最判昭和43年11月1日 議決権行使の代理人資格の制限

最判昭和43年11月1日 議決権行使の代理人資格の制限

事件番号
 昭和40(オ)1206
事件名
株主総会決議無効確認請求
裁判年月日
 昭和43年11月01日
法廷名
最高裁判所第二小法廷
裁判種別
 判決
結果
 棄却
判例集等巻・号・頁
民集 第22巻12号2402頁
原審裁判所名
大阪高等裁判所
原審事件番号
 昭和38(ネ)518
原審裁判年月日
 昭和40年06月29日
判示事項
 一、株式会社の訴訟上の代表者と商法第一二条の適用の有無
二、議決権行使の代理人の資格を株主に制限する旨の定款の規定の効力
裁判要旨
 一、商法第一二条は、当事者である株式会社を訴訟上代表する権限を有する者を定めるにあたつては、適用されない。
二、議決権を行使する株主の代理人の資格を当該会社の株主に制限する旨の定款の規定は、有効である。
参照法条
 商法12条,商法239条3項,民訴法58条,民訴法45条


判旨
         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人武田蔵之助、同横田長次郎各名義、同後藤三郎の上告理由第一点について。

 所論は、Fは、上告会社を代表する権限を裁判所に対し対抗できないから、本訴は訴訟要件を欠くもので不適法である旨主張する。


 しかし、Fを上告会社の代表者である清算人に選任した本件乙総会の決議は、右決議の取消しを求める被上告人の本訴を認容する判決が確定するまでは有効に存在するのであり、右決議が有効に存在するかぎり、Fは、上告会社の清算人の地位、資格を有するものと解すべきである。そして、商法四三〇条一項、一二三条は、株式会社の清算人の氏名および住所を登記事項とし、同法一二条は、右登記事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗できない旨規定しているが、これらは、会社と実体法上の取引関係に立つ第三者を保護するため、株式会社の清算人が誰であるかについて、登記をもつて対抗要件としているものであり、それ自体実体法上の取引行為でない民事訴訟において、誰が当事者である会社を代表する権限を有する者であるかを定めるに当つては、右商法一二条の適用はないと解するのが相当である(昭和四〇年(オ)第八六〇号、同四一年九月三〇日第二小法廷判決、民集二〇巻七号一五二三頁参照)。したがつて、Fの清算人の選任登記が経由されていないこと、他に選任登記を経た清算人が存在することは、Fを上告会社の清算人であると認めることを妨げるものではないというべきである。所論は、独自の見解に立つて、原判決を非難するものであつて、採用できない。

 同第二点について。
 原審が適法に確定したところによれば、上告会社は、その設立以来株券を発行したことはないというのであるから、所論上告人の主張は、株券の発行を停止条件とする株式の譲渡の効力いかんを論ずるまでもなく、理由がない。論旨は採ることができない。


 同第三点について。
 所論は、議決権行使の代理人を株主にかぎる旨の定款の規定は、商法二三九条三項に違反して無効である旨主張する。


 しかし、同条項は、議決権を行使する代理人の資格を制限すべき合理的な理由がある場合に、定款の規定により、相当と認められる程度の制限を加えることまでも禁止したものとは解されず、右代理人は株主にかぎる旨の所論上告会社の定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によつて攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができるから、右商法二三九条三項に反することなく、有効であると解するのが相当である。論旨は、右と異なる見解に立つて、原審の判断を攻撃するものであつて、採用できない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎