”居ながらにして全宇宙を回遊する意識、あそびの快楽を知る者たちは、「もうひとつの人類史」をひそやかに形成する。”
池田晶子 最後からひとりめの読者による「埴谷雄高」論 P.81
生きて、うごめき、働き、果てる。
そんな人生ではあるが、こうして様々な先人の文章、”考えたよすが”を元にして、精神による世界、を彷徨うことはなんとも愉しいものだ。
いや、卑近な例ではあるが、この僕の珍生、いや人生において一昨日、昨日と16時間労働(含む昼休み)が続いた。いささかくたびれて電車に乗って、高峰秀子「巴里ひとりある記」をぱらぱらと紐解けば、あーら不思議、”1951年の巴里にデコチャンと一緒に遊ぶ”のキブンになるではありませんか。
この喚起力。いや、精神の瞬間移動力とでもいおうか、27歳の高峰秀子さんのわかわかしい、しかしいささか時代の差も感じる文章を見ていると、数分の電車ですっかりと気分転換、とあいなったのである。
”太宰 治・・・・・・・死んじゃったね。無理に生きていろなんていいたくないけれど、死んじゃったね。”
高峰秀子 巴里ひとりある記 P.79
太宰と同時代にあり、同じ空気を吸ったひとの感想。知り合いでもあったろうか。遠く巴里、”ヒコーキ”での巴里行きはなんども乗換え、機中での出会いの特別感もすごいのだ。
そうしてたどり着いた巴里での感想。なんとも遠くに来たものだ、という詠嘆がそのつぶやきににじみ出るではないか。
そして時代はそこから約20年後。今度はパリにてフランス人映画監督と結婚して8歳の子を育てていた女優岸惠子の文庫本も購入した。
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岸は昭和7年(1932年)の生まれだから、1970年で38歳。パリには旅行者ではなく、住民としているわけであり、いささか感想も地に足が着いている。現在も小説が話題になっているようであるが、80歳を越えていまだ話題になる、というのも考えたらすごいことではある。
この女優、首筋あたりになんとも独特のオーラを感じる。まさに”気取った”という言葉が浮かぶ”帽子をかぶってポーズ”の写真からも、存在感は十分で、それでいて多分同性からはあまり好かれないような感じもする。
ボケボケかつ向きが色々で申し訳ないが、1962年、29-30歳の頃の岸さん。前回ご紹介した高峰秀子”二十四の瞳”と同じような歳のころの写真である。
古くは森茉莉も新婚でパリに住んでいた。”海外”がおとぎの国、と同じ意味を持っていたころの、記憶に遊んでいる。
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考える人、小林秀雄特集。長谷川泰子を巡る考察の記載あり、いささか”出歯亀”ではないかと反省しつつも、興味深く読んだ。
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