戦うウェブエンジニアの三種の神器

午前中ミーティングの予定を入れていたが、今日は [twitter:@mizuno_takaaki] さんに 学内の招待講演をお願いしていて、[twitter:@tettyun] くんとご飯を食べるため高の原まで迎えにいくことを忘れていたので、急遽ミーティングを夕方に延期。すまんかった。

ランチは@mizuno_takaakiさんに新卒採用担当の Kさん を交えて DeNA のお話とか、@tettsyun くんを交えてバイドゥのお話とか、いろいろお伺いする。DeNA は新卒今年40人ほど採用なようだが、30人弱がエンジニアで、新卒研修直後に海外 (サンフランシスコ、Twitter オフィス側) 勤務する人もいたり (海外のゲーム会社を買収したりしたので)、海外で働きたい人にとってはチャンスが豊富な職場だということ。最初から海外で働くこと狙いで入社するのも歓迎 (保証はできないが海外で働きたいという人を「新卒だから無理」と言うようなことは全くないし、むしろ問題なのは仕事の内容的に海外に行ってほしいのに腰が重くて行ってくれない人) とのことで、そういうパスを考えている人は受けてみてもいいのかなと思った。

同じく SNS やっている Mixi と比べると、社員数はたったの2倍なのに営業利益は50倍 (2011年4-6月期の営業利益は Mixi が3億円に対し DeNA は158億円、ちなみに GREE は98億円) なので、なんでこんなに違うのか不思議。DeNAGREE に行く人が多いわけだなと思う。「米国の新卒エンジニアの給与は8万ドル!」の件についてとか結局お金目当てでシリコンバレー行ってもあまりお得感ないという結論に達したとか見ても、

アメリカは必要な他のコストが高いから、8万ドルって日本の給料だと600万円ぐらいだし、だったらGo社とか、そのあと結果出してGr社とかD社あと行っても同じくらいじゃないの?

@gamellaさん「@yamaz あと、日本から行くと子どもの教育問題があるという話もちらほら。腕のたつ独身エンジニアが行くような話しばかりではないですからねー」
@yamazさん「@gamella 守るモノができちゃった人はもうしょうがないですねぇ。」
@yamazさん「日本でも がんばってGo社に行く(600)結果を出して2年ほどでGr社に行く(750)さらに1年後にD社に行く(900)で20台で900万台になるよ!(妄想)」

とか (引用に当たってフォーマットを改変、詳しくは上記リンクを参照されたし)、

ご存知の通り日本のGoogleの新卒は600万円程度、日本のメーカーだと5-7年務めてボーナス入れて600万円程度。これって、だいたいドル換算したら7万5千ドルくらいですよね。ここにアメリカ個有の税金、保険、住居費入れると実はトントン、もしかしたらお金目当てでアメリカ行くのって全然ペイしないのでは。
もちろん、

  • 最先端の技術に集中できる環境
  • 福利厚生が良いところはやたら良い。
  • リアルに世界を変える実感が持てる場所で働ける

などなど、日本ではなかなか感じることができないプライスレスな価値はあると思うのですが、すくなくともお金目当てで行く所ではないというのが結論かと。こうなってくると、やはり世界進出を狙うGr社とかD社とかに入ってシリコンバレー行って、円建てで給料もらうというのがすごく魅力的な選択肢に見えてきました。実際にそうやっている人いっぱいいるしね!

とかいう話もあるし、ウェブ業界はいろいろと動きが速いなぁと遠巻きに見ているのであった。

@mizuno_takaaki さんのトークは100部用意した資料があっという間 (5分ほど) になくなってびっくり、立ち見こそいなかったものの (5-6月に招待講演をお願いすると立ち見が出る)、大講義室がほとんど埋まるくらいの大盛況。@mizuno_takaaki さんは、調べてみたら恐らく2006年6月にお会いしたのが2回目だと思うのだが (2005年3月NAIST に来る直前が1回目)、いずれにせよそのころから「今後形態素解析とか使いたいと思っているし、いつか奈良に行きたいです」とおっしゃっていたのがようやく実現したことになる。こういう機会があってよかった (笑) NAIST では半年に1人外部の人を呼んで講演をお願いできるので (旅費や謝金の上限やスケジューリングの都合もあるので、他にも呼びたい方がたくさんいらしたら選抜になるが)、これ幸いと毎回どなたかをお呼びしているのであった (笑)

講演のまとめは[twitter:@ats_m] さんがまとめてくださった 職業としてのウェブエンジニア DeNA 水野貴明 というページを見てくださるとよいかと思う。いちばん反響が大きかったのはこの発言 (10月29日時点で30人の方が「いいね」してくださっているし、78人の方が RT してくださっている) ↓

確かに松本研に来る学生の人たちを見ていて、「Android アプリを作りたい」「ウェブアプリを勉強したい」とかいう声をときどき聞くのだが、それほとんど他の人と差別化できないし、そういうのってなにか作りたいものもないのに勉強するものでなくて、外に出したいツールなりアプリケーションなりができたとき初めて「勉強」するものなんじゃないかなぁ。せっかく松本研にいて、普通の人が Web API とかを叩いてサーバの裏側をブラックボックスとして Android アプリなりウェブアプリなりを作るのに対し、松本研の人はブラックボックスの中をこそ作ったほうがいいんじゃないかな。

たとえば普通のエンジニアなら形態素解析器の MeCab なり ChaSen なり KyTea なりをツールとして使う、あるいは Yahoo!形態素解析 API をウェブから叩くのに対し、松本研にいるなら自分で形態素解析器を作ったほうが勉強になると思うし、それができる人は Android アプリだとかウェブアプリだとかは、必要になれば (少なくとも趣味レベルで公開するくらいのものなら) すぐ作れると思うので……。ちなみに形態素解析器を作ろうと思うと、上記の計算量やデータ構造やアルゴリズムの話は全部ばっちり必要になるので、基礎が身に付いている人はすぐ作れるのだが、基礎が身に付いていないと付け焼き刃では作れない。

もし Android アプリとかウェブアプリを作りたいなら、後ろで動くツールを研究として1つ作り、それを他の人に見せるデモシステムとしてとりあえず1つ作ってみる、というのは経験するといい。最近の松本研の例で言うと [twitter:@seijik42] くんが日本語の格助詞誤り判定を研究していて、それを見せるための Chantokun というシステムを作ったり、[twitter:@shirayu] くんが日本語の述語高構造解析器を研究していて、それを見せるための YuCha というデモを作ったりとか、そういう形で作るのはすばらしいと思う。

ともあれ、お題通り「職業としてのウェブエンジニア」というのが伝わるよい講演であった。ありがとうございました!

タイトルは

闘うプログラマー[新装版]

闘うプログラマー[新装版]

からいただいたが、こちらは Windows NT の開発についての悪戦苦闘、開発についてのいろいろな問題を書いた骨太のドキュメントなので、エンジニア志望の (死亡の、が第一候補に出てきて縁起が悪い) 方は合わせてどうぞ。

ちょっと駅までのアクセスが悪いので、DeNA からお越しのお2人を駅までお送りして研究会に参加し、その後 (午前中の予定を振り替えてもらった) 学内実習のミーティング。実際取れてきた事例を見せてもらうととてもおもしろい。日本語学習者の作文を見ているのだが、文字ベースの処理だと中国語を母語とする人に関して母語の影響がありありと見えたりとか。中国語にこういう漢字があるから日本語でもそういう表現をするだろう、というような誤り事例 (日と号の混同とか) がけっこう目につく。ただ、やっぱり入力 (学習者の書いた作文) 側を形態素解析したいよなぁ……。