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2009-11-27 私立桜が丘高校軽音楽部日記
■[よもやま][マンガ]創作活動と「晒されたもの負け」の恐怖。
以前はpixivってあんまりブログやサイトで紹介すべきではないんだろうなー、なんて思っていたことがありました。
まあ、今でももちろん18禁やグロやBLなんかは、なんでもかんでもすべきではないだろうなあと思っています。サムネ見えちゃいますし、あんまり目立ちたくない方だっていっぱいいます。*1
ようは「こっそり楽しんでいる人の方が圧倒的に多いんじゃないか?」と思っていたからです。実際、初期はそうだったと思います。
しかし、1年くらいであっという間に様変わりしました。
最近は「サイトの紹介よりもpixivのアドレスの方がうれしい」というような話を各地で聞くようになりました。
また、絵置き場のアドレスがpixivに直結になっている絵師さんのサイトもめちゃくちゃ増えました。ブログに貼り付けるためのフォーマットが自動生成されるのですが、それを活用している人が本当に多いです。
「できればpixivで、どんどん見てね」という姿勢の方が現在、増えつつあります。
もちろん全員がそうだというわけでは決してないです。
しかしなるほど、pixivだと一枚単位で「何人の人が見たか」「この絵はどう評価されているか」がわかる上に、コメントやブックマークで匿名じゃない人からコメントをもらえます。ダイレクトに反応が分かるので勉強にもなるし、やっぱりコメントもらったらうれしいわけです。サイトだとなかなかコメントやブックマークって、出来ないですし。
実はそれだけではなく、pixivだと「その絵師さん一人きりで守る場所」ではないので、比較的安全なんだとも思うんですよ。
もっともブログなんかの形式だったら検索すれば一発で引っかかるような時代です、「見たい人だけ見て」という空間には決して向いていません。その分「誰もが自由に見やすい」という最大の利点もありますが、誰が来るか分からない。全く持ってリスクとリターンが背中合わせです。
かといってクローズドにしてしまうと、だれが見てくれているか分からない。作品がどう評価されているのか反応の見ようがない。これもさみしい。
絵にしろ小説にしろ音楽にしろ、そもそも「発表」するために作るからこそ、作品。SNS形式はそういう意味で同好の士が見つけやすいため、安心感が半端ではありません。
とはいえ、ネットに存在するのは「見て欲しい人」ばかりではありません。好意を持った紹介ばかりではなく、悪意を持った「晒し」が存在します。
だから恐ろしい。
●ウサギを喰い殺すワニの群れ●
なんでこんな話するかというと、今月の「妄想少女オタク系」が怖いからです。
できれば今までの流れを読んだ上で見て欲しいんですが、今までを読んでなくてもいい、今月号だけでも見て欲しい。
「ヒロインの女の子、まっつんと浅井の二人がBL好きで、サイトを立ち上げて地道に活動している」とだけ分かっていれば十分です。
好きな作品があって、それに対して色々愛情溢れて何かを作りたいと考える。
至極よくある普通のことです。
とはいえ、文章なり絵なり音楽なり動画なり作るのは非常に労力のいる仕事でもあります。なんといっても「思いつく」のは誰にでも出来ても、完成させるのは本当に難しい! 作品、として形にするのは「好きだから」だけでは伝えきれない、猛烈な努力が必要になります。
現在ネット上にあがっている数多くの作品は、50%の「好き」や「楽しい」と、50%の「努力」や「根性」で出来ています。いや、もしかしたら10%・90%かもしれません。
それでも作りたい、と思う気持ちがあるんです。
この二人の少女も、至って純粋な気持ちで同人活動を始めました。サイトに作品をアップしていました。
ごくわずかな人に、一緒に「面白いね」「楽しいね」と共有したくてです。
ちょっと面白いのは、自分達がやっている男同士カップリングが「正しい物」だとは主張してはいないこと。
あくまでもひっそりなんですよ。
「こういうの痛いよねー」「腐ってるよねー」「歪んでるよねー」
「でもさ、楽しいよね…!」
この作品、視点の行き来の中で、オタクじゃない人の目に触れてそれが「痛い」というのも分かって描かれているからすごい。
きちんと「オタクは時々道から外れた行動も確かにしている」「痛々しい言動もしているし、一般人から見たら恥ずかしいこともたくさんある」というのを、一般人を描写することで描いています。オタク万歳・BL趣味万々歳ではないんです。現実的に対面する問題から決して逃げていない。
それでもこの作品に出てくる女の子達が輝いて見えるのは、後ろめたさを背負いながらも「本当に楽しい」という思いを決して否定しないから。最初は否定したり迷ったりもしたけど、やっぱり好きな物は好きなんです。それで十分じゃないか。
とはいえ、現実は時として非情です。
自分の中でけりが付いて、色々悩んだり苦しんだりしながら成長して「でもこれでいいんだ!」と問題が解決した矢先、突然暴力はやってきます。

まっつんの目に晒されてる、というコメントが飛び込んだ瞬間。
囲まれている「〜お」の部分はまだいいですよ。
問題はその下。無数に並ぶ「腐」の字。「現役JKハァハァ」という書き込み。
サイトやっている人なら「ああ、あるある」というネタかもしれませんが、人の心をずたずたに切り裂くには十分すぎます。
ここで注目したいのは、直接的な悪口ではない、ということです。
「死ね」とか相手に書き込む人であれば、そもそもマナーとして無礼千万と叩ききることもできるでしょう。
しかしもっと意味のない言葉、内容のない書き込みなんです、彼女のサイトに書かれた言葉は。
個人的に他称としての「腐女子」がとても苦手です。自称ならいいんです。自分も「いやあ自分オタクだし、ロリコンだし」みたいに自分を下げて言うのはクセみたいなものですから。連帯感の中で生まれた、「わたしら腐ってるよねー」という軽いノリなら楽しいはずです。
しかし余所から浴びせる「腐」の字は相手の心を切り裂く言葉に他なりません。親しい友人が言うならかまいませんが、知らない人が浴びせるその言葉は、相手を低めて見ている蔑称です。
何も考えて書かれてはいない、「腐」の字の羅列。意味なんて無いです。無邪気なんでしょう。
しかし、相手の中にある悪意は確実にディスプレイを通じて、心の中をぐちゃぐちゃにしてしまいます。
悪意はなかった? いいえ、そういうのを悪意と呼ぶんだ。
もちろんこの場合、「晒した人」がもっとも問題がある、というのは異論の余地がありません。*2
しかし、「晒した人」「晒された人」だけが目に入ってしまって、何か重大なことを忘れている気がします。
そう、面白がって無邪気に悪意を振りまく人が一番問題があるんじゃないか、ということ。そもそもそういう人がいなければ、晒されたからどうのこうのというのはないはずなのに。
ウサギをワニの群れに投げ込んだ場合、投げ込んだ人がもっとも悪意に満ちているのは分かっています。
しかしそれを食い荒らすワニの群れが「当たり前」だと感じてしまう状況こそが、一番恐ろしい。
●見えない恐怖●
まっつんがタフな精神力の持ち主だったら、先ほどのような書き込み程度では折れなかったでしょう。
「だから何を言ってもいい」わけではないです。有名だろうが無名だろうが、繊細だろうが強かろうが、人と人との言葉の交わし合いは最低限のマナーを守ることで成立します。
ただ、この子たちは高校生です。ましてや過去にトラウマのある子です。
無邪気な悪意は、鮮血で染まるほどに心臓をずたずたに切り刻みました。

最近は「オタク」であることに抵抗を抱かない人も増えました。「オタクになりたい」という声も聞くようになりました。時代は変わったなあと本当に思います。それはとてもいいことです。
しかし、今だろうが昔だろうが、いるんです。「オタク」であることによって、心に傷を負った人は本当にたくさんいるんです。
「キモイ」
「死ね」
「消えろ」
子供同士の中で使いがちな、ちょっと悪ぶっている言葉の数々。大人から見たら「そんな言葉使うんじゃない!」と尻ひっぱたきたくなる所かも知れません。そんな言葉を何も考えず使う人間の方が、世間にどう見られているかも分かっています。
しかし後ろめたい思いをしながらオタクをやっていた人間にしてみたら、それは相手の視線からの自分の否定です。学校社会自体狭い世界です。もうそこに居場所は、無いんです。
「そんなに怖いなら、やめればいいじゃん」
その通りです。やめればいい。オタク趣味から足を洗えばいい。
でも、感動して泣いたことを否定できるのか?
作品を読んで心揺さぶられて、本当に好きになった物を、自分は否定出来るのか?
できるわけ、ないでしょう?
キモチワルイかもしれない。誰にも理解されないかもしれない。ただその時感激して心を揺さぶった物を愛しているだけなんです。誰にも迷惑なんてかけていない。
だから、見ないで。構わないで。
自分は男性ですが、やはりそういう思いはありました。後ろめたくて長い間隠れオタクでした。
怖いんです。本当に好きな物を鼻で笑われたときに、どうすればいいのか本当に分からない。必死に好きな物を大事にしても、誰かが笑っている。こんなに怖いことはないです。
そういう経験が無ければ、「怖い」という感情は生まれないで済むかも知れません。そもそも何も悪いことはしていないわけです。性的な部分を含む場合は、まあ後ろめたいのはあります。見たくない人もいるから見せないようにしなきゃなー、と。でも「気を遣う」のと「恐怖する」のは別です。
オタクは一般のレベルより劣っている。そう思い込んでしまっているのは実はオタク側だ、なんてこともあるのですが、そう感じてしまうのは無邪気で何も考えていない、たった三文字です。
「キモイ」。

一度そういう経験をすると、ことあるごとに恐怖がフラッシュバックします。「トラウマ」なんて書いたら本当に心の病気みたいになってしまいますが、そのくらい強く根付いてしまっている場合も実際あると思います。
上のコマのまっつんは、かつて太っていてオタクでバカにされ続けた、というトラウマから、ダイエットして美人になってオタクから足を洗いました。しかし本当に好きな物は捨てられないんです。だって好きなんだもの。
やっと自分の趣味を語り合える仲間が出来て、自分の居場所が出来たと思っていたところだったんです。
冷静に見れば、彼女の「怖い」はある意味誰もが経験しうることです。ネットというのは「誰が見ているか分からない」のがデフォルトです。
彼女だってその危険を分からない訳ではなかったはず。それでもサイトを作りたいと願ったのは、好きな物を共有したかったから。好きな物を語り合いたかったから。そして作った物を見て欲しかったからです。

もう一人のヒロインである浅井は、必死にまっつんを励ましました。そして「苦しんでまでやるものじゃないでしょ?」と言いました。
そう、苦しんでまでやるものじゃないです。楽しいから、好きだからやっているだけです。トラウマ掘り返してまでやるもんじゃない。
なのに彼女はぼろぼろと泣くんです。ぼろぼろと、何も語らずにただ涙をこぼすんです。
硬い表情のまま怒るでも泣くでもなく、涙がおさえられずそのままダダ漏らしになっているこのコマ。あまりにも複雑なオタクの感情を描いているカットだと思います。
「よし、戦いだ!」とケンカを起こす気にはならないんです。そこまでするものじゃないし、誰が「悪い」というのも分からないし。
ただ、自分たちがいた場所が土足で踏み荒らされたことが悲しいんです。ただ、理不尽を甘受するしかないこの状況に耐えきれないんです。
答えがわからないから黙っているしかないんです。
●どうしようもない世界の中で愛を叫べない●
恐ろしい回でした。
オタクであれば誰にでも起きうる状態ですが、ここから大逆転で彼女たちが荒らした人を一網打尽にするようなカタルシスはあり得ません。誰かをぶん殴って終わるならいいんですが、そう言う問題じゃない。もうこれは「起きた事実」として淡々と綴られるしかないんです。
かといって「オタク迫害だ!」とか「腐女子に対しての暴力だ!」と怒り狂って言葉でねじ伏せてもどうしようもないんです。誰もがオタク趣味を認める世界にしても仕方ないし、そもそも権利を認めさせるために彼女らはサイトを作っていたわけじゃないからです。
好きなものがある。楽しいと思ったことがある。コミックスでは本当に心の底から「楽しい!」と感じ、一生懸命邁進し、努力し、青春を謳歌していた姿が描かれています。
それが理不尽に失われた、という事実だけがここにあります。
「大人になったらこれもネタにして笑えるようになるよ」と言うのは簡単ですが、意味もなくワニに食い荒らされたウサギの心を救うことはできません。
正直、どうすればいいのか皆目見当がつきません。一旦ネットから距離を置いて、時間がたって心が落ち着くのを待つほかありません。本当に理不尽でしかたないけれども。
「晒されたもの負け」な世界の仕組みが変わる日は来るんでしょうか。
-----------------------------------------------------------------------
なんか後味の悪い文の締め方なので、せめてもの蛇足。
一生懸命やっていることを笑う人の感覚が分かりませんし、分かりたくないです。
でもそれは、自分だけじゃなくて誰もが思っている当然のことだ、というのも最近分かるようになりました。
本当に好きなことを大切にして、必死に努力して形にしている人のことを笑う人なんて、あんまりいないもんです。たとえそれが後ろめたい気持ちのあるオタク趣味でも、理解はされなくても、ちゃんと受け入れてくれる人は思ったよりもいるものです。
ただ、100の人が受け入れても1の人が暴言をはいて無邪気な悪意を振りまくとき、人は傷つきます。
それを0にする、というのは絶対に不可能。世界中に恐ろしいほどの人がいるんですもの、本当にどうしようもないです。だからその「1」の暴言に傷ついたが為に、過剰な検索避けをせざるを得ない人がいる心理も分からなくはないです。
けれども、1の人の暴言を真に受けて心折れてしまう経験は誰にでもあることですが、100の人の言葉を忘れないで欲しい、とだけ叫びたい。
世界の全てが人をだましているわけじゃない、受け入れてくれている人がいることを忘れないで!
まっつんはどうやって心の傷を乗り越えていくのか、気になって仕方なくもあり、見るのが怖くもあります。
しかしここまできたら、是非とも綺麗事ばかりではなく「好きな物を大切にする生き方」の山谷をしっかり描いて欲しいです。
なんだかんだで「でもやっぱり好き」という思いがあるから生きていける、んだなあ。
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