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2011-03-19

wedding soup ―― 穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』

『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』を読んだ。

穂村弘の短歌はすきで、でも、これまでに読んだのは歌論集(『短歌の友人』)だけだった。歌集やエッセイは避けていたところがある。

問題集の巻末のこたえを見ずに、自分でゆっくり考えてみたい気分。夢中になっている小説を読み終えるのが惜しく、読み進むのを躊躇する気持ち。あるいは、ベストアルバムが気に入ったけど、オリジナルアルバムを買ってみたら、それほどでもなかった、というような がっかりを避けたい気持ち。

そして、いつかは読むのだろうとぼんやり思っていて、でも「読まねば」ってところまでは なかなか至らなかったし、「ほんとうに読まなければいけないものであれば、読まなければどうにもならない時が向こうからやってくるのだから、そのとき読めばいい」という、わけのわからない考え。

いままで読まなかった理由は、そんなところ。(ほんとうは、いちばんおおきいのは、読書量全体の減少の影響なのだけど。

にもかかわらず読んだ理由は(略


それで、『手紙魔まみ』から、気に入った短歌をいくつか挙げてみたいと思った。でも、単に「いいな」と思ったものを挙げたのでは、いわゆる秀歌として いろんなところで とりあげられているもの ばかりになってしまう。それではつまらないので「この歌集を読んで初めて知った歌」という縛りをつけて付箋を貼っていった。

そのなかで、これが一等いい。前述の縛りなしでも すきな方なので、この歌に関してネットにあまり情報がないのが意外だ。(ぼくの読み方がおかしいのかな。)


ほんの少し、風のつよめの日を選び、草原スープ婚のはじまり

穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』


「婚」なんて文字が入った歌をすきになるとは思わなんだ。びっくりした。

この歌の次には「新婚旅行へゆきましょう、魂のようなかたちのヘリコプターで」が記されている。こちらはネットでもよく紹介されているけど、ぼくは あまりピンとこない。「魂のようなかたちのヘリコプターで」と言われても、「新婚旅行」という ぼくには金輪際 エンもユカリもなさそうな言葉がイメージの喚起を邪魔してしまう。

対して「草原スープ婚」*1は、これからなにか すてきな あたらしいことが はじまりそう。「婚」の一字があるから、他者とのあたらしい関係のはじまりなのだと思う。それがどんな関係なのか、法律婚による配偶者同士の関係とは異なるものだろうということしか わからない。

風が強めの日の草原が喚起する情景もいいし。なぜ風の強い日を選ぶのか、とか。

これは、かなりすきだ。



手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)

手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)

短歌の友人 (河出文庫)

短歌の友人 (河出文庫)

*1:「スープ婚」は「ウエディング・スープ」から作られた言葉か → Wedding soup - Wikipedia / あと、こんなレシピもあった → no title(春の草原スープ)