3年B組金八先生第8シリーズ第ニ話を観る

前回の続きで、我が子の絵に対する評価を不服として乗り込んできたタカシの親が、今度は美術教師の解雇運動をし始め、あの絵は自分の描いたものではないと言い出せないタカシをさらに苦しませる。タカシの親の件が生徒の噂となり、学校裏サイトで心無いことを書かれる等、次第に追い込まれていくタカシだったが、金八がそれを放って置くはずもなく、いつも通り、受験目前という事実を完全にシカトして通常の国語の授業をやらずに行った『授業』を通じて、タカシが”本当の自分になる”までを描いた第二話。

良かったのは、タカシが泣きながら親に真実を告白すると同時に「もっと僕をちゃんと見てよ!」と訴えるシーンの直後のカット。全てを吐き出した一夜から明けての登校風景のタカシの顔は、以前と比べ物にならないほど非常にスッキリ(not 加藤&テリー)しており、あたかも”夜の五反田帰り”かのようなスッキリ顔でさえあり、心のトゲが抜けたことは勿論、意味は違えど大人へ一歩近づいたということをよく表現していたように思う。

あと、もう一つの軸として、特にグレてる様子はないがどこか冷めた転入生、森月ミカが登場。こいつがまた加藤マサルから脈々と受け継がれる『金八シリーズにまともな転入生無し!』の伝統を堅持して、転入するなり「制服を着る意味が分からない。」だの、「親から自由になるために転校してきた。」だのと平然とした顔で言い放つラリ坊で、事もあろうに、堂々と真っ赤な私服で登校してくるっつー花の慶次ばりの傾奇者。来ました!さっそく大好物が来ましたぞ!きんぱっつぁん!と色めき立った僕を他所に、金八、全く動かず!!…思えば、金八が校紀違反の服装や髪型の類いに対して生徒を咎めてるシーンを見た記憶が無いと言えば無いが、転校したての生徒でもあるし、もうちょっと気にかけてるよ的な描写が欲しかった。まぁ次回にまとめてやるんだろうけど。

今回は、生野Dお得意の挿入歌流しっぱなし演出もあってか、淡々とした回だった。気になったのは、コメディパートの弱さ。金八宅での幸作との掛け合い等は、もうちょっとフザけちゃってもいいと思う。それと以前から言っているのだが、個人的には、一話につき一回金八が激怒する展開が欲しい。 次回予告を見ると次回ではその要求に答えてくれそうで、楽しみ。あと今回、大森巡査が全く出てこないっていう奇跡的な回だったのだけど、こんなこと以前もあったのでしょうか。自力で調べれば分かるんだけど、調べる=全シリーズ見直す=早送りでも地獄!なので絶対しない。

3年B組金八先生第8シリーズ第一話を観る

社会的に重いテーマをメインに据え、胸をエグるような内容で展開された近年の”金八”だったが、今作では、そのダークサイド3部作(5,6,7シリーズ)で過激になりすぎた感の有る方向性を一旦見直し、「初心に帰る」とプロデューサーが宣言。その姿勢に賛同しつつ、「初心に帰る」っつってるわりに脚本家は交代したまんまかよ!というアンビバレンツな姿勢への疑問と、前シリーズ後半から急遽登板という難しい状況の中、見事に”金八”を描いて見せた新脚本家・清水有生氏への期待が綯い交ぜになったまま本放送を迎えたのだが…、結論から言うとすんげええええええー良かった!!視聴後の安心感が、ただ事じゃなかった!

第一話で主に描かれたのは、「親の期待に押し潰されそうになる子供」と、「親の無関心に自分の存在意義を見失う子供」という、親に苦しめられるという点で共通しつつも対照的な二人の生徒。当然、金八はその親たちと対決することになるのだが、もう第1話から近年なりを潜めていた”金八らしさ”が炸裂。前者の親が、我が子の描いた絵に対する評価を不服として乗り込んできた際には、あたかも柳の如く親の無茶な主張をかわすのは当然として、事前に一悶着あって美術の先生にデジカメを壊されたことに怒り、弁償しろとまくし立てる親に対して、どさくさに紛れて金八

「(デジカメが)たいした値段じゃないから!どうせたいした値段じゃないから!」

言われたらすげー嫌なことをぼそぼそ言うのだった。この、親を煙に巻きつつも、ヤラシイまでのジャブをしっかりと繰り出すスキルが実にベテラン教師たる金八”らしい”。見ていて胸がすく。

そして、後者。我が子が寂しさから家を抜け出て、夜な夜なネットカフェに泊まっていることすら気が付かない無関心な親に業を煮やした金八が、家に乗り込んでいく。前者は、親が学校に乗り込んで来る、後者では金八が家に乗り込んで行く。と、そこらへんも対になってるわけですな。 で、生徒の家に乗り込んだ金八がもう金八爆発。まず、①さも当たり前然として家にあがり込み、 ②教師は家庭に口出しするなとキャンキャン喚く親に、いきなりブチ切れて「そんな事言いに来たんじゃない!!」と怒鳴って強引に黙らせ(←最高!)、 ③黙らせるや否や今度は一転「お願いですから…」と下手に出て、④言うだけ言って即座に立ち去る。この金八お得意の壁ハメ即死コンボ…、完璧である。これぞ金八である。これでこその金八である。このくだりがあったことで、僕の満足度は150%増になったのだった。

両者の生徒へのケアも抜かりない。ケアの手段は、勿論『授業』!!!! 一見、直接係わりの無い様な授業をして、生徒自身に大事なことを気付かせる。説教 or 授業 or DIEといった感のある金八だけに、その『授業』が悪魔的威力を発揮するのは当たり前なのだが、それにしても今回の生徒、妙に素直で物分りがいい。そこについて違和感を持たれる諸氏もおられることであろうが、僕は、そういった部分のストレスの無さで気持ちよく見られた。まぁ全員が全員、今回みたいな子でも困るんだけども。ここについては、ほぼ全肯定の盲目ファンらしく、金八が一学期中において既にクラス掌握済みで、ある程度生徒と金八に信頼関係が出来ている、と勝手に補完しておくことにします。


今作は、ケツから頭、全部が山場!!(c 般若)って感じの、見逃せなさのある展開ではなさそうだけども、毎回生徒一人に焦点を絞って丁寧に描いていく姿勢は今回で見て取れたし、傑作になる予感がします。大人から見れば本当にどうでもいいような下らないことを、まるで地球滅亡と天秤にかけて僅差で勝つぐらいの勢いで悩んで、どうしようもないような思考を巡らす。そんな生徒を描いていって欲しい。それと平行して展開されるであろう、学校経営の立場から物を言う校長と人間教育至上主義である金八の対立。これがどちらの主張にも一理あるので、どこに着地させるかが見ものか。あと、個人的に注目の生徒は、トーゼン3Bの黒い3年生こと学級委員のモンドくん。アフロアメリカンである彼の人選自体、製作側の何か意図があってのことだと思われるので、その意図するものが一体何なのか注目せざるを得ない。今回ちらっとやった英語の授業のシーンで、先生が読んでるテキストの内容がよりによって『キング牧師』の話だったので、ま、まさか、いきなり直球?!まだこっち全然温まってないよ!!と部屋で一人ビクッとしたのだが、特に何も無く…。今後に期待しますっ!

ハロプロ楽曲大賞1997-2006

こんにちは。ハロープロジェクトは、俺の母校です!!っつーことで参加します。配点は全てデフォルトで。

■楽曲部門
1位 宇宙でLa Ta Ta after summer remix / 太陽とシスコムーン
→好きすぎる。これでもか!ってぐらいに(わりと無理目な)ライミングの畳み掛けで強引に生み出してる疾走感と、 オリジナル盤よりもシンプルながら気持ち上品なアレンジが最高に気持ちいい。 前回の日記(2年前!)で書いたことと繰り返しになってしまうのだけど、 やっぱり僕の中ではハロプロの曲でこれを超える曲は(まだ}無い。 あと、宇宙でLa Ta Ta っていう’つんく離れ’した曲タイトルの響きもいいよね? 誰に同意求めてるのか分かんないけど。

2位 シャイニング 愛しき貴方 / カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)
→これは素晴らしいの一言。疲れている時、というか大抵は常に疲れてるんだけど、 そんな時に聴くと、このまったく押し付けの無いゆったりしたメロディーと拙さ全開の歌唱にすげー癒される。 3分という曲の短さも、物足りなさから繰り返し聞かせる作用があり、でまた聴けば聴くほど好きになるもんだからたまらない。つんくがなんでこの曲を生み出せたのか、 いまだに理解が出来ない。美しい曲。

3位 シンガポール トランジット / 後藤真希
→選考理由は、ちょっと前の日記に書いてあるのでそちらを見てください。

4位 またやっちゃった 〜渋谷でALLの日〜 / 太陽とシスコムーン
→この目を覆いたくなるような酷いタイトル。デートにまた遅刻したけどまあいいや、というどうしようもない歌詞。 加えて全編通じて挿入される「またやっちゃったぁ〜」だの「オヨ!」だのという確実に万人の神経を逆なでするような発声のリフレイン …。 まさにダサさの完全体。そんなことは十分分かってる。が!好きなんだから仕方ねえだろ!手抜きじゃねえの?ってほど音数を絞り込んだ編曲も、サビでのハモりもモロにツボ。 この妙な中毒性、レンジは狭いんだろうけど、異常に深い。

5位 HELLO!新しい私 / EE JUMP
→今聞くとさすがに音の古さとか気になりはするんだけど、ここに僕が一番好きなソニンとユウキがいるってことは紛れも無い事実。

3位以下とギリギリまで迷った曲
Everyday Everywhere / 通学列車 / さよなら SEE YOU AGAIN アディオス BYE BYE チャッチャ! / シャボン玉 / そうだ!We're ALIVE / 寝坊です。デートなのに… / 愛はもっとそうじゃなくて / 小さな夜旅 / 肉体は正直なEROS / 秘密 / 私の予定 / クラクション / 津軽海峡の女



■PV部門
1位 青春のSUNRISE / EE JUMP
2位 カレーライスの女 / ソニン
3位 BABY!恋にKNOCKOUT / プッチモニ
どれもこれも、どうしようもなくド直球の馬鹿で、且つ、クソ真面目で、ハッピー。


■アルバム部門
1位 3rd -LOVEパラダイス- / モーニング娘。
→僕が最ものめり込んだ時期(誰彼かまわずに「娘。で誰が一番好き?」と訊いて回った挙句、返事無視で娘。の素晴らしさを語り始めるレベル)に買ったアルバムだけに、 他のハローのどのアルバムよりも、段違いで繰り返し繰り返し聴いた。すっげー楽しかった。おそらく、今最もクソのような価格で中古盤が出回ってる アルバムなんだろうけど、僕のモーニング娘。はこれ。アートワークと初回特典のブックレットも好きでした。

2位 Taiyo & Ciscomoon 1 / 太陽とシスコムーン
→これが好きな理由も以前日記のどこかに書いたので割愛。

3位 ハワイアンで聴くモーニング娘。シングルコレクション
→僕らの永遠のオジキ、飛べない豚こと高木ブーと作った奇盤。 まぁタイトル通り、娘。のシングルをすべてハワイアンにリアレンジしただけっつーハナシ なんだけども、これがなかなかどうして異常な相性の良さ。 オリジナルとはパート割りが変わっていたりするのも面白い。 確かに、中にはどうしていいか分からない曲もある(高木ソロで「ふるさと」とか…)のだけど、 これもかなりの頻度で聴いている大事な一枚。なーんも考えないで安らげる。

■推しメン部門
後藤とソニン選べねええええ!から間を取ってユウキで。とか思って投票しに行ったら、リストにユウキの名前がねえええええ!! 知らねぇ名前とかすげー並んでるのに! ご無礼。なので今もCDをリリースして楽しませてくれてる後藤真希にしました。

以上です!

Musical Baton


さかもとさん(id:twisted)す一さん(id:su1モッシュさん(id:superartlife)から例のバトンが回ってきました。詳しくは、はてなのキーワードMusical Baton参照でお願いします。


■コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量

  • 13GBぐらい  


■今聞いている曲

  • BABY!恋にKNOCKOUT
    / プッチモニ

    • つい先日ランダム再生してたら不意に流れてきて、うわぁなんてバカな歌なんだ、と思ったが最後、リピート再生が止まらなくなった。今更ながら、この曲にはダサさもカッコよさもなく、ひたすらにバカしかない。バカな歌詞とバカな曲展開とバカな節回し。そして、それをバカな声で歌う本物のバカ。ただ一人冷静なのは、おそらくバカを演じているつんく♂だけで、聴く奴すらバカだ。こうやってバカが寄り添い集まることによって何が生み出されるかと言えば、そこにはびっくりするぐらいただ圧倒的なバカが聳え立つで、そのほかに何も生み出さない。素晴らしい。最近のハロプロって圧倒的にバカが足りないよね。



■最後に買った CD


Late Registrationが出る前に聴いておこうと思って、この間。


■よく聞く、または特別な思い入れのある 5 曲

  • Pain / Escalators
    • 「思い入れ」なんて言われると、どうしても学生の頃の曲を選んでしまうなぁ。この曲は特別そうでもないんだけど、強めのベース音とホーンが入ってれば問答無用で是!と叫ぶ体になったのは、たぶんEscalatorsのせい。
  • Back for free, do the freak / SugarSoul
    • 朝日が差し込むようなフルートの音と体全体で熱唱してる感じが気持ちよくて、朝学校に行く前によく聴いてた。全体にディープな気分になる同曲収録のアルバムの中で一際異彩を放ってたのもあって、より鮮やかに感じられたのかもしれない。後に、編曲が鈴木俊介っていうことを知り驚くことに。
  • KIDS/ Jamiroquai
    • よく覚えてる。「この番組のために曲作りました!」とかいってウゴウゴルーガ2号にいきなりJKが出てきて、ブースでクネクネしながら歌い始めたのを見たのが始めてだった。それまで自分が聴いたことの無い音でありながらガッツり嵌ったのでかなり衝撃を受けた。よく聴くかって言ったらそうでもないんだけど。
  • 宇宙でLa Ta Ta (after summer remix) / 太陽とシスコムーン
    • モーニング娘。のI WISHが出るちょっと前ぐらいに50円で購入。これを聴くまでもなんとくハロプロは好きだったけど、これでトドメを刺された。自分の中では、いまだにつんくの曲でこれを超えるものがないのは残念。
  • アーバン文法 / スチャダラパー
    • これは思い入れ云々ってのじゃなくて、本気でよく聴くので。


■バトンを渡す 5 名


お願いします!

シャア少佐そうしましょうを早口で三回言う

というわけで、モテる男はみんな観てる!でおなじみの劇場版「機動戦士Ζガンダム星を継ぐ者」を近くのシネコンで観てきた。今回のために新しく書き足した画と以前のTVシリーズで使われたままの画が混在する形の再編集+αの映画である、というのは事前に知っていたので、その映像の差についてはある程度覚悟して行ったのだけど、オープニングCG後のファーストカット(TV版そのまま)が目に飛び込んでくるや否や、古さを感じるもなにもいきなり受信甘めのMXTVの再放送レベルの画質だったのには度肝を抜かれた。想像以上の粗さだ。詳しいことは分からないが、20年近く前の作品であるということに加え、それを無理やり大画面に引き伸ばしてることで余計に粗さが目立っているのだと思う。大画面と最新音響施設であえて再放送レベルの画質のアニメを観る、という行為には、海外旅行なんか行くよりも家で一日のんびりとしてるのが一番の贅沢だね!に似た「一周回ってすげえ贅沢してる」的な響きがあるが、ご存知の通り、実際家でのんびりするなんて別に贅沢でもなんでもないこと同様に、贅沢気分などどこにもなく、ただ金を払って再放送のアニメを観ている感、早い話が、やべぇ!ハメられた!感があり、開始そうそう観に来たことを後悔させられた事実を否定しない。

が、そんなことを思っていたのも最初のうちだけ。開始10分もしないうちから、ものすごい疾走感。総集編(14話を90分に!)だから展開が早い、ということは当たり前として、それとは別の疾走感。話が一気に展開しつつ、雪崩式に山場をブち込まれる感じで、全然気ぃ抜く暇ねえの。かといって、メインどころのキャラクターの心理描写もおざなりになってなくて、あーもすーもなくぐいんぐいん引き込まれた。台詞が変わってたり、キャラクターの性格が微妙に(一部大幅に)変わってたりしてるのも楽しくて、なんつーか良い仕事したリミックス盤を聴いてるような感覚。TVシリーズでは秒殺(死んでないけど)もいいとこだったカイが、今後も活躍してくれそうな感じを見せてくれたところなんてもう、鼻血が出そうだった。いや、ホントに想像してたより数段面白かった。好きな人なら…という注釈付きではあるけれど、そして、終演後、一緒に観た友人に最初に吐いた言葉は「全部描きなおせよあのハゲ!」ではあったけれど、迷ってるなら観に行くべきだと断言!旧画の画質で受けるあの衝撃込みで体験すべき!

船越さん

2時間ドラマの帝王といえば? と質問すれば、おそらく九分九厘ぐらいの確率で「船越さん。」という答えが返ってくると思う。いったいいつからそう呼ばれていたのかは知らないが、”帝王船越”といえば今や誰もが認める不動の地位を確立していると言っていいのだろう。サスペンスからコメディ、ヒューマニズムからハードボイルドへとどんな役でもこなして見せるその力量を武器に、今度は逆輸入的に連続ドラマ界へ、さらにはバラエティ界へと活躍の場を広げ、その勢いは衰えを見せない。

活躍ぶりはよく分かる。たしかに2時間ドラマ界を制覇したと言ってもいい。ただ一つ引っかかることがあるのは、”帝王”というその異名だ。船越さんと”帝王”がどうしても頭の中でイコールで結ばれない。どうにもざらつく。本来の意味はおいて置くとして、”帝王”といえばやはり悪だろう。僕が「スターウォーズ」や、低学年の頃に熱を上げた「ゾイド」等で得た知識によると、帝王や帝国は常に悪の権化ということになっている。地獄の帝王だとか、暗黒街の帝王だとか、あとミナミの帝王だとか、ともかくとんでもなく悪い奴が”帝王”を名乗ることになっている。それはもう、最低でも2,3人は地獄送りにした挙げ句、何食わぬ顔で日常生活を営んでいるぐらいが好ましいほどだ。

それを踏まえて、船越さんの顔を良く思い出してみてほしい。おそらく、口を軽く尖らせ、額に皺を寄せた悪戯っぽい表情の船越さんが脳裏に描かれることだろう。そして、その自愛に満ちた下がりきった眉尻からふと視線を上げると、そこには生まれたてのヒナ鳥を思わせるあのヘアースタイルが現れる。それらが相まって、どこか純真無垢な赤ちゃんのようなイメージすら想起させられるはずだ。ややもすると、ソニンちゃんに似ているような気さえしてくる。一言で言うと、「キューピーちゃん」っぽい。そして、何より、祭りが好きそうな顔だということも見逃せない。「ひょっとこ」に通じる何かがある。当然ながら、ねじりハチマキもこれ以上なく似合うに決まっている。ねじりハチマキを巻き、法被を羽織り、勿論ふんどしを締め、すごい笑顔で太鼓を叩くだろう。太鼓を叩く腕前も、もはや素人ではない。おそらく演じたことがあるであろう「祭り好きの下町人情探偵(普段は、居酒屋のオヤジとかしてる)」役で培った一流のテクを見せ付ける。すこし広くなった額には大粒の汗がにじみ、腹から出す気持ちよい大声を上げ、これでもかと祭の盛り上げに奮闘する。そんな船越だから近隣住民の評判もよく、また船越自身も地域との繋がりを大事にし、近所で火事があろうものなら、誰よりも早く現場に急行し、率先して消火活動に従事することだろう(※参考)。燃えている家の2階に子供が取り残されているのが見えるが、しかし、消防車がまだ来ない、そんな状況で迷いも無く船越は言う。「そのバケツを俺に貸せ!」そう叫ぶや否や頭から水をかぶり、周りの静止も聞かずに一人火の中に飛び込んでいく船越。なんとか救出に成功したものの、案の定深手を負い、担架で運ばれる船越が、心配そうに見つめるさっき助けた子供に満面の笑みで言う。「坊主、母ちゃん大事にしろよ。」それが船越である。それでこその船越だろう。

思いのほか無限の広がりを見せる人生初の船越妄想に夢中になってしまったが、何が言いたいのかというと、船越からは微塵も悪の匂いがしないということだ。悪じゃない人を”帝王”と呼ぶのは、やはり何かとまずいのではないか。罪悪感で押し潰されてしまいそうだ。ここは別の異名を考えるべきであろう。2時間ドラマの大統領なんて最適なんじゃないかと思う。大統領と聞いて通常イメージするのは、アメリカの元首だが、そっちじゃなくて、居酒屋の、それも自販機でワンカップ大関を買って飲むタイプの立ち飲み屋から聞こえてくるお決まりのセリフ、即ち「よっ大統領!」をイメージしてくれるとありがたい。ありがたい?何書いてるんだ俺は。

All Falls Down

乗り換えの電車を待っていた。僕が立っていたホームの中央付近には、備え付けの蕎麦屋があった。外の券売機で食券を買い、それからドアを開けて入るタイプのJRによくある駅の蕎麦屋だ。店から流れ出る匂いが否応なく午後1時の僕の空腹中枢を刺激するが、次の乗車のタイミングを考えると、とても食べて出てくる程の余裕はない。そんな僕の葛藤などは知るはずもない中年男が、すでに財布の中の小銭を確認しながら券売機に近づいてくる。ウィンドブレイカーとジャンバーの境界線を綱渡りしているような、どこで売っているのか分からない服を着て、背はけして高くなく、頬はこけており、顔の半分はあろうかという勢いのレンズがはまった金縁メガネが真ん中で光っている。咄嗟に、高度経済成長期の燃えカス、といった意味不明の言葉を僕に連想させたその彼は、ナイスミドルとは言いがたく、むしろオヤジと呼ぶにぴったりで、僕のおぼろげな記憶の中にある「オールスター家族対抗歌合戦の審査員、故・近江敏郎氏」に気持ち顔が似ていた。彼が券売機の前に立ち、すでに慣れた手つきで小銭を入れ、迷いもなく発券ボタンを押した、次の瞬間だった。遥か遠くに見えた当駅通過の特急電車が轟音と共にもの凄いスピードで接近し、あっという間に目の前を通り過ぎて行った。通り過ぎた後には、ワンテンポ置いて突風が襲ってくる。最大瞬間風速は台風直撃レベルをゆうに超え、その駅は一瞬のうちに暴風地帯へと姿を変えた。

通過列車と突風に気を取られていると、なにやら僕の右の視界の端っこにある風景がガチャガチャと目にうるさい。何かと振り向くと、さっきの”近江”が、蕎麦屋の暖簾をくぐらずに、あたりを忙しなく動き回っている。キョロキョロと足元を見渡したり、黄色い線の外側に身を乗り出して注意深く線路を凝視したりと、おそらくは”何か”を探しているようだった。どうしようもなく無軌道で、且つこれ以上なく機敏な動きを量産し続ける”近江”の姿は、あたかもニワトリのモノマネをするコロッケかのようで、僕に頬の内側の肉を食いしばりながら震えることを余儀なくさせたが、同時にある考えを僕の脳裏に導き出した。

食券を吹き飛ばされたんじゃないのか。

買ったばかりの食券を、さっきの通過電車の突風で吹き飛ばされてしまったんじゃないのか。いや、そんな不運とドジを兼ね備えた人間がいるのか。なにか気の毒になって一応、僕の周りを見回してみるも、食券らしきものはどこにも見当たらない。まさか、いくら”近江”といえどもさすがにそこまでドジじゃねえだろ、と考え直したが、そうこうしてるうちに、ついに”近江”が地面に這いつくばって例の券売機の下に手を突っ込むという、まさに恥じも外聞もかなぐり捨てた大技を披露し始めた。なんかもう爆発寸前の火薬庫のような気分だった。続けざまに、券売機の下から引き抜いた”近江”の手がすげえ真っ黒になってたのが、執拗に僕の核ミサイルの発射ボタンを押す。もう駄目だと思ったとき、ようやくやって来た目当ての電車に逃げるように乗り込むと、”近江”もまた、電車にも乗らず、勿論蕎麦屋にも入らず、逃げるようにその場から消えていった。発車後、もう我慢できずに吹き出したら、車内はなにかいきなり一人で笑い始めた僕がヤバイ奴みたいな空気だ。違う、違うんだ。俺じゃなくて近江が、と心の中で繰り返すも、車内の誰の心にも届くハズもなかった。