことを思えば、決して少ない額ではありません。
税金の重み、ふつうの生活をしている人の暮らしぶりにもっと想像力を働かせてみるべきではないでしょうか。
利払いが予算に占める割合を増やすと、本来は社会の便益のために使わなくてはならない財政資金が、利払いに圧迫されることになります。
利払いを受けるのは、国債に投資できるような富裕な金融機関、個人であります。
つまり、一般国民の便益を減少させながら、税金を使って富裕層に不労所得を得させる構造なのです。
債務が累積するほどに、その構造は強まります。
積極財政主義者は二言目には再分配だのピケティだの言いますが、その意味が分かっているかどうか怪しいものだと思います。
社会の便益をますために多額の投資をするなら、累進度を上げた所得税を財源にする方が公平だろうと思います。
景気が良い状態で、利払いに予算を圧迫されているときの政権は、そのまま債務を減らす方向で財政運営をするのが通常だと思いますが、それは不人気な運営になるでしょう。
社会には財政援助を希望する分野は無数といっていいほどあるわけですが、それらを顧みることができないままに利払いに予算を割き続けなくてはいけませんから。
「教育や福祉に財政資金が足りない」という攻撃を野党やマスコミはここぞとばかり行うでしょうが、政権は耐えなければいけません。
そのような攻撃に耐えられなかったり、選挙前に有権者の歓心を買うことを我慢できなくなると、景気が良いにも関わらず財政赤字を出すことになります。
完全雇用財政赤字というものです。
この言葉を知ったとき、「じゃあ債務を減らせるのはいつなんだよ」と思いましたが、日本のように財政を過信する社会常識があり、財政を煽ることで社会のメインストリームで活躍するチャンスを官僚・政治家・財界から与えられたいと願う人が多い社会では十分にあり得べきことです。
不況のときに財政赤字を出し、好況になったら返済するというのがケインジアンの建前ですが、実際には好況になっても不人気政策を避けたい一心でやはり財政赤字を出してしまい、結局債務が累積するではないか、という批判は何十年も前からあったわけですが、日本では特にその批判を浴びせなければならない人たちが大勢います。

2016年05月26日のツイート