Hatena::ブログ(Diary)

そっとチラ裏


オモテのblogに書くまでもない、チラシのウラ   【記事一覧】 【このブログは何?】


2012-08-08

コミュニケーション能力格差社会の負け組と言えば、村上春樹『1Q84』の牛河

 『ニートの歩き方』に関するfujiponさんの書評記事でこんな一文があった

むしろ、「ニートなんて、ラクしやがって!」と思っている人に、一度読んでみていただきたい本です。

人間関係のさまざまなめんどくささをカネで解決できない生活は、けっこう大変そうだから。


ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法

 それを読んで、自分は次のようなコメントを書いた。

むしろ非コミュは黙って働いた方がダルく無いのかも>「人間関係のさまざまなめんどくささをカネで解決できない生活は、けっこう大変そう」
mame-tanuki
2012/08/08

 そのコメントに対して、kanose村長からこんな反応があった。

id:mame-tanuki 赤木智弘氏が論座最終号で素人の乱みたいに人間関係で解決する方法はコミュ能力による格差が発生しやすい、金での解決は平等だと言っていたのを思い出す
kanose
2012/08/08

論座 2008年 10月号 [雑誌]

論座 2008年 10月号 [雑誌]

 なるほど、コミュニケーション能力の格差社会。その時ふと頭に浮かんだのは、先日やっと読み終わった村上春樹『1Q84』の牛河だった。

■諸君らの愛した牛河は死んだ! なぜだ!?

 牛河については、ちょうどfujiponさんも論じている。

僕にとっていちばん「なんだかなあ……」と思ったのは、「牛河」の最期でした。

彼は確かに善人ではないだろうけど、ああいう人生を送り、ああいう死にかたをさせられるほどの「悪人」だったのだろうか?と考えずにはいられません。

 ---(中略)----

「間違っている」のは、月が2つあることではなく、愛する人がいないこと。

ただ、「愛こそがすべて」って言いきれるほど僕は若くもないし、物事をシンプルに割り切れない。

正直、この『1Q84』という作品は、僕にとっては、「牛河、もうちょっとどうにかならなかったのか……」というのが最も印象に残りました。


1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉後編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉後編 (新潮文庫)

 実は、自分も一番心を動かされた登場人物が牛河だった。青豆、天吾、牛河の中で誰に一番共感できるかと言えば、やはり恥ずかしながら牛河だ。

 ただ、あの牛河の最期に不満のようなものは感じなかった。感じたのは、仕方無いよね、という諦めのような気持ちだった。牛河は、青豆・天吾との鬼ごっこに負けるべくして負けた。そして、悲劇的に死ぬべくして死んだな、と。

■牛河と、青豆・天吾。どうして差がついたのか

 自分は、村上春樹『1Q84』を個人主義の時代の物語として読んだ。血縁、地縁、職場の人間関係、あらゆるシガラミから個人が解放され、個々人が自由に人間関係を築くことを志向する時代の光と影の物語だと思った。そして青豆と天吾はそういう個人主義時代の勝者の象徴であり、牛河は個人主義時代の敗者の象徴なのだと。

 青豆・天吾と、牛河、その鬼ごっこの勝敗、その運命の明暗を分けたのは、コミュニケーション能力の格差と言えるのではないか。

 青豆と天吾は、たしかに比較的に交友関係が乏しい部類の人間かもしれない。しかし、周りには常に、たとえ少数でも頼れる人たちが居た。そういう人々の助言や助力を得て、青豆と天吾はより正しい道を選び、より有利な状況を作り、1Q84の世界をサバイバルし、脱出することができた。

 一方で、牛河は全くの孤独だった。「これが振り出しに戻るということなのか?」と独白したように、人間関係はリセットされていた。牛河に助言や助力を与える者は誰も居ず、なにより牛河も誰にも助言や助力を求めなかった。

 周囲からの手厚いサポートを受けていた青豆・天吾と、孤軍奮闘の牛河。勝敗の行方は明らかだった。

■牛河と、大塚環、中野あゆみ

 思えば、牛河に限らず、青豆の女友達であった大塚環も中野あゆみもそうだった。肝心な時に、周囲の信頼できる誰かを頼らず、独りを選択してしまった者が悲劇的な結末を迎える。『1Q84』は、そういう物語だった。

 村上春樹『1Q84』が描いたのは、昔と比べ、煩わしいシガラミから解放された代償にセイフティーネットが無くなり、簡単に「振り出しに戻ってしまう」現代社会の過酷なサバイバル、コミュニケーション能力の格差が分かつ明と暗であり、牛河という非コミュの哀しき末路だった、と思う。

 さて、この牛河論については、また改めて詳しく書き直したい気もする。


【関連】牛河を熱く語るヤツは…

 そう言えば、finalvent氏がこんな事を書いていた。

余談だが、ネットの世界は牛河の家族のように愚劣な人々と、牛河の魂を持ち合わせてしまった不幸な人と、牛河の物語を愛するキチガイの三者がほどよく目立つ。


…なんだか、分る気がするw


【関連するアニメ】牛河「しびれるだろう?」

輪るピングドラム 8(期間限定版) [Blu-ray]

輪るピングドラム 8(期間限定版) [Blu-ray]


【関連するMy記事】

はてなユーザーのみコメントできます。はてなへログインもしくは新規登録をおこなってください。

Connection: close