野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ジョグジャの作曲家Memet Chairul Slamet

 作曲家のメメットさんを訪ねました。この人は、本当に面白い。Memet Chairul Slametさんは、ジョグジャ芸大大学院の西洋音楽学科の作曲の先生で、もともと西洋音楽を勉強(フルートと作曲)をした人ですが、インドネシアの様々な民族楽器を用いたガンサデワというグループをやっていて(CDをいただきました)、それ以外にも、石の音楽、水の音楽などの実験音楽の作曲をしたり、ダンスや映像とのコラボレートなどをしたり、さらには、1700人で上演した“Doa Anak Negeri"で、MURI(インドネシアギネスブック)の認定する最多出演者記録保持者になった人でもあります。で、訪ねていった自宅の中に、いくつか小さな音楽練習室があって、そこで、メメット夫人などが、音楽教室もやっていて、ピアノやギターや歌など、子どもに音楽を教えているようです。でも、そうした練習室で、自分のバンドの練習とかもやっていて、その辺に、色んな民族楽器が散乱するように置かれています。
 彼が1700人もの人で音楽した理由は、ポリリズムや、音の重なりへの関心があるとともに、色々な年齢の色んな人が恊働することで生み出される友愛の音楽でもあるようです。「種類がたくさんになれば、ますます良い。違いがあれば、ますます美しくなる」というようなことを言っていました。そもそも、1700人の人と21日間、毎日練習して本番を迎えたそうですが、日本でこの規模のイベントをするとして、21日も毎日1700人の人に付き合ってもらうなど、無理でしょう。そうしたことが実現してしまうところが、インドネシアです。彼は、コラボレーションのコンサートはいつ企画するんだ、とやる気満々です。6月に、日本から尾引浩志さんと片岡祐介さんが来ることになったので、そのことを伝えると、是非、一緒にやりたいと言ってくれました。
 メメットさんのグループ「ガンサデワ」が来週、Tembiでのフェスティバルに出演するらしく、一曲ゲストで鍵ハモを吹いてくれ、と頼まれました。で、夜にリハーサルです。
 バンドのリハーサルは、なんとなく集まって、みんなでお喋りして、だらだら。ようやく、1時間ほど練習したら、あとは、みんなでお茶を飲みながらお喋り。そして、解散というものです。また月曜日にリハーサルに集まるみたいです。きっと、月曜日もお喋りをいっぱいした後、1時間ほど練習するのです。そんな感じで、何度も集まって、正味4時間ほど練習して、本番になるのでしょう。日本だったら、効率が悪いから、一度に4時間練習して、本番になるかもしれません。でも、4時間1回と、1時間4回(+前後の雑談たくさん)というのでは、音楽の身につき方や疲労が違います。この1時間+雑談を何度も、というスタイルは、とても良いなぁ、と思います。こういうのを、ゆとりと言うのだと思います。
 で、ガンサデワは、音楽自体が、本当に良い。一緒に演奏していて、本当に楽しい。いやぁ、メメットさんは、いずれ日本に招いて、一緒にプロジェクトをやってみたいし、ガンサデワもいつか日本によびたいです。

Langgrng Art Foundation

 今日は、これだけで十分収穫があったのですが、これで終わりではありませんでした。ガンサデワのリハーサルの帰り道、Langgrng Art Foundationの前が凄い人だかり。夜の10時過ぎなのに。どうやら、展覧会か何かのオープニングらしい。で、入ってみると、オールナイトで、ギャラリーや、ゲスト用の宿泊室など、全スペースで、数々の映像を同時上映するイベントをやっていました。どうも、この巨大な文化施設がスタートするオープニング記念イベントのようです。
 この財団、私設財団のようで、たまたま、ここのオーナーの方とお話することができて、ビジネスなどで儲かったお金を使って、これは私たちの趣味なの、というようなことを、おっしゃっていました。インドネシアは貧富の差が大きい国なので、お金のある人は、本当にあるようですが、そのお金を使って、こんな大きなアートスペースを作ってしまうなんて、と驚きました。
 カタログなど、いろいろなものをお土産にいただきましたが、その中で、YCAM(=Yogyakarta Contemporary Art Map)が、ジョグジャの様々なアートスペースが載っている地図で、観光客向けに、レストランなどの場所も同時に載せてあります。ぼくは、山口情報芸術センターYamaguchi Center for Arts and MediaもYCAMだ、と伝えました。ジョグジャでYCAMに出会うとは思わなかった。
www.ycam.info
 深夜11時、12時になっても、続々と人が詰めかけ、美術系のアーティストの友人に何人も会いました。特に、10年前に、東京オペラシティ・アートギャラリーから、東京都現代美術館に移動するシャトルバスの中で、たまたま隣に座り、話をしたきり二度と会うことがなかった美術家のS Teddy Darmawanとの10年ぶりの再会には、本当に驚きでした。