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武蔵野日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-10-30

エンジニアを幸福にしないヤフーというシステム

エンジニアを幸福にしないヤフーというシステムを含むブックマーク エンジニアを幸福にしないヤフーというシステムのブックマークコメント

@nokunoさんのYahoo! JAPANを退職しましたという記事を読む。いまはタイトルに「翻訳」と書いてあるので紛らわしくないが、最初は「すわ id:nokuno さんがとうとう辞めたか?!」と釣られたものである (笑)

内容を読んでみると「まあ、そうだろう」という感じで、そんなに目新しいことが書いてあるわけではない (が、Yahoo! JAPAN の労働環境について知らない人が読むと「え、Yahoo! ってそんなところだったの??」とびっくりするかも)。著者も断っているが、これはアメリカの Yahoo! のことではなく、日本の Yahoo! JAPAN のことであり、Yahoo! JAPAN は外資系の会社ではなくコテコテの日本企業である (それが悪いと思うかよいと思うかは人次第)。

(2010-10-31 追記) Yahoo! JAPAN の環境がそんなによくないのは My News Japan の「ヤフー 株主と社長がぜんぶ持ってく「独立した個人労働者」集団」(2010)や「ヤフー(2005)」の記事でも分かると思う。いまでも「対価」の評価こそ低いが、「生活」の評価は5点満点中4.7点であり、まったり働く分にはそんなに悪くないと思うのだが……

泣けるのは

福利厚生にはお金がかかるかもしれません、しかしそれによって優秀な人材を会社に引き留めることができるとしたら、より多くのお金を節約できるでしょう。私たちが低い待遇に甘じることによって、Yahoo! JPはどれだけのお金を節約できたというのでしょうか?

というところだが、まあこれもよく言われることである。

繰り返しになるが、去年就職活動を始めるまで Yahoo! JAPAN の研究所は自分の就職希望度のトップ3に入っており、インターンシップ的に3ヶ月住み込みで六本木のミッドタウンオフィスに通って仕事をした経験からも、そこまで自分は Yahoo! JAPAN には悪い印象を持っていない。

「Yahoo! は賃金が安い」とは言われるが、いま NAIST でもらっているお給料を考えると、Yahoo! のほうが金額的にはもらっていると思う。家賃補助がないので家賃込みだと言われると差は縮まるが、それを考慮に入れても。(ちなみに NAIST は国立大学であり、国立だとどの大学でも地域手当以外ほとんどお給料に差はない。奈良は都会扱いしてくれるので、お給料的には東京にいるのと同じくらいもらっているはず)

これで思い出したのは「人間を幸福にしない日本というシステム」

という本。同書も問題にするのは日本という国、そして大企業などの官僚的性質であるが、Yahoo! JAPAN が陥っているような官僚主義・日本的大企業主義というのに問題があるのはみんな分かっていることで、それの原因が国・企業にあるとは著者は言わず、変わるのは個人のほうだ、と説く。

 市場経済のなかにある企業の場合は、外圧によって、変わらざるをえなくなるか、それとも消滅してしまうか、どちらかに落ち着く。しかし外圧が充分でない場合は、何十年も堕落したまま漂流することだってありうる。堕落していることは組織内の人々もとっくに気づいている。しかし状況をくつがえすなにごとも起こらない。こういう状況を、とくに「有害な惰性 (injurious inertia)」と呼ぶとしよう。

 有害な惰性の原因は何か。自壊に至るまで堕落しづづけていった組織を観察したことがある私に言わせれば、原因は二つある。一つは根本的な無関心。もう一つは、根本的な無能力。(p.231)

このあと、「無能力」というのは個人が優秀であるかどうかという話ではなく、個人としては優秀でも特定の仕事ができるわけではない、という話が続く。たとえば、研究ができても料理ができない人はいるし、サッカーのプロでも楽器が弾ける訳ではない、というように。そして、日本の問題は、問題を解決する能力がない官僚に国を牛耳らせているせいだ、という話につながる。

たぶん Yahoo! JAPAN が陥っている問題も同じで、自分は Yahoo! JAPAN のエンジニアや研究者と接してみて、実際に個々人の能力がないわけではないし、逆に優秀な人たちもたくさんいることを知っている。新卒の人数をたくさん取るし、力を適切に合わせればすごいことができるだろうとも思う。単になんらかの問題でうまく人が管理されていなくて、変なことになっているのだと思っている。この状態に一番責任があるのはトップをはじめとする上層部だろうし、それを人は「官僚主義」「大企業病」と呼ぶのかもしれないが、自分が思うにたぶんそういうことではなく、中の人が (そしてそれは割合日本人に共通することだが)「これは自分のせいじゃないからシカタガナイ」と思ってしまうためで、現状を変えようと思わず中でだらだらと過ごすか、あるいはこの退職した人のように外に出て行くか、の二者択一になってしまうからかなぁと (まあ、いずれの気持ちもよく分かるけど)。

もっとも、こういう「文化」は Yahoo! JAPAN 特有のことではなく、Yahooに起きてしまったことでも書かれているが、アメリカの Yahoo! も官僚主義であることはよく知られている。びっくりしたのは Facebook の話で、

「ハッカー中心の文化を大事にしよう」といった話のうち、私が聞いた中でおそらく最も印象的だったのは、マーク・ザッカーバーグ(訳注:Facebook開発者)が2007年に起業スクールで言ったことだった。彼は「Facebookは早い時点から、人事やマーケティングのような、プログラミングが主な仕事ではない職種についても、プログラマーを採用すると決めました」と言ったのだ。

任天堂は営業の人でもプログラミングの研修がある(もしくは採用試験にプログラミングがあった?)と読んだことがあるが、ソフトウェアがメインの企業だったらプログラミング分かる人が中心にいないと、どうやっても全体が官僚主義的になっていってしまうのだとは思う。こればかりはどうしようもないし、MBAホルダーが社内に増えたらその会社は(エンジニア的には)敬遠した方がいい、という話も聞いたことがあるが、理解できない人に理解してほしいと、なんとかしようと思うより、出て行くほうが賢明かもしれない。

閑話休題。先ほどの本、最後はこう結ばれている。

 先日、私が教育問題について講演したあと、ある著名な日本の教育学者が私のところにやって来て、私の批判の主な対象について彼は思いちがいをしてきたと話してくれた。彼は、私の批判的分析の対象は日本の官僚制だと思ってきたが、しかし今では、彼が言うに、私の批判の大部分は、暗に、市民として振る舞うことを自己の義務だと認めたがらない普通の人々に向けられているのだとわかった、というのだ。

 私はそんなふうに考えたことはなかったが、彼の言うとおりだ。最後の最後には、ものごとを変えられるのは、あなたしかいない。(pp.347-348)

ペペペペ 2010/11/03 12:39 なるほど勉強になりました。もうヤフーに未来はないですね。

mamorukmamoruk 2010/11/03 20:16 ぺぺさん
いえ、そういうことはないです。Yahoo! JAPAN は Google なんかと違って広告収入に依存しておらず、オークションなどの有料会員からの収入もありますし、経営は安定していると思います。身の回りに Google を使っている人ばかりだと気がつかないかもしれませんが、日本の普通の人は Yahoo! を使っている人のほうが多いです。(これからは Yahoo! の裏の検索も Google になるので、使い勝手はともかく「検索精度がいいから Google を使う」というのもなくなるでしょう)

このエントリで言いたいのは、Yahoo! JAPAN の方針は、エンジニアの処遇という観点からはあまり誉められたことはしていないな、ということと、あとエンジニアの待遇があまりよくないのは事実としても、エンジニアの側からやれることはもっとあるんじゃないか、不平不満を言って経営者の側に責任転嫁するだけでいいのだろうか、ということです。エンジニアは交換可能なので(ウェブエンジニアとしては)できるだけ安い賃金で使いたい、という経営的判断であり、それでも来てくれる人がいるうちは回っていくんでしょう。末端としては、交換不可能な仕事ができるよう自衛するしかないのかもしれませんが……

kk 2010/11/09 23:27 交換不可能な仕事をやってても正しく評価できる人事制度がないので、転職されてから残ってる人間が困るような事態が多発しています。残念ながらエンジニア側から出来ることは早く見切りをつけて転職することだけです。
給与も将来の昇級速度・年金・退職金等を勘案すると、NAISTの方が良いのではないですか?コテコテの日本企業ですが、退職金は出ませんし、年金は401kで近年大赤字をたたき出している人が多いです。福利厚生もほとんどありません。(昔はディズニーとかあったんですけどね)
古くから居る人は給与階級数が少なかったときにかなり上まで昇給しているので、かなりの給与を貰っています。今は給与階級数が大幅に増えたので、同じ仕事をしていても古くから居る人の給与に追いつくことはありません。1/4ルールというのがあり、チーム内で1Qに昇級できるのはメンバーのうち1/4までに制限されているため、1年に1グレード(年収で40k〜50k)しか上がらない人がほとんどです。転職できるだけのスキルがない古い人ばかりが残り、スキルのある人・若い人は早々に見切りをつけて出ていってしまいます。その代わりに補充されるのが簡単な研修しか受けさせてもらっていない新卒なので、OJTにかなりの工数がとられます。
もう新しいサービスを打ち出せるだけの力はないので、このまま縮小均衡がいいところでは。

mamorukmamoruk 2010/11/10 02:35 おお、詳細なコメントどうもありがとうございます。
残念ながら、確かにお書きになっている内容には同意せざるを得ませんね……。

ただ、NAISTの助教は任期5年、再任あり(確か最大2年)ですが、昇進の保証はありません
(助教2人に准教授は1人しかないので、少なくとも2人に1人は昇進できません)し、
差が出るとすると年金・退職金だとは思いますが、これもずっと国立大学で教員ができないと
文科省の共済から外れてしまう(私大あるいは公立大だと抜けることになります)ので、
どっこいそっこいかなと思います。

古い人がお金をたくさんもらう問題はありますよねえ。
やっぱりストックオプションで渡しておいたほうがそういう不公平感は低いのかなぁと思います。
ストックオプションで渡しにくいのは日本の税制の問題なので、改善してくれたらなと思いますが……

自分も割と真剣に Yahoo! JAPAN にも就職を考えたので NAIST も含めて3カ所ほど比較検討し、
東京で働けるというのは、妻がいま博士後期課程の学生で東京にいるので単身赴任状態の自分としては、
かなり強力なプラスポイントだったのですが、条件が折り合わず、結局 NAIST に残ることにしました。
3者どれも行きたい理由があり、自分としては Yahoo! JAPAN も魅力的な候補だったのですが、
最終的には妻と相当(毎日)話し合ってこういう結論に至りましたねえ。

結局現在の選択がいちばんよかったと思いますが、他の選択肢だったらどうだったろう、
と考えることもときどきあります。
入っていたら縮小均衡にならないようにがんばっていただろうと思うのですが、
いまとなっては中の人になれるわけでもないし、外から暖かく見守っています。