野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

日本センチュリー交響楽団の高齢者プログラム

午前中は、鍼灸に行きました。東南アジアで過ごした後は、いつもお腹が冷たいのだそうです。洗濯などもして、1時間だけ、バリガムランとヴァイオリンの曲の譜面を書き進め、その後、大阪へ。

日本センチュリー交響楽団が、マンチェスター・カメラータの音楽家を招聘し、鈴木潤さんをアドバイザーに迎え、高齢者施設での即興音楽ワークショップを3ヶ月行ってきた最終回。ぼくは、9月の初回を見て、今日、3ヶ月ぶりに見学。オーケストラの楽団員(ヴァイオリン、ヴィオラ、ホルン、トロンボーン、フルート)が、お年寄りたちと即興演奏をしているのですが、オーケストラ・プレイヤーなので、楽器の音色はとても良いのですが、その音色がお年寄りの演奏するハンドベルや小物パーカッションの音色を殺さずに、共存していて、全ての音がクリアに聞こえてきたのが印象的。3ヶ月前にはできていなかったことが、確実にできるようになっていて、明らかに、耳の聞こえ方が変わったのだ、ということが、よく分かります。本人たちは、毎回、毎回のセッションを過ごしてきた積み重ねなのだと思うのですが、3ヶ月積み重ねるとこうも変わるのか、と驚きました。多層的に(しかし地味に)起こっている様々な音楽的な出来事ことが、聞き分けられる耳を持つこと、そして、それらに音で反応していくこと、が非常にスムーズに行われていました。その結果、立ち上がる音楽は、派手さはありませんが、とても、オーガニックな音楽で、音にヒエラルキーもなく、構成を仕切る人もいなく、ただ、そこにいる人々のやりとりで、進行していくのです。オーケストラで譜面に書かれた音楽を演奏するスペシャリスト達が、こうした即興音楽ができるようになることは、本当に大きな可能性が開けてきている、と思いました。

ということで、鈴木潤さんに向かって、「これは、奇跡と言っていいと思う」と、ぼくは思わず言っていました。少なくとも4年前に、初めてセンチュリー響マネージャーの柿塚さんとミーティングをした時に、たった3年半で、こんな光景まで見られるようになるなんて、想像できませんでした。特に、今回のこの高齢者企画は、野村はノータッチでしたから、最初と最後を見て、うわー、凄い、と感嘆した以外に、ぼくは何もしていません。

ということで、うーむ。日本センチュリー交響楽団とのコミュニティ・プログラムは、ますます、面白くなっております。そして、鈴木潤さんとか、近藤浩平さんとか、徐々に、一緒に関わってくれる関西の作曲家たちのサポートもあり、ますます、面白い企画を打ち出していけそうです。打ち上げでも、マンチェスターのアミーナ、ナオミ、ルーシーとも、そして、センチュリーの方々とも楽しく語り合い、よき時間を過ごせました。

帰宅後、作曲しようか、と思いましたが、今日は、寝ます。