雨宮まみの「弟よ!」

2008-07-17 『ラブコト』

★エロ業界では「エロさが足りん!」と不評ながらも面白がってみんな買っていた『エロコト』からずいぶん経ちましたが、出るらしいですよついに『ラブコト』が!

http://www.cinra.net/news/2008/07/11/144920.php

 8月8日発売、ラインナップは坂本龍一、蝶々、金原ひとみリリー・フランキー川上未映子ってどんだけ私の好きな人出てくんだ! 坂本龍一×蝶々×よしもとばなな鼎談があるのですが、蝶々とよしもとばななが友達なことは知っていたので、どんな会話をしているのか楽しみです。


 実は私は小悪魔蝶々さんのファンであり、まぁ一年前ぐらいまではここを読んでるみなさんのだいたい8割方ぐらいの人たちと同じように「小悪魔ぁ? 蝶々? ハァ? ……自分には一生関係ない本だな」ぐらいに思っていたんですが、大好きな森瑶子安井かずみのいた位置で今何かメッセージを発信している本とは何か? と考えたときに出てきたのが安野モヨコ美人画報』(でも、これはまだかなり照れもあるし、ポジションが安定しない感じがあるよね。だからこそ劣等感強い自分にはすごく身近で読みやすかったんだけど……)と、ドーンと女子本コーナーに平積みされている蝶々本なのでした。


 しかし、おそるおそる手にとってみると、すごいまっとうなことが書いてあるのね。最初に買った『小悪魔蝶々 恋するカラダのつくり方』の冒頭で、蝶々さんは自分のカラダのサイズと体重、胸のカップ数まできちんと書いたうえで「自分で、自分のカラダはけっこう気に入っている。もちろん、私は肉体に商品価値のあるモデルさんでもグラビアアイドルでもない。完璧BODYにはほど遠い、スキありまくりのカラダである(※雨宮注・でもじゅうぶんほそいと思うよ……俺がダイエット中だからよけいにそう思うんだけどさ……)。素っ裸をさらして大喜びしてくれるのは、これまでもこれからも、きっとその時の恋愛相手だけだろう。でも、それで十分じゃない?」

(文章は雨宮による要約です)

 こ、これだー! と思ったよ。私は、エロ本の仕事をしてるからわかる部分があるんだけど、本人が「太くてイヤ!」と言ってる二の腕に男がソソられていたりすることはよくある。ふとももや脚も、美脚好きとかモデル好きの男性もいるものの、ムチッと来てる部分にグッと来る人も多い。ましてやお尻や胸が大きくて悩むなんて、本人の気持ちはそうかもしれないけど、恋愛やセックスの場面での相手の気持ちは全然違ってたりする場合も多々あるわけで。


 さらに蝶々さんはこう続ける。「男ゴコロを上っつらしか理解しようとしない女ほど、カンジンの男の気持ちは無視して、女性誌やTVのモデルさんやタレントさんを真剣に目標&暴走しちゃう。その結果、お肌ガサガサになったり、果ては大事なカラダをこわしちゃったり……。バカバカシイ。第一、男の子って、好きな女のカラダにそんな過剰な要求しないよ。むしろどんなカラダだろうが『自分の持ち味を活かしつつ、女らしく装ったり演出してる』女気概やそこから生まれるフェロモンにぐっとひきよせられるんだから」と。観賞用のカラダにする必要はないし、リアルに男ウケするカラダを目指せばいいんじゃない? と言ってくれるわけだ。


 蝶々さんの本は他にもたくさん出ていて、私はほぼ読破しているけれど、そこに書いてあるのはすべて「楽しく生きるためのヒント」だと言っていいと思う。「死なない知恵」と言ってもいい。文体だけで「ムリ!」と拒否感感じる人もいるだろうが、モテ本といっても蝶々さんのモテ本は「こうして男をダマせばいい」といったものとは違う。いかに自分が自分自身を楽しみ、愛し、その魅力を発揮するかという、肝心の部分が書いてある。


 「ケッ、そんなこと言ったって生まれつきの美人にこの苦しみがわかるかよ!」と言いたくなる気持ちはわかるが、蝶々さんはものすごい美人というわけではない(失礼)。雰囲気美人で、演出美人なのだ。はっきり言ってこれなら、種類は違えど自分もそれなりに魅力的な生き物になれるのではないか? と思えないだろうか。とにかく、拒否したらそこで道は閉じておしまいである。


 この人の書いていることは、必ずしもモテや恋愛のことじゃなく、鬱病だらけの世の中をサヴァイブする知恵、みたいなことなんじゃないかと思う。まぁ、その、繰り返しますがふざけた感じの文体だけで「ダメ! 読めない!」って人も多いでしょうが、自分がオチたときにこうして復活したな〜、と頷ける部分もかなりある。深い鬱の人には「何言ってんだ」って感じのことかもしれないけど、「ばかばかしい。こんなことで気分が変わって救われるんだったら最初から鬱になんかなんねーよ!」と思ったら、やっぱりそこで道は閉じてしまう。変わらないかもしれないし、何の救いにもならないかもしれないけど、いつだって「救い」っていうのは決定的な大きいものじゃなくて、びっくりするほどささいな小さいことなんだから、たかがそれだけのことで状況が「変わる」かもしれないと私は思う。


 恋愛ものの本も、女の複数恋愛(相手が一人ではない、いわゆる二股とか、浮気とか呼ばれる関係)をこんだけ正直に書いてイヤミや自慢げな空気がまったくなく、共感できるというのはすごいと正直思います。そうだよね、あるよね、気になる人が一人だけじゃない時ってさ! でも言ったら男に嫌われるから怖くて言えなかったけど、蝶々さんは言うわけだ。はー、さっぱりしてる。と、最初は「小悪魔ぁ?」とからかい半分の気持ちで読んでいたのにだんだん夢中になっていった俺なのでした。数あるモテ本の中でも、ものすごい良質な本だと思うし、モテ以外の本も面白い。「息苦しい世の中で、心地よく快適に生きていくためにはどうするか」というメッセージを、この人は常に発信しているんじゃないかと思うし、私はその部分は、けっこう真剣に読めてしまうんですね。こ、小悪魔目指してるとかじゃないよ! べつにモテたいとかじゃないからね! いや、暗記するほどアドバイス読んでますけど……。効果のほどはその……。

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