移動
流れるように時間が過ぎて、こぼれるようにいろんなものが消えていく。
まずは健康な歯だったり、健康な腰骨だったり、自分の体から見かけはかわらなくても健康が消えていく。
猫のぽーも病院で「高齢」と言われる年になり、あんなに飛んだり跳ねたりしていた元気が消えてきた。
消えるなんて言葉を使うからね、悲しくなるのよ。どんどん透明度が上がってきており、あちらの世界に移っているのだと思おうかな。
みんな移動するだけだ。
こんなに一生懸命存在するものがまったくなくなるなんて、どうしても思えない。
くすり
明日の朝ごはんに恵方巻を食べようと、買いに出かけた。
去年まで山のように積まれていたのに、スーパーには高くて小さいのが少し残っているだけ。
コンビニをのぞいたら一軒目はもう売り切れ、二軒目に小さいのが三本だけ残っていた。
廃棄処分しなくちゃならないほど並べてみたり、こんなに極端に少なくなったり、丁度良いって難しいね。
明日の朝はあったかい味噌汁を作って、この恵方巻を食べるんだ。
今週は、定期検診のつもりで撮ってもらったぽーの胸のレントゲン写真に、白い影がうつっていると言われ、ちーこが死んだ病院に検査してもらいに行った。
最期の日に、タオルにくるまれたちーこを抱いて帰ってきてから、どうしても行けなくなってしまっていた病院。
自分はヨワヨワだなあ、本当に。
(ちーこのことはいつかまた書きます。胸腺腫で手術したのだけど、それまでに悪化してしまっていた皮膚の感染がもとで2017年7月22日に死んでしまいました。)
ぽーは取り敢えずは大丈夫で、大嫌いな錠剤を頑張って飲んでいる。
左手で口を開け、右手の親指人差し指で錠剤を持ち、中指で下顎をおろして喉に薬を落とし込む。
飲んだふりが上手いので、もういいかなと手を離すとぶくぶくの唾液と一緒に吐き出してしまう。
頑張ろうな、ぽー。
たくさんの猫を育て、見送ってきた人の本を再読している。
雨を
忙しくしているうちに冬になってしまったなあ。
眠り損ねてしまって、雨を見ている。
ちーこが外を見ながら寝るので、カーテンを閉められない。
まだ冷たい雨が降っている。
私の人形はこれからどこに行こうかと考えている。
私たちの特権はひたすら自由なこと。
パリの人たちはどうしているんだろう。
どうかもうこれ以上酷いことが起こりませんように。
カフカとカフカ
搬入に向かう電車の中で数えてみたら今年6回目の搬入だった。
と言っても今回はカフカの続き。
第2章といったところかな。
カフカの文章を読んでいると私の頭の中には不条理アニメのようなものが映像になってするすると進んでいく。
難しく考える頭はないので、感覚でとらえて読んでいるのだけど、陰惨な場面を乾いたユーモアで書いたり、人間や生きものへの憐憫の表現もあちこちに書かれていて、クールな人間だったのだろうと想像していたカフカ像は今はもう違うものに変わっている。
夜の寒い部屋で毛布で体をぐるぐる巻きにして、身を削るようにして書いたユーモア。
だから私もそんなユーモアのある小さな世界を作りたかったのです。
期日がよくわからないのですが、15日から12月7日まで浅草橋のパラボリカ・ビスで展示されます。
もしよかったらぜひ足をお運びください。
あったかくしてね!