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2008-02-14 大黒黒客日記

[]やりたい!できない!それを見守る温かい視線「アオイホノオ」

かなりあちこちで話題になっている、島本和彦先生の「アオイホノオ」。書店に行くとかなり平積みになっているんですが、ぶっちゃけ題名と作者名よりもあだち充 高橋留美子 激怒!?」の文字のほうが目立ちます。誰が描いたマンガなのか一瞬わからんくらいに。

アオイホノオ 1巻 島本和彦の大学生時代はこうだった?(大炎上)

こりゃ目をひくわけです。帯のデザインした人は天晴れです。

 

いや、天晴れというのにも理由はあるんです。

実はこの表紙、極めて地味なんですよ。

アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)

マンガを読んだ人なら納得がいく、すごく的確な表紙なんですが、この地味さには本当にキモを抜かれました。

今までのほかの島本作品の表紙が熱さを前面に押し出していたことを考えると、さらに不思議な感じ。

新吼えろペン 9 (サンデーGXコミックス)アニメ店長 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

このとおり、あまりにも雰囲気が違って戸惑いまくりですよ。

 

そしてさらに「ああっ、やられた!」と思ったのが表紙をめくったところの絵。

いないんですよ、右下にいたはずの主人公が。

同じようなテクニックを用いられた作品で思い出深いのは、「よつばと!」の五巻。あれもカバーをめくるとよつばがいなくなって、度肝を抜かれたものです。

よつばと! (5) (電撃コミックス (C102-5))

こちらもいろいろな解釈ができる深い表紙でした。夏の終わりの表現や、この世界のファンタジー性、等々。何度見てもその表現力にためいきがでます。

ではこちらは?なぜ「アオイホノオ」の表紙はこんなに地味で、しかも主人公がいなくなるの?

 

●若さゆえの空振りフルスイング

この作品をギャグととるか、痛々しい青春物ととるか、あるいは熱血物ととるかは、その人が経験してきた人生によって大きく変わると思います。

しかし、読んでなんらかの刺激は受けるような描写がされています。どういうベクトルかはわからないけど、確かに心に足跡を残す作品に仕上がっています。

それは今までの島本作品でもそうなんですが、今回はさらに豪快さだけではなく繊細さを丁寧に盛り付けているからです。

たとえばこんなシーンがあります。

高橋留美子先生いわく上から目線」。

まあこれは笑うところです。しかしああ、よみがえってくるよ。若い頃に「自分がもしマンガを描けるくらいの技術がついたらもっとすげえのを描けるけど、描かないでとりあえず評価だけはしてやるぜ」的な痛々しさがあったことを。

あのころの知識不足と出来もしないことへの妄想が、ジクジクよみがえってきます。若さ故の過ちというか、それを残しておかなくてよかったというか。

別にこれはオタ文化のみならず、ですよね。仕事とかスポーツとか音楽でも同じ。

 

主人公の焔燃(ホノオモユル)がそういう空振りを繰り返していくさまは、面白くもあり、えぐられるように痛くもあり。このへんが人によって捕らえ方の変わってくる部分でもあります。

しかし、これがやはりオタク文化としてアニメ・マンガに向けられた視線なのは非常に重要なポイントでもある気がします。このへんは本編を、巻末の対談とあわせてぜひ読んでいただきたいところです。

どんな趣味でも見えない努力や、隠れた野望や、若い傲慢がぶつかったりつぶれたりを繰り返すものですが。なかなか形になりずらく、かつ逃げ道としての部分も存在するオタ文化でそれを貫くことのなんと難しいことか。

 

●空振りせよ、若者よ!●

では、島本先生はそんな若い時の暴走を「過ち」を、えぐるために描いているんだろうか?と問われるならば、答えは「否」だと自分は思います。

そりゃあもうね、何度も打ちのめされます。

世界は広いし考えているほど甘いわけもない。そしていろいろ悶々としながらどうにも前に進もうとする度胸がない焔だから、視界が広がるたびにめきめき挫折の連続。

ああ、やられた!

ああ、その手があったか!

ああ、自分は何をしているんだ!

 

上を見ずに下を見て満足したり、これは出来ないけどこっちなら出来そうと逃げたりしているときにも、情熱はあるんです。情熱は。

それがかなわず打ちのめされて、そこから劇的に這い上がるかというとそうでもない。

でも実際のところ、そこから一気にヒーローのように戦うよりも、じわじわと打ちのめされの繰り返しの中で、ほんわりと情熱を持ち続けている人だってすごいんですよね。

だって、諦めたわけじゃないんだもの。

 

島本和彦先生はギャグを交えた熱血派漫画家というイメージがあります。あるいは熱血をギャグにする作家、でしょうか。しかし、同時にたまらなく弱い人間を描くのがうまい作家さんでもあります。

人間ってのは、逃げることもあるんだよ!時にはダメになることだってあるよ!だから、ちょっとだけ動け!ビッグマウスで時には後悔するかもしれないけど、情熱がないよりあった方がいいじゃない!

島本先生は常に「がんばれがんばれ」と叱咤激励します。しかし同時に「よし、できないこともある!」と言い切ります。

 

もう一人重要なキャラとしてトンコさんという女の子がいます。

これがまた不思議な子で。

空振りする焔をとりあえずいつもほめます。時には淡々と「ちがうよー」とスカします。

彼女は何を思って焔を見ているのか、今の時点では自分は見当がつきません。本気で言っているのかすらわかりません。

そして、焔は今の時点でへっぽこなのでこんなかわいい女の子がそばにいるのにデートにも誘えず、手も出しません。なんという安全人物。

好いているようでもないんですが、それでもいつも部屋に遊びにくるんだものなあ。

ここは彼女に激励されて戦いに向かう焔が!…となりそうですが、なりません。

なんかこんなにかわいい子に囲まれて暮らしているんなら、ちょっとくらい青春のほうに気持ちが傾いてもいいんじゃないの?とすら読者としては甘いことを感じます。

その「いいんじゃないの?」が巧みなところかもしれません。

 

●逃げるさ!逃げることだってあるさ!●

仮面ボクサー (少年キャプテンコミックススペシャル)

また別の機会に触れたいんですが、「仮面ボクサー」という傑作マンガがあります。その中で主人公の仮面ボクサーは、すげー大口たたきで、もうへっぽこなんですよ。かっこいいけど逃げ腰でしょうもないんですよ。

だけど立ち向かうか!?いや、逃げるんですよ。

その描写に震えましたよ。熱血と根性は大事。しかしそれはそれ、これはこれ。

まあ、そういうこともあるさ。んで、なるようになることもある!

実はガンガンと厳しい口調で押しながら、誰よりもやさしく見守る視点の持ち主なんだろうなあ、と自分は感じています。

 

アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)

「アオイホノオ」は確かに、痛烈に過去の若い痛みを引き出す描写も多いです。それでも自分達は、マンガが好きなんですよ。

どうしようもなく打ちのめされることもあるけど、やっぱり好きなんです。

そんな情熱を。「空振りする情熱でも、持ち続けてみなよ」という島本先生のメッセージが、大胆ながらも非常に繊細にこめられている気がします。

改めてこのページを見てみます。

焔は画面にいません。逃げたのでしょうか。

だけれども自分はそこに、ごくわずかながらの「とりあえず何かしよう」という彼の前向きなところが表現されたのではないか、と受け取りたいと思います。

まあ、お酒を買いに行っただけかもしれませんが。それでも外に一歩足を踏み出した時に彼は何か見つける、んじゃないかな、と。どうかな。

 

でもどこかで、歯を食いしばって足を踏み出すのでしょうか。あるいはそのまま「なんとかなる!」のでしょうか。

うーん、今後を楽しみにしつつ、ほかの島本作品を読み漁ることにしましょう。

 

〜関連記事〜

燃える壮年の姿を「卓球社長」から見てみる。

卓球社長 (ビッグコミックス)

「アオイホノオ」と「卓球社長」は比較しながら読むことを心のそこからオススメします。若いほとばしりと、壮年の情熱という年代差の中に一環している心意気をぜひみてほしいのですよ。

 

〜関連リンク〜

アオイホノオの第1巻がヤングサンデーコミックス(小学館)から発売されました!(島本の感想文)

ああ、コミックスちゃんと売れてるだろうなあぁ(心配)。

「アオイホノオ」〜伝説の庵野ウルトラに幻の同人誌まで登場!! (いけさんフロムFR・NEO RE)

『アオイホノオ』と大作家芸術大学に関する徒然(黒い天使のブログ)

vs庵野秀明!?80年代、漫画家の卵の物語 - アオイホノオ(1)(真・業魔伝書庫)

島本和彦『アオイホノオ』1巻(枳棘庵漫画文庫)

作者本人が一番面白い「アオイホノオ」1巻(フラン☆Skin)

島本和彦/アオイホノオ(マンガ一巻読破)

しかし、年上と同学年とふたりのかわいい女の子にアプローチされて、そんな青春だったら確かに次の一手を踏み出すのはまだ先でも、と思う気持ちはわからんでもない。

まったく持って同感の一文。