『逆光』
■トマス・ピンチョン『逆光』読了(27日)。
- 作者: トマスピンチョン,Thomas Pynchon,木原善彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/09/01
- メディア: 単行本
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読み始める前の印象は「ついていくのがしんどそう」だったけど、実際読んでみると、まあ確かに登場人物もたくさん出てきて、いくつかの物語が同時に進行し、しかもどんどん脱線していき(そもそも本筋はあるのかとも思う)……と難物ではあるけど「ついていくのが楽しい」だった。
登場人物と起こったことをひたすらメモし、視点になる人物が変わったところで付箋を貼り、気になるところや好きなところにも付箋を貼り、ってやっていたらこんなこと↓に。
ひでえ。
本当は今この状態で読み返したらもっと楽しいんだろう。時間も半分くらい(それでも2週間ですよ、あなた)で済むんじゃないか?
「ママは家を出てサーカスに入りたいって思ってたわけ?」
「そうよ。でもあたしが子供たちに囲まれていた場所もまさにサーカス同然だったわ。当時はそれに気づいてなかったけど」そしてそのとき彼女があげた笑い声をいつまでも忘れたくないと彼は思った。上p.730
「帽子を脱いで。顔を見せてくれ」彼女が頭を振ると帽子の下から巻き毛がでてきた。
「女の子か」
「ていうか、若い女。でも別にどっちでもいいわ」下p.38
彼女がいつも見せる、こうしたインテリらしい不器用さ―まるで嫉妬心に対処する仕方を知っているのは小説の中の登場人物だけで、実際に自分が嫉妬にあったときにはどうしていいか分からないでいるかのようなそのぎこちなさ―が彼は昔から好きだった。下p.694
こう見るといい話でうつくしい小説な気がするな。
他にも気に入ったところはたくさん。目に見えない帽子と目に見えない日傘なんかとくに。いいなあ、と思う。
次に読むのは『競売ナンバー49の叫び』の新訳か。とにかく『インヒアレント・ヴァイス』が待ち遠しい!
■今読んでいるのはエリック・マコーマック『ミステリウム』。とんでもなくおもしろい小説の予感。そして『逆光』効果でものすごく薄く軽く感じる(300ページちょっとなので長い話ではないんだが)。片手で持てるもの。大リーグ養成ギプスだったんだな、『逆光』は。