海の仙人/絲山秋子

海の仙人

ファンタジーがやって来たのは春の終わりだった。

そんな書き出しで始まるのが、この本。絲山秋子の「海の仙人」なんだけれども。とにかく冒頭から、本に漂う空気感がいい。スカスカしていて、ぼわんと温かくて、なんだか気持ちが緩んでくる。その空気感を損なうことなく、最後まで読み切らせてくれた。そんな気分だ。この人の書く、とぼけた感じの短いセリフもとっても良くって、そのセリフにちょっと泣きそうになってしまったりもして。それはこの人が選んだ「敦賀」という街の持つ力もあるのだろうなぁと思ったりする。私の知らないその街は、遠くにあって、きっと良い所なんだろうなぁと思うから。

ファンタジーと名乗る役立たずの神様をはじめ、何処かが欠落したような人たちばかりが出てくる。それぞれに抱える問題もなかなかにドラマチックで。この本を読み終わったAが「おしい感じ、何だか無駄に不幸な気がする」と言ったのも分かるような気がする。それでも、私にはそれらがちっとも嘘臭くなくって。それぞれのキャラクターがそれぞれの人生をちゃんと生きている。そんな気がした。それらすべてのさじ加減というか、塩梅が絶妙な感じで、嬉しくなった。簡単には、寄り掛からずに。ひとりひとりがきっちりと自分の人生に責任を持っている。

背負っていかなきゃならない 最低限の荷物
ーそれは孤独

トラウマという物をもっと簡単で具体的な形に置き換える所も、気に入った所。トム・ウェイツの「レインドッグス」が出てくる辺りも、気に入った所。主人公がとにかくとことん考える辺りも、気に入った所。きっと作者である絲山さんも、しっかりとことん生きているんだろうなぁと思った。「生きる」ってことをちゃんと考えているんだろうなぁって。

こどもの頃からの友達

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子供の頃からの友達がブログを始めた。内容は韓国のスター(なんでもイケメン四天王なるものがいるらしい、私が見ても区別がつかないが、とにかくイケテルらしい)の話なんかで、私にはさっぱり興味も関心もないんだけれど。読んでいると、これがすっごく楽しいんだわっ。とにかく書いてる彼女が心底楽しそうな様子が伝わってくる所。そして、彼女が喋るまんまに書いてる所が良いのだ。余談だが、私は彼女が喋るまんまに書ける人だって、永い付合いで初めて知りましたよ、ホントに。彼女のイケメン観察日記を読んでいると、まるで彼女が遊びにやってきて、夢中になっていることを捲し立てるみたいに聞こえてくる。それが面白くって、クスクスしてしまう位。そして、時々はメール交換もする私たちだけれども。メール(会話)よりも、こうやって一方的に彼女の話を覗いている方が、断然楽しいのっ。私はつくづくと、誰かが何かに悦に入ってる様子を勝手に見るのが好きなのだな。それが楽しいのだなっと、納得をする。


子供の頃からの友達って、何処か兄弟姉妹みたいな感覚があって、どうして仲良くなったのか、ナゼ一緒にいるのか、良く分からない所がある。気が付いたら一緒にいたという感じで。少し成長して、自分てモノを持ってみたりすると、趣味も性格も住んでいる世界も結構違うことにびっくりしたりする。選んで出会ったのではなくって、すでにあった関係といおうか。とにかく、この出会いが大人の時代だったら、彼女らとは縁がなかったかもしれないな。似た所もないし。なんて思ったこともある。それでも最近は、またちょっと考えが変わってきた。私は思いの外、子供の頃からの友達が好きなのだ。気に入っているのだ。似ているのだ。きっと幼い自分は幼いなりに、自分の勘と本能で彼女達を選んだんだって思ったりする。

そして、気に入っている部分というのは、やっばりこの私にも脈々と流れている部分で。なんでもない、しょーもない、くだらない部分なんだけれど、そういうちょっと見過ごしがちな部分が、案外、自分の根っこみたいな部分かもしれないなあとと思ったりもする。そしてそういう根っこを共有している人たち(姉妹や昔からの友達)のことを大切に思う頻度が、日増しに高まっているのだ。

日々ごはん

実家から野菜が届いた。今回は私のリクエストで玉葱とじゃが芋がぎっしり詰まって、その合間を埋めるように、茄子やトマトや胡瓜やオクラや梨やらが詰め込まれている。早速お昼ごはんにじゃが芋を茹でてマッシュポテトに、胡瓜玉葱キャベツをどんどん千切りにしていって、オリーブオイルとクレイジーソルトで和えて、レモン汁をぎゅうっと掛けただけのシンプルなサラダに。トーストを焼いて、カフェ・オレを作って。

夕ごはんは「お好み焼き」の予定だったのだけど、「ごはんが食べたい」とのAのリクエストに急遽変更に。土鍋で炊いたごはんと、長芋をすり下ろして卵と麺つゆでのばしていって、とろろ汁を作る。オクラのおひたしと納豆。とろとろネバネバ三昧。味噌汁は豆腐と長ネギに。