makotoiの日記:from London RSSフィード

2014-07-05 Innovation Weekend LondonとHackOsaka このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

金曜日に日本のベンチャーキャピタルの SunBridge Global Ventures さんが主催の Innovation Weekend London  というイベントでプレゼンしてきました。もともとは落選していたのですが、ドタキャンがあったので当日に参加が決まりました。

「Tシャツに短パン」という非常にカジュアルな出で立ちで登壇したのですが他の人は結構きっちりした服装の人が多かったです。日本企業主催だったので「失礼のないように」とみんなかしこまってきたのでしょうか。

今回も特に優勝とかとはほど遠かったのですが主催者の方々とあとでいろいろお話できたのが良かったです。

財団法人都市活力研究所」というお固い名前の団体の方々と名刺交換をさせていただいたのですが(こういうのも日本的ですね)、現在大阪の認知度を高めるために世界中を飛び回っているらしいです。

なんでも大阪と世界のスタートアップを結びつけるための Hack Osaka というイベントも開催しているとのこと。来年の2月にも開催を予定しており、世界中からのスタートアップを誘致するべく、海外にも足を伸ばしているそうです。

今年のイベントでは「Moff」という時計型のウェアラブルおもちゃが登壇したのですが、その後キックスターターで資金調達に成功して話題になっています。

Hack Osakaのピッチイベントの模様はYouTubeにありました。

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ちなみに1時間半と長時間なので時間のない人はStepUpから直接Moffのプレゼンを見てみてください(モバイルからはあいにく見れません)


ロンドンスタートアップシーンの印象を聞いたところ「シリコンバレーはちょっと特殊すぎるのでやはりロンドンとかニューヨークのほうが参考になる」とのこと。

前回の日記でも述べたのですが 、ロンドンの場合は金融やファッションといったその都市で強い産業と結びついたスタートアップが人気が高いけれど、シリコンバレーの場合は周辺の町そのものにはあまり購買力がないので、あまりスタートアップに地元との相乗効果を期待していないという点があると思います。

でも大阪ロンドンと比較するよりもどちらかといえばマンチェスターと比較した方が良いのではと思いました。

私の個人的な感覚でスタートアップ都市を並べていくと以下のようになります。

  1. シリコンバレー (唯一無二の存在)
  2. ベルリンテルアビブルクセンブルグシリコンバレーと対抗すべくテクノロジーに力を入れている町や国)
  3. ニューヨークロンドン、パリ、ストックホルムマドリッド東京 (経済の中心地であり、既存産業とテクノロジーとの相乗効果を狙っている町)
  4. チリ、トルコ東欧各国、バーミンガムアメリカの田舎(物価の安さを売りにしている町や国)
  5. マンチェスター大阪 、その他大勢(あまりスタートアップが進出の候補にはあげない町)

この中でも面白いのはマドリッドやチリでしょうか。それらの町自体の経済圏はあまり大きくないのですが、そこを足がかりに他のスペイン語圏(南米)に進出しやすいのを売りにしていたりします。

正直いって大阪マンチェスターも#2ほどテクノロジー特化になるには大きすぎるし、#3であるその国の経済の中心都市と真っ向から勝負する力もないし、#4ほど物価も安くない。ではマンチェスターはどうしているか?

ロンドンではオールドストリート地区を中心に政府が「TechCity」というブランド名で宣伝していますが、逆にマンチェスターBBCを誘致するなどして「Media City」というブランド名で対抗しています。

なのでただ単に「ベンチャーのみなさんきてください」というよりも「〜〜系ベンチャーならぜひ大阪へ」といえるようななにかが必要だと思います。

財団法人都市活力研究所」の方々によると大阪府内には技術力のある町工場が多く、一昔前に携帯の中をあけると大阪町工場の人たちが作った部品が所狭しとあったそうです。 今だとInternet of Thingsがはやりですが、ハードウェア企業が量産化するときに大阪にきてもらえるようになれば良いなとおっしゃっていました。でも「ハードウェアベンチャーならぜひ大阪へ」というと中国との競合になってしまうのですが、価格面だと勝負するのは難しいのでもう少し絞り込む必要があると思います。

ちなみに外国人である私の妻に大阪の印象を聞いたところ「お好み焼き」という返事が返ってきました。寿司懐石料理東京京都というイメージがありますが、お好み焼きたこ焼きといった「ストリートフード」といえば大阪ですよね。ちなみにロンドンでもランチの時間に小さな路地を歩行者天国にして「ストリートフード」の屋台が建ち並んで人気です。お好み焼きなどの「ストリートフード」、お笑いなどの「エンターテイメント」はいずれも人と人とのふれあいの産物です。関西人は「日本のラテン」といわれるぐらいなので「人情」をブランドとして売り出してもよいかもしれませんね。テクノロジーがどうやってそこに組み込まれていくかはよくわかりませんが、Moffのようなおもちゃとなんかからめていければ良いかなと勝手に思ってみました。

私は生まれが大阪で大学も関西だったので(関西弁はヘタクソですが)個人的に応援していきたいです。

2014-07-01 ロンドン起業日記のその後(2014年4〜6月) このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

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ロンドンの「Social Video Meetup」でStepUpを紹介中)

昨年の7月に起業してほぼ一年経とうとしています。

11月にロンドン起業日記という本を出版してからも3ヶ月おきぐらいに経過報告を書いていました。

もともとはBenkyo Playerというビデオ字幕検索サービスを作っていたのですが、現在はStepUpというビデオの中から興味深い部分のみを抜き出して反復させるサービスをつくっています。「なんのこっちゃ?」という方は私が最近発表したビデオをご覧ください。

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話を元に戻して、前回(1月〜3月)のまとめはこんな感じです。

  • ターゲット層をKPOPダンスビデオとカンファレンス関係に変えてみえた
  • 働く場所と人を変えてみた
  • 次のラウンドの資金調達の準備

前回の終わりの方に「資金調達を頑張る」と書いていたのですが、この3ヶ月は本当に資金調達に時間の大部分を費やしてしまいました。結果的には資金調達には成功していないのですが、得ることも多かったと思うので、その事を中心に書いていきます。

1. 資金調達活動

2. ユーザーと向き合う

3. チームづくり



1. 資金調達活動

ラウンド1 スタートアップ

まず最初に取り組んだのはスタートアップの知り合いを紹介してもらい、彼らにStepUpの説明をした後に知り合いの投資家を紹介してもらうという方法です。色んなフィードバックをもらい、好印象をもってもらったところもあれば、そっけないところもありました。 好印象をもってもらったスタートアップの多くに共通して言われたのは、君がやっているようなことだったらアメリカ投資家のほうがアピールすると思うよ、ということです。

なんでもヨーロッパ投資家B2B(企業向け)ビジネスを好むのに比べアメリカ投資家個人消費者向けのものを好むからだそうです。この事について自分なりに理由を掘りさげて見ると以下の結論にたどり着きました。

1. 収益より獲得ユーザー数を重視する場合、多額の投資を必要とするが、ヨーロッパ投資家にはそこまでの資金余力がない。 この事は実際にお会いした投資家の人達自身が「アメリカ投資家のほうがポケットが深い」という表現でのべていました。

2. ヨーロッパだとeu内で規制の枠組みが統一されている場合が多いので、b2bの多国籍展開がしやすい反面、アメリカだと州ごとに規制がバラバラ

3. ロンドンの場合は金融やファッションといったその都市で強い産業と結びついたスタートアップが人気が高いけど、シリコンバレーの場合は周辺の町そのものにはあまり購買力がない。そして他の大都市とも地理的に遠い。

面白かったのは「シリコンバレー資金調達するべき」と提案してくれた人達の多くは、ロンドンを拠点に活動しているにもかかわらず、会社の登記アメリカになっていることです。 これは、アメリカ投資家のが投資をする際に、自分たちお抱えお弁護士が海外の基準よりも自国の基準で契約しやすいというのも理由にあるのではと思っています。

ラウンド2 エンジェル投資家

スタートアップ経由で投資家を紹介してもらうのは時間がかかるので、それ以外にも自分でからネットワーキングイベントに参加したり、スタートアッププレゼンコンテストに参加したりしていました。

そこであるエンジェル投資家とであったのでその人にフォローアップのメールを送り、なんとかミーティングまでたどりつくことができました。そこで何日もかけて磨きをかけたプレゼンテーションファイルをラップトップから見せようとしたところ待ったがかかりました。


「パソコンなんか開かなくて良い、それよりもビジネスモデルを、どうやってお金をもうけるかいってくれ」。

いきなり出鼻を挫かれた形だったのですが、なんとかしてビジネスモデルを説明しようとしました。途中でその投資家の人も一緒にビジネスモデルを考えてくれようとしていたのですが、ビジネス用途向けのオンラインビデオ編集ツールと考えたその投資家と、大衆向けのビデオキュレーションプラットフォームと考えていた私の間には少し溝があったようです。

ラウンド3 VC

VCは通常億単位の資金が必要な会社を対象にしているので、私達には少し時期が早いかなと思っていましたが、なるべく早い段階から関係を構築したほうが良いと思い、会うことにしました。

まあ通常会おうと思って会える人達ではないのですが、CapitalOnStageというイベントがあり、それに参加すると2社のVCとの面接権がもらえるということで練習がてらにいってきました。

今回は逆にビジネスモデルに関しては一言も聞かれませんでした。それよりも重視されたのは会社のビジョンでしょうか。「Watch YouTube videos in bite sized chunk」というのを会社の一行説明に書いてあるのですが、それはあくまで機能の説明であってビジョンではないですよね。一応それらしいものは頭のなかではモヤモヤしているのですが、まだ一言でスパッといえないのがもどかしいです。

VCの一社の人は丁寧に対応してくれましたが、彼のStepUpに関しての2つの懸念は

1. これってただのYouTubeの一機能じゃないの?

2. キュレーションってスケールしずらいよね。なんとかしてステップを入れる作業を自動化できない。

1に関しては以前にも何度も言われて着続けたことなので、克服への努力はしつつもあまり気にしないようにするつもりです

2に関しては、キュレーションという作業は主観がはいるので自動化はそぐわないと思いつつも、ケースバイケースなので、自動化できそうなことに関しては試して見ようかと思っています。

2. ユーザーと向き合う

資金調達活動に重点を置いていたのと、デザイナーさゆりさんが日本に帰ってから一人だけの時期があったのが重なり、開発もマーケティングにも力を注げず、結果として3月には盛り上がっていたサイト訪問者もかなり下り坂になっていました。

それでも定期的にダンス関係の新規ユーザーがいる上、少数ながらもリピーターが出来上がってきているのは嬉しいことです。これらのユーザーとは実際にコミュニケーションもとれるようになってきたのですが、面白いのはそのきっかけがバグ報告だったりすることです。 ユーザーの中にはFacebook上で


「StepUpのすべてが嫌い」


というビックリするような書き込みをしてくる人もいました。よく話を聞くと、大量のバグに関することだったようなので、それを一つ一つ直していきました。彼女がそれに満足したかどうかは定かではありませんが、それいこうメールでコンタクトしても返事をしてくれるようになりました。ユーザとコミュニケーションとるにはバグを仕込んでおくのも良い???

またふとしたことから新たなユーザー層を得ることもできました。

資金調達活動の一貫としてmemrise という語学学習コミュニティサイトを運営するスタートアップを訪問した時のことです。そこのCOOに人にStepUpを紹介したら、彼らのブログでStepUpを取り上げてもらうことになりました。するとそこのコメント欄でユーザーの人達が、StepUpの語学学習の利用法について議論を始めてくれたではないですか。しかもそのブログを読んでくれた読者が今でも断続的にStepUpに新規加入してくれています。

StepUpの語学利用は去年も考えていて、自分達のブログで取り上げたり、他のサイトの掲示板に投稿したりしてもなかなか反応がありませんでした。でもほかのコミュニティの中心メンバーに認めてもらえれば、そこから一気に道が開ける可能性があることも学びました。

3. チームづくり

先ほど述べたように一人で活動していた時期には、「チームとして出来上がってないじゃん」、と苦しいことを言われることもありました。しかしながら最近パートタイムでも手伝ってくれる人が2人出てきて、投資さえ確保できれば彼らをフルタイムで迎え入れる用意が出来てきました。そして新たにサマーインターンの人も雇うことになったのでしばらくは4人体制でいけそうです。

「結局資金調達失敗したのにこれからどうするの?」とご心配な方もいるかもしれません。なんでもお金をもっている投資家の人たちは7月から9月まではバケーションに出かけているため、夏場にエンジェル投資家からの資金調達をすることは至難の業なんだそうです。

幸いこれまでケチケチ運営+少人数できたおかげで資金はまだ余裕がある上、少しながら収入の目当てもついているので、ここしばらくは資金調達なしでなんとかやっていけそうです。そこで夏の間はユーザー開拓の方に集中して、9月末には「お〜、StepUpもりあがっているね」と外部の人たちにいってもらえるような状態に持っていきたいです。

2014-06-11 Technology Strategy Boardの助成金プログラムについてしらべてみた このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

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以前「イギリスでは助成金がスタートアップの資金源として話題にあがる」と書きましたが、いろんな制度があってけっこうわかりづらかったりします。

私は既にNominet Trustという非政府チャリティー団体からの助成を受けているのですが、そのプログラムも終了したので現在次の資金調達に奔走中です。

ちょうど先週、イギリス技術戦略委員会(Technology Strategy Board 、通称TSB) の助成金プログラムを作成している方に彼らの制度を詳しく説明してもらったので、それを忘れないうちにメモ代わりに書いておきます。

  • IC tomorrow
  • SBRI( Small Business Research Initiative )
  • Collaborative R&D
  • SMART

IC tomorrow

イノベーションコンテスト」という名目で2万5千〜5万ポンド程度の比較的小額を助成する制度。

年に1〜2回ほどテーマを決め、そのテーマにそったパートナーを業界から選んでいるようです。去年は「ゲーミフィケーション」をテーマにGoogle,Sony Computer Entertainment,そしてイギリスの映画館であるODEONらが、より具体的なトピックを提示します。例えばODEONが前回提示したトピックは「映画が始まる前の空き時間、映画のスクリーン、そしてモバイルを利用してなにができるか」でした。

現在開催中のテーマは「Entertainment on the Move」というもので、モバイルを使ったエンターテイメント目的のテクノロジーがテーマです。「音楽」「書籍」「雑誌」「インタラクティブエンターテイメントとゲーム」の4つのカテゴリーに分かれています。私のつくっているStepUpウェブサイトですが、そのモバイル版の作成に使えないか検討中です。

額が少ない分、比較的融通が利くプログラムで、申し込み要項もフォーム一枚分とかなりお手軽そうです。

SBRI

案件によっては100万ポンドまで支援する大型の助成金です。特徴としてはTSBが対象企業に仕事を依頼する「コントラクト」形式なので成果物がどういったものかをかなり事前に詳しく定義する必要があり、もし事前のプランと成果物がことなったり、ある部分を作成しない場合はペナルティが課される場合もあるらしいです。

現在開催中のものに「Learning technologies design for impact」というのがあります。これは複数に分けて開催され、第1段階では8万ポンドの助成でリサーチ、次の段階でさらに大型の助成金をもとに開発になります。

私は最初これへの応募を検討したのですが、提出書類がかなり大掛かりになりそう、すでに私の場合はアプリがあるのでリサーチ段階をすぎている、そしてあまり事前に成果物を定義しずらい、などの理由で見送ろうかと思っています。

SMART

このプログラムは通称「マッチアップファンド」といわれるもので、プロジェクトの60%までを助成する代わりに、残りの40%は自力で調達する必要があります。

そしてこれもSBRIのように市場調査、プロダクト調査、プロトタイプ作成といった段階ごとに申し込み可能です。

これは特定のテーマといったものはなく、年に6回ぐらいにわかれて開催されるようです。

プロトタイプ作成に25万ポンドも助成してくれるなんて太っ腹ですが、それだけ大規模な案件を対象としているっぽいので私は現在は特に申し込みを考えていません。

Collaborative R&D

このプログラムSMARTと似たマッチアップファンドですが、パートナー企業や大学とのコラボレーションを基本としているところが大きな違いです。

私は申請する予定がなかったのですがちょっとどんなテーマがあがっているのか調べてみました。

なんかタイトルを訳すだけでも苦労しそうな大変難しそうなトピックばかりです。

まとめ

以上が概要です。助成金制度はいろいろあるのですが「小額助成金政府との契約案件マッチアップファンド」の3種類があると考えればすっきりします。

でもいろいろあるプログラムに申請するのはなかなか骨が折れるものです。特に助成額の大きな案件は申請書記入するだけでもかなり骨が折れるし、ビジネスプランをかなり細かいところまでつめないといけないようです。

競争率もなかなか激しいので「申請代理コンサルタント」みたいな団体もいろいろあります。前払いしなければいけない団体とはあまり関わりたくないのですが、成果報酬型(助成金のxパーセント)とかだとリスクも低いので悪くないかなと思います。ちなみに申請代理コンサルタントではGrantTreeという団体が有名らしく、彼らのサイトの中にもイギリスでの資金調達の種類についていろいろ詳しく書かれています。

2014-04-22 ヨーロッパの投資環境(Grants, SEIS, Equity Crowd Funding) このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

ヨーロッパ投資環境(Grant, SEIS, Equity Crowd Funding)を、実際に資金調達するスタートアップの目線からいろいろ調べてみました。

これまでの経緯

Benkyo Player LTDという会社を7月に設立してからはや10ヶ月経ちました。

これまではBethnal Green Venturesというシードアクセルレータから得た投資資金とNominet Trustから得た助成金でやりくりしてきました。

(詳しい経過は「ロンドン起業日記」を買って読むなり、この日記の過去ログを見てください)。

現在ほぼ一人でやりくりしているので資金的にはまだまだ余裕があります。

しかしながら個人プレーで続けるのにも限界が近づいてきているので、ここであらたな資金を注入してちゃんとしたチームとして活動しようと考えています。

そこでこの1ヶ月ほどいろいろ投資としてどういったオプションがあり、自分にはどれがあうのか調べてきたのでそれの途中経過報告をしたいと思います。

助成金 vs SEIS (Seed Enterprise Investment Scheme


通常イギリススタートアップ界隈で、3F(Friends, Family, and Fools)の次の段階の資金調達手段としてよく話題にあがるのが助成金(Grant)と

SEIS (Seed Enterprise Investment Scheme)を利用した個人投資家からの資金調達です。

助成金に関してはTechnology Strategy Board(通称TSB)という機関が中心になって多くの助成金プログラムを運営しています。「助成金」というとお固いイメージがつきまといますが、バイオケミカルといった分野からゲームなど本当にさまざまで、額も2百万ポンド(3億5千万円)をこえるような大型なものまであります。そして助成金はすべてが国からという訳ではなく私が助成金を受けたNominet Trust(.ukドメインの収入をもとに運営をする)のような非営利団体のものもあります。Innovate UKというところにいくといろいろなプログラムを検索可能ですし、なかにはGrant Treeといった助成金申請のコンサルティングで糧を得ている会社もあります。

SEISは逆に個人投資家から資金を得やすくするための税制優遇策です。

優遇策は主に三つあります。 詳しく政府のサイトをみてもらえばよいのですが、要約するとこんな感じです(これをみて投資しようとした英国在住日本人の方は私の言葉を鵜呑みにせず原文を参照してくださいね)。

特に1番最初の「投資額の50%分を所得税から相殺」というのが事実上「投資額の半分はかえってくる」ことになるのがこの優遇策の一番のポイントだそうです。

ちなみ制限としては

  • スタートアップ企業がこれで調達できるのは£150,000(2千5百万円)以内
  • 投資家ごとの投資上限は£100,000以内(千7百万円)
  • この制度に合致するスタートアップは「設立2年以内」「従業員25人以内」「総資産 £200,000(3千4百万円) 以内」などいろいろ制限がつく

この制限に合致するためには申し込みをしなければいけないのですが、申し込み用紙は1枚だけなので非常に簡単です(私も現在申し込んでいて結果待ちです)。

スタートアップとして助成金とSEISの両方を狙う人が気をつけなければならない落とし穴が1点あります。


That figure of £150,000 must also take account of any other State Aid received by the company in the three years preceding the relevant share issue which is de minimis aid according to EU regulations.

http://www.hmrc.gov.uk/seedeis/how-to-qualify.htm より

£150,000の上限は他のState Aid(たぶん公的補助金のこと)もいれた総額らしいので政府からの補助金を3年以内に受け取った人はその分だけさっ引く必要があります。ちなみに私の助成金は公的機関からではないのでセーフ.

VC vs エンジェル投資家 vs Crowd Funding

で、だれから調達するかなのですが、通常だとVCベンチャーキャピタル)からの億単位の資金調達を連想するかもしれません。しかしながら私のような少ない人数でやってきた会社が、いきなり多額の資金を調達しても無駄遣いすると困るので時期尚早かなと思います。でも一度、エンジェル投資を受けた先輩起業家の方とお茶したときに「VCでも最近少ない額から投資するところも出てきたし、そもそも投資家との関係は早いうちから構築しておいたほうがよい」とアドバイスをいただいたので一応調べてみることにしました。

ヨーロッパVCとか全然しらなかったのですが、調べているうちに面白いイベントを見つけました。「Capital On Stage」というカンファレンスではスタートアッププレゼンするだけでなく、VCの代表者たちが5分間のプレゼンをするそうです。その模様は録画されてYouTubeでも視聴可能です。

昨年ロンドンであったイベントを視聴してみたのですが、VCの人たちってあまりプレゼンする側にまわる機会がないせいか、意外としどろもどろになったり、カンペよみながらする人たちがいたりして逆に面白かったです。

今年はロンドンはないそうですが、5月にベルリンであるそうです。参加スタートアップ企業は「シリーズA」と呼ばれる億単位の資金調達活動をしているところが多いので私には敷居が高そうですがだめ元で応募してみました(参加するだけなのにいろいろ審査があるんですよね、このイベント)。

で、次にあたるべきなのは「エンジェル投資家」と呼ばれる個人投資家なのですが、そんなにお金持ちなんて知らないのでどうすればよいか悩んでみました。ちまたには「エンジェルネットワーク」と呼ばれるエンジェル投資家起業家とを結びつける団体や、斡旋してくれる会社もいるのですが、結構お金をとってきます。

起業家からお金を要求する団体ってどうなんだろう」と思い、私が投資を受けたBethanl Green VenturesのOB/OGや関係者が所属するメーリングリストで相談したんですが「そもそも金のない起業家から金をぼったくるところは信用するな」派と「ネットワーキングにはお金かかるんだからある程度のお金を払うのはしかるべき」派の人に分かれていました。

先ほど相談した先輩起業家の方に「どこでそんな投資家と知り合ったの」と聞くと「なんかのディナーで知り合って意気投合した」とのこと。

イギリスパブ文化で飲むだけのネットワーキングイベントが多くて辟易するのですが、レストランでの食事とネットワーキングイベントが融合した「Table Crowd」というイベントは、興味のある業界の人たちと知り合うチャンスを作りやすく、居酒屋文化からきた私にはうれしいです。もう3回も参加して、いろいろコネクションができたりしました。ここでのネットワーキングの成果が投資活動にも反映されればよいのですが。

そして最後にクラウドファンド。 クラウドファンドというとアメリカにある「Kick Starter」といったプログラムが有名ですが、これらは投資というよりも「気になったプロダクトやアーティストのパトロンになることで先約売買権を確保する」という意味合いが多いのです。しかしイギリスでは投資先の株も得ることができるEquity Crowd Funding というのがあります。 最近雨後の筍のようにいろいろ出てきているのですが、有名なのは2011年から行っているCrowdCubeと2012からと出遅れたもののFSA( Financial Services Authority)の認可を得ることで「イギリス発」の称号を得ているSeedrが有名です。

両者の比較記事をネットを検索したり、人から聞いたことをまとめると以下のとおりです(確認していない情報もあるので鵜呑みしないでくださいね)

  • CrowdCube経由だと議決権のない株式をもらえるが、Seedrだと株式はもらえない代わりにSeedrがProxy(代理)となり代わりに議決権行使できる
  • 手数料はCrowdCubeのほうが安い、でもすでに他のエンジェル投資家がいる場合、Seedrはその分を手数料から免除するけれどCrowdCubeは一括で請求してくる
  • Seedrを通すとヨーロッパ全域から投資を募ることができるけれどCrowdCubeでは各国の支店の連携があまりできていない
  • 登録されている投資家の数はCrowdCubeのほうが多い

といった感じでしょうか。

あと両者に共通することですが、投資家用の資料をアップロードすれば投資家がよってくる訳ではなく、いかに早く投資額の30%分をクリアできるかが資金調達の鍵だそうです。そこであらかじめ自分の足て投資家を集めるおいて、クラウドファンドで自分のファンドの告知をした時にはすぐに何割が埋まっている状態にするのがこつとかなども教えてもらいました。

私のアタックプラン

そこで私のプランです。 

いきなりクラウドファンドを募るのも考えたのですが、まずは自力でエンジェル投資家の人たちを見つけ出し、もし目標額調達できなさそうだったら補足分だけCrowd Fundingで調達しようかと思っています。 まあエンジェル投資家とか全然知らないのですが、これから1〜2週間ほど先輩起業家の人たちをいろいろ訪問して投資資料に目を通してもらいつつ、彼らの知り合いのエンジェル投資家を紹介してもらいつつ、いろいろなイベントにこまめに出て発表していこうと思っています。 もしこの日記をご覧になった方で「イギリス(またはヨーロッパ)在住の知り合いでスタートアップ投資に興味ある」かたをご存知でしたら@makoto_inoueまでご連絡いただけるとうれしいです(もちろん日本人であるかどうかは関係ありません)。

4月22日追記:日本人でもイギリスクラウドファンド参加可能か調べてみました。Seedrは「EU在住に限る」とあるのですが、CrowdCubeの方はスタートアップ側で支払い方法を選択していれば可能らしいです。

o_showo_show 2014/04/23 11:39 SEISについてなのですが、「Capital gains disposal relief」というものは「スタートアップがつぶれた際の優遇措置」ではなく、「株式を最低3年間保持していたら、株式を処分(dispose)した際に得たキャピタルゲイン(売却益)に課税しない」というものだと思います(政府のサイトの文章より http://www.hmrc.gov.uk/seedeis/background.htm )

スタートアップが潰れてしまった場合、つまり投資額が全く返ってこなくなってしまった場合は、投資額-50%までを損金にすることが出来る点が優遇措置なのかなと思いました。既に所得税優遇を50%しているので、それを引いた部分が損になるわけですね。 WikipediaのSEISのページからリンクされていた、ここの例示がわかりやすかったです。
http://www.syndicateroom.com/investors/seed-enterprise-investment-scheme-seis-tax-relief.aspx


また、SEISに該当するためには一人の投資家が一つの企業の株式を30%以上所有してはいけないという制限もあるようです。

2014-03-31 ロンドン起業日記のその後(2014年1~3月) このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

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(この3ヶ月お世話になっていたGeckoboardのダッシュボード画面)

これまでの経緯

Benkyo Player LTDという会社を7月に設立してからはや9ヶ月、そして現在注力している反復学習ビデオプレーヤーStepUp.ioを作り始めてから半年経とうとしています。詳しい経過は「ロンドン起業日記」を買って読むなり、この日記の過去ログを見てもらえば良いのですが、かいつまんでいくとこんな感じです。

年末に書いたエントリーでは「訪問者数増加や新規ユーザーというのは機能追加に関係なくマーケティング次第で増加は可能だけれど、リピータがあまりいないのでマーケティングの手を緩めるととたんに元に戻る」というのが最大の問題だと書きました。そしてその対応策を披露するはずだったのですが時間が経つのは早いものですぐにまた3ヶ月たってしまいました。そこで年初から何をしていたかを振り返るとともに、次の3ヶ月の目標をたてて行きたいです。


3つの変化

お正月に読んだブログかなにかで「自分自身を換えることは簡単にはできないけれど、自分の周りの環境を変えることは可能」みたいなことを読んで「なるほど」と思い、それを結構愚直に実践しました。特に行なったのは以下の3つです。


  • 「働く場所を変える」
  • 「ターゲット層を変える」
  • 「働く人を変える」

働く場所を変える

年末まではBGV(Bethnal Green Ventures)というインキュベーション施設がオフィススペースをただで提供してくれていたのですが、それも年末まででした。一緒にそこで働いていたスタートアップの多くは、その後も一緒に働けるオフィススペースを探し出し、引き続き同じメンバーで仕事をしています。私もお誘いがかかったのですが環境を変えたいと思い断りました。その時に同じくLondonウェブエンジニアとして働いているたつやさんから「うちのオフィスはデスクがいくつか空いているから、2〜3ヶ月ぐらいの間だったら安く貸し出せるよ」とお誘いを受けました。「同じレベルにいるスタートアップと机を並べるより、自分たちより2〜3歩先をいっているスタートアップと机を並べる方が得るものは多い」と思い渡りに船とばかりに承諾しました。

そのスタートアップGeckoboardといい、多くの分析データを1つの画面で共有するスタートアップです。会社が始まったのは2013年で、最初は創業者の人が一人で始めたそうです。現在では15人を超え、多くの優良企業を顧客に持ち、ベンチャーキャピタルからの大型の投資も受けた、ロンドンでいま注目なビッグデータ関連スタートアップの1つです。

「訪問者数増加や新規ユーザーを見ているだけで良いのか?」と疑問に思っていた時だったので、データ解析の専門家に囲まれながら仕事ができるのはすごく勉強になったし、たつやさんには色々悩みを相談することができて良かったです。

結局ここも3月の終わりには出て行かなければ行けなくなったのですが、次に移る場所もここで得た人脈を元にゲットしまいした。


「ターゲット層を変える」

年末まではRedditを通して単発で人は訪れるのですが、なかなかリピータがいないのが問題だったので、年初からはターゲットをいろいろ絞ってみました。

まず1月はギターを練習している層に向けてまたredditなどを使いアピールして行きました。すると1月の半ばぐらいにイギリス人の著名ギタリストの人が「StepUp.ioギターの練習にいいよ」とfacebooktwitterで告知してくれたおかげで、一晩に600人ぐらいの人がサイトを訪れてくれました。一日の訪問者数が20〜30人ぐらいでちょろちょろしていた時期なのでこれはすごいことです。しかしながらその後がなかなか伸び悩んだ上、http://soundslice.com や http://chordify.net といった競合サイトをいくつか発見しました。通常競合はあまり気にしないようにしているのですが、上の両者はギターの練習に特化していて、ミュージックビデオから楽譜を自動生成してくれる機能などはとてもじゃないけれど太刀打ちできません。

「どうしよう」と思っていたところに第2のブレークが訪れました。年末からフィリピン女子大生をやとってStepUp.ioのユーザーテストをしてもらっていたのですが、彼女にゲストブログを書いてもらうことにしました。彼女はギターやピアノの練習などでStepUp.ioを使っていたのですがブログではKPopグループ「少女時代」のダンスの練習について書いてもらい、これをまたまたredditに投稿したら一晩で1000人近い訪問客が訪れました。しかもこのブログを書いた直後ぐらいに少女時代の新曲がリリースされました。新しい曲がリリースされた直後は、みんなが一時もはやくダンスの振り付けをマスターしようと思っています。そこで振り付けされた曲をいちはやくStepUp.ioに載せたりなど、KPopダンス層にアピールできる曲を自分たちで追加することでリピータを増やそうとつとめました。

年末にJPopやボカロをターゲットにした時にはなかなか食いついてもらえなかったのですが、KPopは英語情報がたくさんあるせいか、比較的みんなStepUp.ioに抵抗なくサインアップして自分のお気に入りの曲を追加してくれました。なかには2分の曲を5時間にわたって繰り返しているユーザーもいたりしてなかなか有望そうです。

そこで2月の終わりから韓国人の方をやとってKPop分野を充実するようつとめています。

そして3月になってKPopと平行してさらなる分野を開拓中です。それは「カンファレンスビデオ」。私はカンファレンスに参加するのが大好きなのですが、自分が行けなかったカンファレンス、また行っても見ることができなかった講演などがあったりします。そういった講演をビデオで収録したものが後日出回ることが多いのですが、1時間以上するビデオを見る時間はなかなかなかったりするものです。そこでStepUp.ioを使って60分のビデオを10分に短縮したバージョンを作ったり、目次的な使い方ができることをアピールするようになると3月ぐらいからブログで色々取り上げられるようになりました。1月には1つのブログでしか取り上げられていなかったのに3月だけで急に19ものブログで取り上げられました。しかも面白いことに英語のブログは2〜3で、あとはスペイン語フランス語イタリア語、日本語、韓国語と雑多です。

働く人を変える

11月からインターン生を雇っていて、3月に契約更新を控えていてどうしようか迷っていました。しかしながら私のメンターから「Hire fast, Fire fast」(素早く雇い、素早く首にする)というアドバイスを貰い、更新しないことにしました。11月から頑張ってくれてはいたのですが、私の求めている役割と完璧にはマッチしていなかったので、惰性で雇い続けるよりはっきり「こことこことここの部分が足りないから申し訳ないけれど雇い続けることはできない」と説明すると納得してくれたようです。雇用というのはその人の人生を左右することなので簡単な気持ちで行なうことはできません。そして足りない部分があっても成長して補ってくれる可能性もあります。それでもなお人に「もうこなくて良い」というのはなかなか難しいですね。

あと6月からいろいろデザインを手伝ってくれていたさゆりさんも日本に帰国することになり、代わりのデザイナーも必要です。こちらもまだ代わりの方は見つかっていないのですが継続して人を捜しています。今ロンドンは景気もけっこう良く、とくにスタートアップはたくさん出てきている状況なので私のようなちっぽけな会社に対して優秀な方に注目して貰うのはなかなか大変です。

これからの3ヶ月

あと3ヶ月で会社創立1年になります。StepUp.ioを一般公開してから4ヶ月ちかくたち、少ないながらも使ってくれている人もいるし、ブログにも書いてもらえるようになったのでそろそろ次のラウンドの資金調達を考えています。

イギリスにはSEIS(Small Enterprise Investment Scheme)というスタートアップ向けの税制優遇策があります。スタートアップは15万ポンドまでこれをつかって資金調達可能で、投資家は毎年10万ポンド(千六百万円ほど)まで税制優遇を受けることが出来るます。具体的にはどういった税制優遇策かあまり勉強していなかったのですが、なんでも投資後3年以内にキャピタルゲインがあった場合に税金がかからないだけでなく、もしスタートアップ企業が倒産した場合も50%まで補填があるとか。これが知人のいうところ「今世界で一番おいしい投資家向けのプログラム」なんだそうです(まだ勉強中なのでまちがっているかもしれません。もうちょっと勉強したらまた詳しく書きます)。

イギリス税制は4月にきりかわるので、今年の分のSEISはみんな使い切ったと思うのですが、4月の半ばから2014/15 年度の投資枠が空くらしいのでそれをめどにエンジェル投資を募っていこうと思います。いままでうけた投資助成金は申し込み用紙に記入するだけでした。これからは自分で投資家探しをしたり、投資用の資料を作成したりと未知なことばかりですが、がんばっていこうと思います。