垣根涼介作品としては結構心理的な 月は怒らない

◎ 月は怒らない


久々に垣根涼介さんの作品を読んだ。


地味だが魅力的な女性を巡る3人の男性の話。


中盤までは、女性とそれぞれの男性の関係を淡々と綴っていく。
少々飽きて、読むのを止めようかと思った。


中盤から、女性が一人の男性との付合いに絞ろうとして、
それぞれの男性が絡み、事件が起きる。


女性の独特の感性を解き明かす、公園で出会うジイサンとの話も出てきて、
ジイサンと女性の独自性の解説。


中盤以降が面白くなってくる小説。


女性が主人公だと思うのだが、
彼女からの語り口はなく、
男性3名、公園のジイサン、それも見ているブルーシート生活者と
周りの男性の語り口で、この女性の生い立ちまでさかのぼる。
中々面白い作り方の作品。


言葉的にも気になる部分が何箇所かある。


255ページ

広大な荒地の中から砂金を一粒だけ拾い上げるような感覚。人生とは、つまるところ自分の理解者を得るためのたびに過ぎない。あるいは何かの行為の中に、本当の自分を見出す。