『腰痛探検家』『観光』

高野秀行『腰痛探検家』読了(6日)。

腰痛探検家 (集英社文庫)

腰痛探検家 (集英社文庫)

この人、腰痛だったのか。そういえば『怪魚ウモッカ格闘記』で、とある事情からインドの空港で足止めを喰らい空港で寝泊りしなくちゃいけなかったとき、そうせざるを得なくて胎児の姿勢で寝ていたら腰痛がウソのようによくなった、と書いていたなあ。

なにはともあれ、確かにこれは「探検」だ。ムベンベ、ウモッカ、ジャナワール(他に何かあったっけ。しかしこの3つのUMAの名前がソラで出てくるようになってしまった…)探しと同じように「非腰痛世界」への道をひたすら探る。何が違うのかといえば、UMA探しより妙な「熱」がある点。UMA探しでも確かに「熱く」はあるけれど、ごく冷静に計画を練り様々な目撃情報も鵜呑みにはしないという姿勢に貫かれているのに。

しかし「非腰痛世界」への探索行では、人の噂を鵜呑みにして、何度も治療院を変え……って高野秀行らしからぬ行動を取り続ける、果たして大丈夫なんだろうかこの人は、とちょっと不安に思いながらプププと笑いながらの楽しい読書だった。

作中で、何度も腰痛を恋愛に譬えていたけれど、確かにあの妙な「熱」は恋みたいだ。端から見ると滑稽な部分も含めて。あと、装丁がすごく好き。なんだこの情けない顔は。

■ラッタウット・ラープチャルーンサップ『観光』読了(8日)。

観光 (ハヤカワepi文庫)

観光 (ハヤカワepi文庫)

いい短編集。どの作品もタイを舞台にある「分岐点」が丁寧に描かれていて、苦い話が大半だけれど読後感は悪くなく、描かれる情景もきらきらとしているけどかなしい気もして……、なんだか気味の悪いベタ褒めモードだけど、本当にいい短編集だってこと。

「タイの国は能無しとガイジン、犯罪者と観光客の天国よ」

ある作中人物が口にするこの言葉は、この短編集を貫く、底の方に漂うあきらめの気持ちとかやるせない気持ちが凝縮したひとことだ。

あとはこれも装丁がすごく好き。海をピンク色のかわいい顔をした豚が泳いでいる。最初はなんのこっちゃと思っていたら最初の「ガイジン」を読んで納得。

■今日から、待ちに待った伊藤計劃『ハーモニー』(文庫版)を読み始める。