野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

しょうぎ作曲

今日は、住民参加型総合音楽劇プレ公演の初日。ワークショップのメンバーから、ぼくに完結で手短に分かりやすくきちんと公演の主旨をお客さんに説明するように言われていたので、そして、今までぼくの無茶な要求にも最大限応じてくれていたワークショップ参加者のみんなへの最大限の礼儀として、ぼくはこれに応える義務があると考えた。そこで、昨夜、深夜3時ごろまでかけて、自分が読むための原稿を用意した。これは、ぼくにとって人生で初の出来事です。活字メディアのためには原稿を書きますが、喋るのはすべて即興でやってきました。海外で英語でレクチャーする時でさえ、原稿を用意したことは一度もありません。

今朝の音楽ワークショップのメンバーとの打ち合わせで、まず朗読してみんなに聴いてもらいました。書いた原稿を読むのは、楽譜に書かれた曲を演奏するのに似ていますね。

手拍子のロンドをワークショップのメンバーと久しぶりに演奏してみた。みんなすごくイキイキと演奏していたので、この曲を公演の最初と最後と両方でやってみることにした。

それから、全員でしょうぎ作曲をした。今まで培った信頼関係や音楽的な経験が反映されるうえに、倉品さん、絹川さんも参加。今日の公演のために今日作曲する。これが、このワークショップ参加者の現在を表現する一番の方法だった。みんななかなかいい作曲をしていた。

つくしの会児童合唱団と大河原商業高校ギター部

朝食を食べずに、さらに昼食をとる暇もなく、つくしの会児童合唱団、大河原商業高校ギター部とのリハーサル。つくしの会は、初めて倉品さん、絹川さんに会う。手拍子のロンドを説明してみた。大人のワークショップ参加者があんなに楽しそうにやっていたので、子どもたちも楽しんでくれると思い込んでいたが、どこに面白みがあるのかを、ぼくがうまく伝えられず、子どもたちは戸惑いながらやっていた。その中で、音楽に最も関係のない喋るところが、一番イキイキしていたのが、面白かった。
「ゆか・まさあき」に合わせて、倉品さん、絹川さんに即興芝居をしてもらった。この曲は抽象的な音なだけに、色んなイメージを喚起する。それに一つのイメージをつけて客に提示することに、二人は戸惑っているようだった。そこで、この曲を聴いてどんなイメージを持ったかについて、観客に質問して、そのイメージで芝居をしてもらうことを思いついた。どうしてこんなことを思いついたか、と言えば、「つくしの会児童合唱団」では、いつも言葉をイメージすることを細渕先生が言い続けてきていたからだ。「つくし」の子どもたちならば、この音から何かをイメージして言葉にしてくれる、そう思った。「たぬきときつね」を聴いて、色んな言葉をイメージしてくれたもの。同じ曲が卵の孵化になったり、失恋になったりした。そのシーンとして芝居をしてもらうと、同じ曲が全く別のイメージに見えてくる。そこが面白かった。

ゲネプロ

いよいよゲネプロ。本番の公演の通りに進めていく。と言っても、最初にやる曲と最後にやる曲しか決めていなくて、途中の順番はやりながら指示する形。ゲネプロでの第1部の曲順は、

1 倉品さんの「間もなく開演です」(一人芝居)
2 野村挨拶
3 手拍子のロンド
4 ゆか・まさあき
5 ギターの指揮
6 つくしの指揮(パピポ星人)
7 「つくつくぼうし」の3重唱
8 大人のしょうぎ作曲

ここで時間切れになりました。野村がタラタラと喋りながら進めたからです。本番はもっとテキパキやるぞ〜。
それから、第2部のゲネプロ。この辺で疲労はピーク。

開演前

開演前に疲れてるのに、音楽チームはちんどん屋の音楽をホールの受付付近で演奏。みんなやりたいんだね。ぼくはさすがにクタクタな上に空腹では仕事ができそうにないので、ご飯食べさせていただきました。

公演

公演前に上演時間を聞かれたので、「1時間です」と答えた。答えた以上、「1時間」ぴったしにしてやろうと思って、そのつもりでやることにした。
予告編としての意味合いが多いので、それぞれの曲は全部聞かせなかったり、途中までにしたりした。「手拍子のロンド」で、子どもたちはリハよりもゲネよりも、伸び伸びとしていい感じになっていた。本番前(ゲネの第2部をやっている最中)に、ギター部と児童合唱団を集めて、絹川さんが演劇ゲームをやってくれていたのだ。みんな打ち解けたし、ゲームではギター部顧問の石山先生も大ハッスルしたらしい。見たかったなぁ。

本番のプログラム

1 倉品さんの「間もなく開演です」
2 野村の挨拶
3 手拍子のロンド
4 ギター部「ゆか・まさあき」
5 野村指揮による大人の即興
6 たぬきときつね(つくしの会の子どもの言葉つき)
7 つくしの会「パピポ星人」
8 つくしの会「つくつくぼうし」の3重唱
9 ギター部「しょうぎ作曲1」
10 ギター部「ノリのいい曲」(野村のソロつき)
11 ギター部「MY」即興芝居つき
12 大人「しょうぎ作曲」〜「手拍子のロンド」

本番、ぴったり1時間で収めました!本番でいきなりやった「大人の即興」の指揮では、会場内を走り回ったりしました。「つくつくぼうし」の指揮もハッスルしたし、なんというか、今日はこういうことをさせられちゃいました。あんまり、こういうことはしないのですけど・・・。今日はムードメイカーの役を引き受けました。

第2部の生田さんの芝居でも、音楽はうまく入れたと思います。

アフタートークとアフターアフタートーク

アフタートークは、大変でした。アフタートークの司会進行がいないようで、生田さんが進行を始めたようでした。アフタートークの進行役を一人設定した方が良かったのかもしれません。

生田さんは、既に作品を上演しているので、その上でお客さんから意見を聞こうとされていましたが、何について話すかを明確にせずに、アフタートークでいきなりお客さんに質問するのでは、ちょっと主催側としては無責任なのでは、とぼくは感じました。意見を聞くのは聞くのでいいと思うのですが、本日の公演を経て、何について話し合いたいか、いくつか話し合いたいポイントを明確に提示した上で、皆さんどう思われますか?と尋ねる方がいいのでは、と思いました。

それで、アフタートークで、演劇のキャストの人たちから、不満の声なども出てきて、関係者だけで、アフターアフタートークをすることになりました。

音楽チームの人たちに、明日に向けての連絡や指示を出そうと思ったら、みんなで話し合って進めてくれていて、明日の公演に向けて自分たちで色々動いてくれている。なんだか、グループがぼくがいなくても機能し始めているというのは、本当に嬉しいことです。このグループは、10周年が終わっても、えずこホールを拠点に続けていくことができると思うし、そうあって欲しいと思いました。

その後、別室でアフターアフタートークの場にいきました。外から見ていては分からなかったのですが、演劇チームで、これまで演出家と俳優の間で、いろいろなコミュニケーションがうまくいかなかったみたいで、それは本当に難しい問題です。

ぼく自身の問題としては、自分が素人の人と関わる場合は、その人たちの芸術を愛好する気持ちに水を差すようなことは、絶対にしたくないし、それはプロとして仕事をする上で、義務である、と思っています。今回のプレ公演をするにあたって、音楽ワークショップのメンバーをとにかくぼくは守ってきたつもりです。みんながきちんと育って音楽的な能力や経験を身に付けるまで、ぼくはみんなを守る責任があるし、それをしながら、自分にとってもクリエイティブな刺激を得る、ということを実現できるか。そういう現場で、ぼくは仕事をします。それができないならば、プロとだけ仕事をします。

それにしても、みんな抱きしめてあげたいよ。

頑張れ、イクターマン