たまごまごごはん

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学童期の自慰を巡る不安と成長「こどものじかん 7巻」

いやあ。
そりゃもうエロマンガで女の子の自慰シーンが出てきたら、もう大好物なのでニヤニヤしまくるわけですが。「エロマンガはファンタジーですから!」って分かってるから。
しかし、同じファンタジーなのに、「こどものじかん」7巻のりんちゃんには猛烈な不安を感じてなりませんでした。
そりゃあ興奮したかって言われたら興奮したよ!正直なところ。
ただ、この作品毎回のことですが、エロいシーンも必ずなんらかの裏があって、先生視点になるときに気づかされて痛い目にあいます。なんかあるんじゃないかと身構えてしまうのも当然のこと。
今回はちょっと真面目に、小学生期の自慰の話。自分みたいなロリコンが書いても説得力皆無だけどなー。
 

●至って普通のこと。●

りんちゃんも気づけば5年生です。
クラス替えに関しては、色々問題があった子供達(りんちゃんは先生に反発していたことがある、クラスのリーダー的存在。黒ちゃんは学力が低い。美々ちゃんは不登校だったことがあり、運動が苦手)ことを考えると、意図的にクラスが一緒にされるというあたりなかなかリアル。実際「偶然」で出来るクラスってないんですよね。大人目線だと。
青木先生も熱血で、本気で生徒に接しているので変わらずそのまま卒業まで…と組んでいくのも必然。このへん私屋先生よく調べているなあと思います。子供側からしたら「不公平!」と思うこともありますが、最終的に公平なのは大人になってようやく分かる部分。
 
ただ、りんちゃんは性的な意味で先生が好きになってきてしまいます。

体は確実に成長しているわけで。ましてや覚え立てなら先生のイメージが美化されて、性の快感と結びつくのはあっという間で。
 
絵的にはかなり衝撃的なシーンですが、この年齢で自慰を覚えるのはよくあることです。
実際の統計はないのですが、男子より女子の方が早いとも言われますし。っつか小学生女子にアンケートしたって答えるわけないから統計なんて出ないですよね。
母親目線で見てみましょう。
自慰行為をしているようです - 子供の病気・健康相談『ユンタ先生のすこやかカルテ』 - 育児のまぐまぐ!
幼児の自慰行為で悩んでます。 - 教えて!goo
幼児の自慰
幼稚園時期にはもう感覚は発達しているので、自慰をする場合があります。まあだからといってどうこうなるわけじゃない、比較的興味本位なものです。もちろん悪いことではないので、叱りつけるのは逆効果。
ただ、性的な知識もない時期なので、ほおっておくと外でやったりしかねませんので、興味を他にそらして充実させてあげれば気にならなくなる…とよく言われていますね。これって幼稚園児だけじゃなくて、発達段階に応じて変化すると思います。小学校高学年でも「なんとなくすることがないから」、というのはありそうです。
小学校高学年はもう体が性徴をはじめているので、自慰をする子が一気に増える時期です。だいたい5〜6年生くらいで自慰経験をした(射精する、イく、などを問わず)という人は多いんじゃないでしょうか。もっと早い時期でも問題はないですが、幼児期の自慰と思春期の自慰はちょっと目的や行動パターンは別、でしょう。クセと性的感覚の違いみたいなものでしょうか。
 
昔と違って今は「自慰は汚らわしい」という意識はないので、親にしても先生側にしてもその年代になったら「やっていても当然だろう」という感覚があると思います。特に責められるべきではない、至って人間らしい行動です。
もっとも「自慰は恥ずかしい行為」という本能?社会的規範?に似たものがあるので、なかなか子供の自慰について語られる機会はないです。今はそれでも性教育の授業で自慰はいけないことではないというのを教えてはいるみたいです。教え方の難しいところですよね、こうやって自慰しなさい、とは言えないし。「自然にまかせて」としか言えないので、それでいいのかなと。
 
ただ、親や先生が心配するのはそこではありません。「なぜそうしているのか」の裏の部分。
このマンガ、エロで読者をつり上げながら、その向こうの不安をどっさりたたき込んでくれおる。
 

●性の芽生えと羞恥のバランス●

自慰を覚えたてのりんちゃん、学校でやっちゃうんですよ。

マンガのネタとしてはエロ面白いシーンですが、どうもこの子の場合笑えないわけです。
 
女子の幼児性の自慰と、思春期に行う自慰の違いとはなんでしょうか? - 質問・相談ならMSN相談箱
思春期の子供の自慰のやり方を注意したい【性の悩み相談】
まあ、相談系の中身もどこまで本当かはわかりませんが、それに対してどう対処するかは参考になると思います。
やっぱりプライベートではない場所での自慰は、小学生くらいの時期だと大人がなんらかの指摘をしなければいけません。
いやあ、だってやっぱり人前でするもんじゃないですし。自分の身を守る上でも。
 
ちょっとりんちゃんがなぜこういう行動を取ったか考えてみます。
先生のことが好きで〜というのはもう前提でしかないのでまずは置いておきます。もっとも彼女がどういう意味で先生を好きなのか、りんちゃん自身も読者もよくわからない状態だからです。まだ彼女の視線はリアルに幼い。
 
りんちゃんは今まで常に周囲に気を遣って生きています。特に一緒に暮らしているレイジがその問題の根っこ(?)なのですが、親を亡くし、悲しむ人がいる状態でそうやって生きていくのをテクニックとして抱え込んでしまいました。人の反応を見て自分の行動を自然に決めてしまっています。
今まで反抗的で性的にも奔放で…と見えていた彼女が、実は誰よりも抑圧的でわがままを言えずにいたのは、読み続けているとじわじわと分かり始めます。
その中での、性的にどんどん突っ走り始めた彼女の行動。こと学校の教室の中でとなると多少暴走に歯止めが利かなくなっている感はあります。
 
抑圧に対しての反動も一部あるとすれば、多少なりとも何かが満たされれば、彼女の性行動もプライベートな範囲で納まるんでしょう。「見られたい」という興奮ではないようですし。

この会話からも分かるように、色々セクシャルないたずらをしかける彼女ですが、とっさの出来事には意外に純です。自慰が人に見せる物ではないものだというのも分かっているようですし、軽々しく誰とでもセックスしていいものだとも思ってないようです。ようするに平常の成長段階を辿っています。
もちろん誰にも相手にされないような状態にまで追い込まれてしまったら軽々とそのラインを超えそうな不安定さもあります。自慰はやっても全く問題がない行為ですが、学童期になんらかの心の支えの欠如によってそこに寄りかかってしまうと多少不安も出てきます。
なんてことはない。自我を支えるような何かが目の前に表れれば、心も体も性もまっすぐ育ちます。人でもいい、やりたいことでもいい。
 

●反抗期・不安・呪縛●

この作品の職員室のシーンは、非常に濃いです。
先生同士の会話一つ一つが子供を育てる大事な言葉であることをよく分かって描いているなあと深く感心します。いくら担任制な小学校とはいえ、会話のない職員室はダメな職員室。


ここにあるのは別にりんちゃんだけの話ではないです。すべての子供に対しての話です。青木先生や宝院先生も、目立つ子(りんちゃんとか)だけではなく、すべてのクラスの子に声をかけたり気を遣ったり出来るようにしました。最初の頃はりんちゃんで手いっぱいで、他の子をかまってなかったんですよねえ。大きくなったものです。
 
反抗期も性の芽生えも、自我の芽生えに伴って育つ物です。どれもこれもバランスを欠いた時、不安定さを生じます。
りんちゃんの性の芽生えにどうしても目がいってしまいますが、彼女ちゃんと「自分が何をしたいか」が芽生え始めているんですよね。今までの暴走はある意味、呪縛があって逃げ場が無くて不安で仕方なかったから。
レイジに縛られているというわけではないです。レイジの陥っている闇への同情や、親がいないことや、その他もろもろ…彼女のおかれている境遇は一人ではどうにもならなさすぎます。「耐える」だけでもしんどいです。

自分の意志をはっきり言っていい、自分の好きな物を好きと思っていい。でも不安になる。
そういう不安を超えた時はじめて自我が固く育っていきます。ここで性に頼ってしまうと迷走をはじめてしまいますが、ちょっとした刺激で性も心もまっすぐに育つようになります。
 
自我と共に芽生える反抗には色々な形があります。今までにないような甘えだったり、天の邪鬼すぎるむちゃなテンションな上がり方だったり。手のひらを返したような行動にびっくりすることがありますが、反抗するのは「好き」で「信頼している」という証拠。でなければ反抗しません。
しかし度を過ぎると乱暴な行動に出たり、自殺をほのめかす言動を行ったりします。
げんこつの一つでもかませばいいような問題ですが、今はげんこつも出来ない学校の現場。いやはや。
子供の自殺予告問題についてもかなり踏み込んで描かれているので、是非読んでみてほしいところです。
 
芽生えた自我をただしく矯正するのは、大人の力が必要です。自力だけではどうにもならないことも、あります。こどもだもの。

このコマ、色々な事件を起こしたり、性的にドッキリになったりするりんちゃんではありますが、それらと比べてもりんちゃんという子が最も育ったシーンだと思います。
 
自分の意志で行動する。
それが出来るようになるためには、何らかの心の支えが必要になります。
その心の支えが、青木先生だった、というわけです。
恋愛以前に、彼がいたことでりんちゃんは確実に、成長のための一歩を踏み出せたのです。
 

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結論としては、「りんちゃんはちゃんと育ってますよ!」という7巻。どぎまぎさせられつつも、段階を踏んで読んでいくと少しずつ安心できるあたり、本当に丁寧に描かれています。
どうしても好奇の目で見ちゃうのは御免許して!オトコノコだもん!
一個分かったこともあります。この巻で「りんちゃんを好きになる男の子達」が登場するんですよ。それがもう甘酸っぱくてねえ。チクビが透けて見えたら照れたりして。
ようするにりんちゃんカワイイカワイイと思っている自分は、青木先生目線じゃなくてこの男の子目線なんだなーと。そんな子供目線と先生目線が交錯するから非常にこの作品は読んでいて混乱します。その混乱の向こうにはじめて答えが浮かんでくるんですが。

どうしてもエロリ先行で話題が進んでしまい、売り方も「小学生がこんなことを!」的な展開なので、嫌悪感抱く人も多いと思います。
それらの人に「読むべき」とは思いません。仕方ないです。しかし逆に性的好奇心で読み始めてみたら、裏にある深淵に飲み込まれて夢中になる人も多いんじゃないかと思います。自分とか。
考えてみたら教育現場で小学生の性に接しない事の方が少ないわけで、小学生の自慰を見て「エロい!」と思いつつも「じゃあどう接するの?」と考えることには価値があるんじゃないかなあと思うのです。特にお父さんお母さん達は。
エロリファンタジーとしてフィギュアを買ったりニヤニヤして楽しみつつ、きりりと気をひきしめて教育を考える。読者にも二重性を求められる、二重性のある作品だなあとつくづく思います。面白い。
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