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2010-05-03 私立桜が丘高校軽音楽部日記

[][]澄んだ瞳の少女が殴る、蹴る、なぎ倒す!「チョコレート・ファイター

今回は、コミカライズされた方の「チョコレート・ファイター」の話です。

 

関連・女の子がなぐって蹴ってなぎ倒すんだぜ!「チョコレート・ファイター」

 

映画は非常に素晴らしい出来になっているので、何はともあれ「ガチアクションが好きなら是非見て!」と言いたいのですが、今回のコミカライズ、映画二時間分をうまく取捨選択しながら、独自の解釈を加えて見事なまでのアクションエンタテイメントになっています。

映画を見た人でも、見ていない人でも楽しめる、ある意味忠実、ある意味全くの別物、というかなり特殊なコミカライズになっているので、これはジー・ジャーファンとして大拍手を送りたいところです。

 

●少女のスピード感の再現度に喝采!●

まあ、本来であれば「マンガ単品」としての評価をするべきなんでしょうけれども、チョコレート・ファイターは自分の中でも大好きな作品なので、少し映画との比較も入れておきます。

なんといっても映画との違いやアクション性の再現こそが面白い部分でもあるので。

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見ての通り、「チョコレート・ファイター」の一番の楽しさは少女が超スピードで殴る・蹴るを繰り出す様にあります。やはりここが死んでしまっては元も子もない。

さてそれを、一巻完結の毎月連載でいかに面白く魅せるかとなると、そのままのコピーというわけにはいきません。

この映画には、最初はゆるやかに淀んだ世界を見せ、快速スピードでどんどん加速していき、息もつかせぬほどにアクションシーンを超濃縮した上で、ラストなだらかに終わっていくというタイ映画らしい独特のテンポがあります。そのままマンガにするとその緩急が見えづらい上に折角のスピード感あふれるアクションまでたどり着けません。

しかしこの漫画はうまく調節し、月刊の力を保ちつつ、アクションのスピード感を殺さずに一気に一巻読ませるパワーを持続させています。

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例えばこれは冒頭の、ヒロインの少女ゼンが見世物をやってお金を稼ぐシーン。

映画を見た方ならわかると思いますが、かなりマンガチックな誇張を含みながら、うまく再現されています。

映画を見ていない方でも、何が起きているのかを理解して「あ、実写で見てみたいかも?」という魅力を出しているシーンだと思います。

そこから彼女のなだれ込むような、ついてないとしか言いようのない世界が展開されていくのですが、彼女の動きのスピード感は全く衰えることを知らないどころか、どんどん加速していきます。

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やっぱりね……女の子がめちゃくちゃに強くてシャレにならない状態ってのはいいですよ!

もちろんばかみたいに強いオトコも最高にかっこいいですが、女の子が髪振り乱して全身全霊を相手に叩き込むというのは爽快の極み。

「理屈はいいから強い女の子が見たいんだよ!」という人は、まずこのマンガ読んで損はないです。

そしてそのまま一気にDVDを借りて映画を見ようGO!

 

●無表情なカノジョ●

さて、この少女ゼン、マンガの中ではアクションシーン多彩ですが、びっくりするほど表情が変わりません。

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相当アクロバティックなアクションシーンですが、見ての通り感情があまりないんです。

映画の宣伝があまりされなかった一要因でもあると思うのですが、実はこの少女ゼンは脳の発達に問題があるという設定が大前提にあります。太字部分はマンガのセリフそのままです。

引き換えのような形で、人間離れした感覚器官の発達と、相手の動きをコピーして自分のものにする卓越した身体能力を得ます。

同時に感情の起伏が不安定な上に恐怖心をもっていないため、なんにでも特攻していく暴挙というか勇気というか、不思議なパワーを得ることになります。

それが彼女の望んだものかどうかは別として。

 

もちろん感情が昂ることもありますし、特に母親のこととなれば怒ることもあります。

しかし彼女の感情は極めて純朴で、子供のものそのままなんですよね。全ては上記の設定がその鍵になっています。

無論フィクションですから、そういうものだと思って楽しむのが一番なんですが、まー日本では映画として作らせてもらいづらい企画だろうなあ、タイのフリーダムさそのままだなあと感じる部分なんですが、これをうまい具合に日本風に、受け入れやすくアレンジしているのが素晴らしい。

正直、上記のセリフもそうですが相当この部分作家さん苦労されていると思います。

彼女が何かを失っているのではなく何かを得ていると表現するのが作品の爽快感にもつながるわけです。それが彼女の重要な個性であることを、宝物を守るように丁寧に、美しく描き上げたいじゃないですか作品として。

 

●業と仁義●

とはいえ、映画にあってマンガで描きづらい部分、タイ人にはわかりやすくて日本人にはわかりづらい部分も映画には有ります。

それはおそらく、タイ映画のもっている業・カルマの感覚だと思います。

自分もよくはわかりませんが、タイ映画のアクションって「正義」のためにやっても、報われないことが非常に多いんですよね。それは正義のためであろうとも拳を振るい、人を傷つけたり殺したりすることは業である、という独自の感覚があるからだと思います。「マッハ!!」シリーズや「トム・ヤム・クン!」などのトニー・ジャー映画なんかはラストシーンで「えっ!?」となる方も多かったでしょう。ヒーローではあるけど、報われない。むしろ憂いを帯びている。

「チョコレート・ファイター」もラストがどうだったかはネタバレになるのでここでは書きませんが、全体的に彼女の拳は「振るいたくて振るう」わけでもないですし「正義のためにかざす」ものでもありません、ただ襲ってくるものは避け、純粋に母のために最善の選択を選んだ結果そうせざるを得なくて戦います。

だから彼女の無表情な戦い方は、映画の中でもマンガでもそうですが、感情の起伏が薄いだけでなく、彼女なりの憂いでもあるんでしょう。それこそ業のようなものです。

 

とはいえ業の理念は映画では描けても、日本人向けではない部分もあります。

では業の考え方を活かしつつどう魅力的に描いていくか、となった時に、日本人の大好物、あるいは根っから染み付いたものが出てきます。

そう、仁義です。

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このマンガオリジナルのキャラクターとして、どうでもいい感じの下っ端のチンピラが登場します。

ほんとどうでもいい感じの弱さなんですが、このキャラがすごくいいんだ。

ゼンの抱える業をうまい具合に昇華する引き金になっており、日本人の感性にあった仁義の貫き方を魅せあげます。

映画のテーマに関わる部分でもあるので賛否両論あるキャラではあるでしょうが、個人的にはひとつのマンガ作品として、あるいは映画のもうひとつの見方としてこれは「あり」だと思います。

映画で阿部寛演じるヤクザのマサシが、これまた映画でも仁義を貫く男でしたが、マンガでの仁義ブーストがすごいんだ。

自分はヤクザマンガが感覚的に割と苦手なんですが、これは少女のアクションとかかえきれない業をうまく中和するかっこよさとしての仁義道として描かれているので、平気どころか「かっこいい!」と感じました。なのでヤクザマンガ苦手な人でも胸を張ってオススメ。

 

●美しき少女、ゼン●

そして、映画からのパワーアップ度が高かったのがゼンは美しいという描写の数々。

もともとの映画のジー・ジャー自体がめちゃくちゃにかわいいので(強調します。かわいいです。すげーかわいいです。本当に可愛いんだって!)それ目当てに映画を見てもいいくらいなんですが、マンガは「かわいい」を作家視点で強化することができる媒体です。

作家さんはうまい具合にマンガの力を使い、高らかに歌うようにゼンを美しく描き上げました。

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アクションシーンも美麗で流麗ですが、静と動があってこその美。

たたずむゼンの姿は非常に美しく、無表情ながらも純粋に母を慕い求める彼女は神々しさすら持ち合わせています。

さっきから「無表情」と言い続けていますが、無表情の中に感情を描くというのは非常に難しいと思うのです。感情がないわけじゃないんですよ。表現ができないんです。

ゼンの魅力のひとつは、言葉や表情で表現できない、けれども誰にもわからないほど燃え盛る感情の起伏にあります。おそらく、出てくる全てのキャラクターの中でも1・2を争うほどに激しく、かつ一本筋の通った感覚を持ち合わせているんでしょう。けれども見えない。そしてひたすらに幼く見える。

いや、幼いことは幼いんでしょう。けれども「純粋」というくくりだけではおさまらない彼女の思いが別角度からマンガの中に描きこまれています。

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彼女の一挙一投足を、感情の部分から読み取っていくもよし。

一切そんなこと考えずに、人体美の究極像のようなゼンを楽しむもよし!

一回読んでざっくり楽しめるアクション快作でもありつつ、見方を変えて何度でも楽しめるスルメのような作品にもなっているこのコミカライズを、映画のファンであるという立場からあえて絶賛します。

この作家さんが、マンサンという意外な舞台で、ここまで綺麗に1巻にまとめてくれて本当にうれしい!

 

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映画を見た人向けの余談。

映画のラスボス的な扱いになるかと思いきや意外と出番の少なかったジャージのカポエラ改の使い手トーマス。このキャラもまた日本の映画ではまず出しづらいだろうなあという感じの設定の特殊キャラでしたが、漫画版での凶悪度が格段にアップしているので必見

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死ぬほど強いので見ていて恐ろしさ抜群。出番もメチャクチャ多いです。まさに、ラスボス。

その分削られたエピソード(工場のシーンなど)もありますが、ひとつの作品として、またコミカライズとして、両側面から見てもかなり幸せな作られ方をしているマンガに仕上がっていると思います。

 

映画から見てマンガを読むもよし。マンガを読んでから映画を見るも良し。

どちらも楽しめるかなり恵まれたコミカライズじゃないかしら。

一巻で終わるのもったいないなあとも思いましたが、映画のテーマを考えると冗長にせずしっかり終わったこれが正解でしょうね。