バッファロー'66/ビンセント・ギャロ

makisuke2001-09-09

バッファロー'66 [DVD]
「わたしの夫、おとなしくてやさしくてゆめや理そうの高い人、そんな人がいい。でもやっぱり、わたしを、つめの先や毛一本一本まで、愛して愛して愛し尽くしてくれる人、そんな人なら、わたしも愛せるだろう。そうして、その人と死ぬまで、愛いっぱいのあまい生活をおくりたい。」

どうでしょう。どうなんでしょうこの作文。どうやら私が十歳の時に書いたものらしい。らしいというのは、覚えていない。久しぶりに会った当時の担任に、旦那さんに読ませなさいとプレゼントされたわけで。で、どうよと読ませてみたわけだが、お前はちっとも変わらないねと言う。空恐ろしいでも、うざったいでも、愛おしいでも、可愛らしいでもなく、お前は面白いと言う。十歳の時から出来上がりつつあった自分にぴったりの距離感の人物を、生涯の(おそらく)伴侶に選んだ自分をほめてやりたい。とかなんとか。

さてさて「バッファロー'66」である。もうビンセント・ギャロである。ビリーである。

私は、こんなにも、ダメで、どうしようもなくて、みっともない男を他に知らない。そして、こんなにも、優しくて、大人しくて、夢や理想の高い人を他に知らない。そしてそして、こんなにも可愛い男を他に知らない。私は知らない。彼は触られることすら慣れていない。「触るな」「俺に、触るな」という拒絶。痛いこと、寒いこと、暗いこと、空腹なこと。そうやって自分の腕を抱えて、じっと丸まってやり過ごしていたんだろう。

い慣らされていない動物を思う。彼に触ってみたくなる。ゆっくりゆっくり時間をかけて。その背中をそっとなぜてあげたい。人の手がこんなにも気持ちが良いってこと、温かいってこと、教えてあげたい。うんざりするぐらいの時間、ただもうなぜてあげたい。アナタの呼吸にただ合わせて。そして、眠りに落ちるまで、私の腕の中で過ごさせてあげたい。眠ってしまっていいんだよって。だから眠らせてあげたい。アナタに上手に眠りをあげたい。アナタに安心があげられれば、それだけでいい。

そして、クリスティーナ・リッチである。レイラである。

私は、こんなにも、素敵な軟らかいお肉持つ、女の子を他に知らない。彼女のビリーを見る目は、飼い慣らされていない動物を見る、それである。彼女は動物の扱いに慣れていない。大きいとか、温かいとか、上手だとかじゃない。むしろ似合わない。それでも彼女がそっと、そおっとビリーに手を差し伸べるとき、彼女はビリーの魂に触れたから。それにこの手を添えてみたくなったから。ありふれていて使い古された言葉だけど「やさしい」ってことがすごく分かったから。

甘え上手のペットと動物大好き女の子じゃなくって、人慣れしていない少しすさんだ動物と、動物は実はあんまり得意じゃない女の子の物語。

彼女を見ていると、触って欲しくなる。ゆっくりゆっくり時間をかけて。この背中をそっとなぜてもらいたい。人の手がこんなにも気持ちが良いってこと、温かいってこと、教えて欲しい。うんざりするぐらいの時間、ただもうなぜて欲しい。わたしの呼吸にただ合わせて。そして、眠りに落ちるまで、私を腕の中で過ごさせて。眠ってしまっていいんだよって。だから眠らせて。わたしに上手に眠りをちょうだい。アナタから安心がもらえれば、それだけでいい。

本当に幸せな時間は、いたずらに終わってしまったりしない。飽き飽きして、あくびが出るぐらい続くんだよって。それがこの世の中の約束だから。私の中のレイラとビリーが幸せでありますように。死ぬまで、愛いっぱいの甘い生活が送れますように。