野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

うたう図書館

今日は、愛知県の田原市に行ってワークショップなのですが、朝食後、出発前に30分だけ作曲。バリガムランとヴァイオリンのための「Quartet for Lou Harrison」。1月12日の「世界のしょうない音楽祭」で、世界初演。ヴァイオリンは、日本センチュリー交響楽団の巖崎友美さんで、バリガムランはギータクンチャナ。明後日には完成させたいので、30分でも、そこそこ書き進められるので、嬉しい。

豊橋まで新幹線。そこで、渥美線に乗り換え、愛知大学吉野さつきさんと学生さんと合流し、三河田原へ。そして、田原市図書館の大林さんの運転で、福寿苑へ。視覚障害のお年寄りが多数入所されており、音の感覚が鋭い方も多い。12月23日に開催する「うたう図書館」の関連企画。お年寄りの歌声、話し声などを録音。23日のコンサートの中でも、録音した音声も何らかの形で活かしたい。

炭坑節の替え歌をしたり、美空ひばりの歌う「越後獅子」を歌っていただいたり、田原中学の中学生と作った歌を聴いていただいたり、中学生時代の頃の恋愛を思い出してもらったり、ハーモニカの名手が登場したり、託児所の子どもが登場して、ノリノリになったり、子ども向けの歌を歌ったり、などなど、色んなことが起こる2時間。

その後、図書館に戻り、打ち合わせの後、愛知大学の学生たちと夕食。若者たちの元気なエネルギーに触発される。

終電で京都まで帰る。相変わらず電車の中でカウエルの伝記を読んでいる。カウエルが刑務所に入っていた4年間の場面だけで70ページもあり、出られるまでの時間が長く感じられたが、ついに、出所。長い70ページでした。それにしても、刑務所内でカウエルの授業を受けた人が、合計2500人で、教育プログラムへの参加率も非常に高まったらしく、刑務所の中で書いた原稿も多数あり、作曲作品も多く、さらには、ブラスバンドの指揮やコンサートまで。でも、とにかく、保釈されてよかった。

家に着くと24時。カウエルの刑務所1年目に書いたという「Three Ostinati with Chorales」をYouTubeで聴く。こんな曲を、刑務所の中で、肉体労働で疲れた合間の時間、牢獄の中で書いていたのか、と思うと、せめて自分も寝る前の30分だけでも作曲しようと思い、バリガムランとヴァイオリンの新曲を少しだけ譜面を書いてから、就寝。