マーケティング3.0/F・コトラー他

現代のマーケティングは、製品中心の1.0、顧客中心の2.0から3.0に変貌した。
3.0では、顧客中心から前進し、価値が主導するマーケティングが主流になっていく。
マーケティング3.0では、ひとびとは単なる消費者ではなく、マインド・ハート・精神をもつ全人的存在となる。
混乱に満ちた現在において、企業は消費者のさまざまな欲求に、ミッションやビジョンや価値で対応しなければならない。

マーケティング3.0の基本要素

協働マーケティング

似通った価値観や欲求を持つ、企業や株主、取引先、社員、消費者が協働し、新しい価値の生産しや消費を行う。今まで、製品開発には消費者が参画することはなかった。

文化マーケティング

企業や製品、サービスがその活動において文化的な意義や意味を持たせ、消費者と価値観を共有する。

スピリチュアル・マーケティング

マズローの欲求5段階説では、最も高位の欲求に自己実現がある。人間は、なりたい自分に変身することで自己を確立していく。
企業も同様に、自社はどのような会社で、なぜ事業を行っているのか、また、どのような企業を目指しているかを把握しておかねばならない。

従来のマーケティングと何が違うか

マーケティングの構成要素 今日のマーケティングコンセプト 未来のマーケティングコンセプト
製品管理 4P(製品、価格、流通、プロモーション) 共創
顧客管理 STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング) コミュニティ化
ブランド管理 ブランド構築 キャラクター構築
共創

(1)プラットフォーム(基盤)となるカスタムかできる製品を提供、(2)ネットワーク内の消費者にプラットフォームをカスタム化してもらう、(3)消費者よりフィートバックをもらい消費者のカスタム化を取り込む、これらはオープンソースソフトウェア開発で広く見られる手法である。一般的な製品会開発でも応用可能である。

コミュニティ化

コミュニティは3つの形態に分類できる。(1)プール型−ブランドの強いファン。最も企業が育成すべき消費者である。プール型のコミュニティに集まる消費者は互いに情報交換することは少ない、(2)ウェブ型−典型的なソーシャル・メディア・コミュニティ。メンバー間のリレーションで情報が交換される、(3)ハブ型−ハブ型に集まる消費者は、特定の強い発進力持つ情報発信者の周りに形成される、特定の人を中心としたコミュニティ。企業はこれらの特性を理解して、コミュニティのメンバーに役に立つような活動を行う必要がある。

キャラクターの構築

ブランドと消費者がつながるために、差別化をなすDNAを築く必要がある。DNAはブランドのアイデンティティを反映したものである。ユニークなDNAを持つブランドは、寿命が尽きるまで自らのキャラクターを築き上げていかなければならない。

3iモデル

マーケティング3.0では、マーケティングはブランド・ポジショニング・差別化をバランスの取れた三角形として定義し直した。

    • brand identity-ブランドを消費者のマインドにポジショニングすること
    • brand integrity-ポジショニングと差別化によって主張を実現すること
    • brand image-消費者のエモーションをつかむこと

ミッション・ビジョン・価値

マーケティング3.0において企業の社会貢献は、重要な機能である。コミットメントを維持するには、それを企業のミッションやビジョンや価値に組み込むのがよい。

    • ミッション-企業が何のために存在するか
    • ビジョン-企業の望まし未来を書き出したもの
    • 企業組織としての行動規範

消費者へのミッションのマーケティング

企業は自社や製品のミッションをマーケティングするために、変化というミッションを策定し、それを軸に感動的なストーリーを築き、ミッションの達成に消費者を参加させなければならない。

    • ブランドは消費者のもので、企業はそれをコントロールスことはできない
    • ミッションを広めるためには感動的なストーリーが必要である
    • 小さなアイディアから巨大な影響を生み出すことがリーダーの役目
    • 人々を納得させるには(1)事実や数字に基づいて伝えて知的な議論に引き込む、(2)それらを軸に感動的なストーリーをつくる。感動的なストーリーの方が効果的
    • 感動的なストーリーは、(1)弱い主人公が巨大な敵を倒すチャレンジ型、(2)日常生活にある不条理を解決するコネクション型、(3)新しいアイディアを次々に実現するクリエイティブ型
    • 消費者エンパワーメント。消費者がブラントやブランドストーリーについて論評し、批評する。この行為を否定せず、彼らによい影響をを与えるよう環境を築く

社員への価値のマーケティング

社員は会社の最も直接的な消費者である。企業は社員に対しても消費者に対するのと同様にストーリーを語る必要がある。
企業は、社員の共有価値と行動を一致させなければならない。社員に価値をマーケティングさせることは、消費者にミッションをマーケティングすることと同様に重要である。

企業の価値
    • 参加承認価値-社員が入社時に備えるべき基本的な行動基準
    • 願望的価値-現在は欠けているが経営陣が根付かせたいと思っているもの
    • 偶発的価値-社員の共通のパーソナリティ特性の結果で得られるもの
    • 中核的価値-コア・バリュー。これこそが社員の行動を導く真の企業文化
価値が何をもたらすか

優れたコア・バリューは企業にメリットをもたらす。

    • 人材を引き寄せ、引き止める-よいコア・バリューを持つ会社は人材に恵まれる
    • 社内の生産性と消費者に与える影響-社員の幸福は彼らの生産性に影響を及ぼす
    • 多様性の統合と促進-権限を与えられた社員は会社の利益の全力を傾ける

チャネルパートナーへの価値のマーケティング

チャネルパートナーは自社と似通った目的とアイデンティティを持っていなければならない。企業はチャネルパートナーと統合してブランドストーリーに完全性を持たせる。

株主に対するビジョンのマーケティング

株主を説得するため、経営陣はミッションや価値に加えて、ビジョンを策定しなければならない。企業のビジョンは、持続維持性という概念を有する。その概念が企業の長期的な共創優位性を生み出す。

社会的問題への取り組み

企業は自社のアイデンティティの具現手段として慈善活動へ参加する。この活動を自社のPRの手段とか、負の副産物に対する批判を拡散させる手段として利用してはならない。
企業は、市民として行動し、自社のビジネスモデルの根幹で社会的問題の取り組む必要がある。

自社に社会的文化的変化を生み出すにためには、以下の3段階のステップが必要である。

    1. 社会的文化的課題の特定-取り組みべき課題選ぶ基準は、(1)自社のビジョン・ミッション・価値との関連性、(2)ビジネス上のインパクト、(3)社会的なインパク
    2. ターゲットの構成集団を選ぶ-企業のステークホルダー(消費者、社員、流通業者、販売業者、供給業者、公衆先般)から一番大きな影響力を持つ集団を選ぶ
    3. 変化を生み出す解決策を提供
    4. 変化を生み出す解決策を提供-その集団に対して、解決策を提供する

マーケティング3.0の10原則

    1. 顧客を愛し、競争相手を敬う
    2. 変化を敏感にとらえ、積極的な変化を
    3. 評判を守り、何者であるかを明確に
    4. 製品から最も便益を得られる顧客をねらう
    5. 手頃なパッケージ製品を公正な価格で提供する
    6. 自社製品をいつでも入手できるように
    7. 顧客を獲得し、つなぎ止め、成長させる
    8. 事業はすべてサービス業である
    9. QCDのビジネスプロセス改善
    10. 情報を集め、知恵を絞って最終決定を