Hatena::ブログ(Diary)

mainitigasundayの日記

2013-05-21

菅原出「秘密戦争の司令官オバマ」

秘密戦争の司令官オバマ

秘密戦争の司令官オバマ

これまで、外国人による著述を通じて、無人機使用などの米国対テロ戦争の実相を垣間見てきたが、それに日本人がどのくらい踏み込んでいるのかという好奇心もあり、購読してみた。ちなみに、アマゾンで検索した限りでは、この問題に関して日本人の手による類書はほとんどないようである。

購入前は、「マニア本」的な内容、すなわち、「秘密戦争」の技術的側面、部隊編成、個別の作戦の実例などを予測(期待)していたのだが、それらについては、まさに「秘密」のベールが厚いようで、既に英米メディアに紹介されたものの引用を超えるものは、ほとんどなかった(とは言え、膨大な参考資料・文献をサーベイした労は多とすべきであろうが)。

しかし、本書の価値は、そのような戦術的なレベルの紹介ではなく、米国におけるアフガン戦争遂行をめぐる文字通りの「戦略」レベルの議論とその変遷、そしてそれが「秘密戦争」の強化といかに結びつくのかを明快に浮き彫りにしていることであろう。すなわち、筆者によると、ベトナム戦争型の支配領域の拡大を目指す「対反乱」戦略から、特定テロリスト勢力への打撃に的を絞った「対テロ」戦略への転換があり、それに伴って、通常戦力の削減(引き揚げ)と特殊戦の強化が進められているというのである。それについて、本書は、政府・軍高官の誰がどの戦略の支持者であったのかも含めて、きめ細かく紹介している。

本書のもう一つの特徴は、アフガンの現政権の腐敗ぶり及びその機能の弱体さを強調していることであり、その実情には誠に驚くべきものがある。仮に、それが「一面の真実」に過ぎないとしても、なお、アフガンの将来を見る上で、留意すべき指摘と考えられる。また、パキスタンにおける根強い、そして幅広い層からの対米批判を紹介している点も見逃せない。同国では最近の選挙で、米国との関係により批判的な勢力が政権を握ることになった由であるが、本書を読むと、それも当然のように思える。いずれにせよ、本書のこれら記述を読むと、米国アフガンないし対中東戦略の前途は誠に多難と感じられる。

余談だが、ごく最近のBBCの対談番組(Hard talk)で、ジョセフ・ナイ教授が米国の無人機使用の現状について、「too much」(攻撃対象を危険性の明白な特定のテロリストに限定すべきであり、行動特性から判断する、いわば「みなしテロリスト」への攻撃(これについても本書で言及あり)は過剰)と批判していた。これらの問題について、日本でも、もう少し関心が持たれてもいいのではないだろうか?本書は、少なくとも、その一つの契機をもたらすものではあろう。

2013-05-03

勝俣誠「新・現代アフリカ入門」

前々回、「経済大陸アフリカ」という本を絶賛したのだが、実は、一つだけ物足りないところがあった。それは、アフリカ大陸の「臭い」というか、「貧困」から脱却できない内在的事情については余り触れられていない点である。それを期待して購入したのが本書であるが、残念ながら、今回も、その期待は満たされなかった。

ただ、「経済大陸アフリカ」は、そこで紹介したように、そもそも書籍の狙いが敢えて内在的事情の紹介とは異なるところにおかれているのであるからそれもやむをえないのであるが、本書の場合は、「南」としてのアフリカの実情を探ると謳っているにもかかわらず、それがなされておらず、「(買って)残念な本」と言わざるを得ない。

本書筆者の主な主張は、結局のところ、アフリカは、「北」(先進諸国)に都合のよい一種の搾取構造によって、「南」(発展途上)に留まることを余儀なくさせられている、ということであろう。そのような側面があることはもちろん否定できないかもしれないが、より重要なのは、何故、アフリカがそのような構造から脱却できないのか、ということではないだろうか。

と言うのは、かつて植民地であった国も含め、アジア各国の場合は、それなりの経済成長なり「開発」なりを実現できている以上(これらの諸国に対してのみ「北」が寛大であったとは考え難い)、アフリカ諸国の場合、これら諸国とどこが違っていたのかを検討しないと、アフリカが抱える本当の問題は明らかにならないと思われるからである。問題を外部にのみ求めるのは、一見、「人道的」なように見えて、実は、そこに住む人々の主体性を軽視しているのではないかという印象さえ受ける。

また、筆者は、アフリカの「主権」に対する尊重を主張しているように見えるが、その「主権」がまさに不正・腐敗、ひいては虐殺などの問題を増長し、また、その解決を困難にしている要因にもなっているという現状については、どう考えるのか明らかでない。「主権」重視の主張は結構だが、少なくともそれが抱えるジレンマに言及しないのでは、説得力を欠くと思われるが、いかがであろうか。

2013-04-22

加藤隆則・竹内誠一郎「習近平の密約」

習近平の密約 (文春新書)

習近平の密約 (文春新書)

本書を購読した主な狙いは、第1に昨年来の中国共産党の人事問題をめぐる動向、とりわけ、薄熙来事件及び胡錦濤中央軍事委員会主席退任などの真相について、第2に就任後の動向からうかがわれる習近平の路線、考え方などについて、知りたかったからである。

このうち、第1については、それぞれについて、「内幕情報」的なものも含め、それなりの情報・知識が紹介されており(おそらく、公開できる話としては限界に迫っているとも考えられる)、一応満足できた。いずれも、結論は明確にされていないが、それは事柄の性格上、やむを得ないことであろう。むしろ、「これが真相だ」のような断定を避けているのは良心的とも思える。ただ、薄熙来事件の終結と党人事をめぐる最後の駆け引き、令計画の息子の「交通事故」、対日抗議デモの盛り上がりなどが時期的に重なり、それらの関連が示唆されているにもかかわらず、ばらばらに記述されているだけで、それについての総合的な掘り下げた検討がなされていないのが残念である。中国現代史研究の今後の課題と言うべきであろう。

第2については、党総書記就任後の習近平の動向、演説などが色々紹介されており、中には興味深いものも含まれている。しかし、問題は、それらの事実が筆者にとって印象的なものを恣意的に抽出しただけのものなのか、あるいは、全体を踏まえた上での特徴を的確に切り取ったものであるのかは、必ずしも判然としないことである。また、筆者自ら「太子党と言っても政策的には左右の幅がある」と言っているにもかかわらず、「太子党DNA」を背負う習近平は、「毛沢東の(極左的)民主観に縛られている」と断定している点も不満である。彼が毛沢東の詩を好んで引用したり、「大衆路線」を強調しているからと言って、そこまで断定できるのか、少なくとも本書で紹介された記述だけで、そのように主張するのは説得力に欠ける印象がある。そもそも、「大衆路線」と言っても、様々な意味があり得る訳で、その言葉だけをもって、類似性を指摘するのは単純過ぎるのではないか。現代中国の各指導者の路線・政策傾向については、単純に「左右」というだけでは論じきれない側面もあろう。より、きめ細かく、かつ多元的な腑わけないし検討が必要と感じる。

若干、高望的な批判を書いてしまったが、文章は新聞記者の筆によるものだけに読みやすく、リタイア後の「情報飢餓感」をお手軽にいやすには、まあまあの本であった。

* 前回紹介した書籍の筆者・平野氏が今日(22日)朝のNHKBSニュース番組のアフリカ経済特集のコメンテーターとして出演していた。客観手的に見れば偶然の一致なのであろうが、個人的には、私が発掘した人材がデビューしたような気がして嬉しかった。肝心のコメントも適切であったことは言うまでもない。

2013-04-17

平野克己「経済大陸アフリカ」

経済大陸アフリカ (中公新書)

経済大陸アフリカ (中公新書)

本書の特徴は、「アフリカを語るにアフリカ自体から説き起こすことをせず」、代わりに、「様々なグローバルイシューがはなつ照射線をこの大陸にあて、スキャンする」との方法論である。具体的には、中国の台頭、資源問題、食料問題、国際開発、グローバル企業などの視点からアフリカを論じている。そして、豊富なデータを実証的かつ効果的に駆使することによって、それぞれの問題のアフリカにおける実情を紹介するだけでなく、より大局的な状況、課題などを浮き彫りにすることに成功している。

とりわけ印象的なのは、中国の進出振りに関する記述である。アフリカ中国が天然資源獲得に血眼になっているという話は、かねて承知していたところではあるが、本書ほど、その実相を体系的に整理して呈示したものは見たことがなく、中国の総合的かつ野心的な取り組みには改めて驚嘆させられた。

ちなみに、南スーダンの独立について、以前に紹介した春名幹男「米中冷戦と日本」では、米国中国に対する巻き返し策として紹介されていたが、本書は、むしろ、「米中協力」の一例との解釈を示している。どちらの本も独立の経緯や見方の根拠について具体的な記述があるわけではないので、断定はできないが、どちらかというと、本書の解釈に説得力が感じられた。やはり、米中関係については、単純な対立か協力ではなく、両方が同時に展開されていると見るべきではないだろうかと改めて感じた。

また、国際開発のあり方についても、理想と実際の両方をバランスよく踏まえた議論が展開されている。アジア経済研究所と言う双方が交差する職場で長年勤務した筆者ならではの卓論と言えよう。このほか、我が国の一部企業(味の素など)による粘り強い低所得者向け戦略や南アフリカ企業の大胆なグローバル化戦略などについての紹介も興味深い。もちろん、そのような議論をすべて踏まえた上での結論としての、日本のとるべき方策についての提言が説得力に富んだものであることもいうまでもない。

最後に、内容に関するものではないが、表記に関して苦言を一言呈したい。本文中、随所で当然、漢字を用いて表記すべき言葉がひらがなで書かれており(例えば、冒頭の引用文中の「はなつ」など)、読みにくいことこの上ない。これは筆者の好みなのか、あるいは中公文庫編集部の方針なのだろうか。本文中に難しい漢字熟語が多用されていることからすると、前者とは考え難い。後者とすれば、漢字の数さえ少なければ読みやすいとの浅薄な考えか、あるいは見た目の「重さ」を緩和してすこしでも売れるようにしようとの魂胆か知らないが、日本文化を破壊するような愚挙は是非改めていただきたいものである。

2013-04-16

Constitution Project’s Report on Detainee Treatment

以前に紹介した米国テロ容疑者に対する不当な取り扱い(拷問、第三国への移送など)に関する超党派調査委員会によるレポートが公表された。まだ、目次しか読んでいないが、非常に詳細かつ網羅的なもののようである。この件は、単に米国のスキャンダラスな出来事ということではなく、テロ容疑者に対する処遇の法的な位置づけという意味で、日本においても、是非、紹介され、また、議論されるべきテーマと思われるので、とりあえず紹介しておきたい。全文がネットに公開されているので、関心のある方は、是非、ご一読下さい。