2012年01月29日 日曜日 112A ヘッドフォンアンプ
ふと魔がさして112A を買ってしまったのである。一度こういうナスの古典球を使ってみたかったのだが、112A なんて頑張ってもろくに出力も取れないしどうしようと考えて、ヘッドフォンアンプなら出力いらないじゃん!というわけで、112A を出力段に用いたヘッドフォンアンプを作ってみた。家には受験生もいてなかなか大きな音で音楽を聴けないし、Audio-GD の NFB-12 のヘッドフォン出力の音をいまいちだと感じていたこともある。
なにしろ 112A の内部抵抗が高目なので負荷抵抗もそれなりに大きくしなければならない。μも決して大きくはない。バイアスは浅いからドライブは大変ではないが、Ep が低いので前段にも工夫が必要になる。色々考えて、五極管→カソードフォロア→出力段という構成で全段直結にして電源電圧を嵩上げする。ヘッドフォンは AKG K701 が32Ωという低インピーダンスなので、これ専用ということにして、7k:16オームのトランスを使えば実質14k負荷ということになるからちょうどよさそうだ。ヘッドフォンで聴くことを考えるとノイズ対策も慎重に行う必要もある。
ということで完成した回路はこちら。
トランス類は全部春日で、電源トランスはフィラメント用のタップを独立してもたなければならないため特注。OPT は KA-54B57T。小型トランスの中では特性が素直だと評判だから使ってみた。どうせ7mAくらいしか流さないのでOPTにとっては楽な条件だろう。初段は 6BL8 の高信頼管 E80CF、整流管は小さな傍熱管ならなんでもいいんだが手持ちの 84 が ST 管でスタイルがいいので採用。出力段は Ep=150V、Ip=7mAあたりを目安にする。フィラメントはロードロップの三端子レギュレータを使って安定化、前段もDC点火にする。シャーシが小さい割に部品点数が多くなってなかなか大変だった。んで完成形がこんな感じ。
出力はノンクリップで 0.2Wくらい。ノイズはほぼ測定不能で、実際ヘッドフォンを介しても何も聞こえない。ゲインは10dBのNFBをかけた上で23dBくらいで使いやすいところ。50kHzあたりにピークがあるので微分補正として 1300pFのコンデンサを追加した。このコンデンサはもう少し大きくてもいいかもしれない。
音質はさすがに NFB-12 のヘッドフォン出力とは格が違って、バランスが良くて広がりのあるさわやかな音。直熱三極管の面目躍如か。これでヘッドフォンで音楽を聴くのが楽しくなった。
2012年01月03日 火曜日 6528PP
色々考えて 6528 アンプをコンベンショナルな Push-pull で組み直すことにしたことは書いた。それで正月休みに一気に配線した。回路はこちら。
個人的には所謂 Mullard 型の位相反転が好きなのだが、シャーシに新しい穴を開けることが諸般の事情でできないため、6AN8 を使ってPK分割にする。幸い 6528 はバイアスがあまり深くないので計算上は十分に励振できるはず。あまり6528 の Ep を高くするとバイアスが深くなって厳しくなるのでこのへんが妥当なところではないかと。
それから今まで整流管を使っていたソケットが空くので、賑やかしに定電圧放電管を使って初段のスクリーングリッドを安定化する。視覚的にアクセントになるだろう。
そんなわけで完成。
出力は予想より少なめで THD=5% で 16W ほど。失敗したのは初段のゲインが高すぎ、裸利得が 40dB くらいあること。負帰還をかけて 30dB くらいにしたがまだ高い。ノイズが多いとか使いにくいといった弊害が出るほどではないが、電源の簡素化とドリフト防止のために初段と位相反転段の間にデカップリングを行なっていないので電圧の配分が難しく、初段の負荷抵抗が大きすぎたな。もっと gm の低い球を使う手もあるが、この種の複合管の五極部はだいたいそれなりに gm が高いのであまり候補はない。これでいいか。
周波数特性は負帰還をかけたあとで 10Hz 以下から上は 80kHz 位まで伸びている。50kHz くらいに小さな山があるので若干微分補正をかけた(回路図にはない)。これくらいでほぼフラットだから OPT が優秀なのだな。出力管の内部抵抗が低い上に多めに負帰還をかけたお陰で DF は8くらいある。残留ノイズは測定系が外部雑音を拾ってしまうようでうまく測れないが、D123 に耳をつけて若干「さー」」と聞こえる程度で耳につくハムはないのでよしとしよう。
音質的には、抑制の効いた端正系になるかとおもいきや案外元気な音で、情報量が少ないわけではないが塊っぽく前に出てくる感じ。これが利得の大きさが原因か。もうちょっと色々聴いてみよう。
2011年12月28日 水曜日 小ネタ
EL3NPP アンプの整流管を AZ4 から EZ4 に変更した。ヒーターが 6.3V なので、4V の AZ4 とは異なり電圧調整抵抗がいらないし、傍熱なので球にいきなり高電圧がかからないのもいい。初段も出力管も全部傍熱管だからな。
出力電圧は若干高めだが問題にならない程度。しかし6.3V/0.9A という小さなヒーター(6L6 クラスで、EL3N と同じだ)で175mA 出せるんだから効率いいなあ。カソードが独立してるんだが、H-K 耐圧が分からないので、他の球とヒーターを共有するのは怖いからやめておいたほうが無難だ。
見た目も AZ4 よりずっと小さいので出力管とのバランスも良くなった。
2011年12月26日 月曜日 予定
今年は結局震災以降オーディオに向かう気力がわかず、ほとんど何もしない年であった。そこで来年はもうちょっと積極的に取り組もうかと考えている。
まず、6528SRPPアンプだが、やはりマッチングトランスとのアンマッチが気になり、電力を食う割に出力が6Wではあまりに効率が悪い。なのでノーマルなAB級PPに改めて組み直そうかと考えている。ざっと計算してみたところ、軽く20Wは取れそうなので、俺史上最大出力になる予定。とりあえず測定用のダミー抵抗を20Wのセメントから50Wのメタルクラッドに変更した(笑)パーツは用意したので正月休みにでも作業しよう。
これは既存のシャーシやトランスを流用した組み直しだが、上の娘の受験が終わったらドリルの音を立てても大丈夫になるので、久々に一から作ろうかと思ってるのが NL-50 シングル。このブログでもお世話になっている ruri2cat さんからペアで譲っていただいたので、漠然と考えていた 300B シングルを NL-50 シングルに計画を変更した次第。71Aをドライバとしてトランスドライブのモノーラル構成にする予定。オーバーオールの NFB は厳しいので出力段プレートからイントラをまたいで初段に P-K 帰還をかけてみようかなどと回路を考えている途中。OPT は手持ちがあるのでシャーシや電源トランスは買わなければならないが。
他にも考えていることはあるが、当座具体的なのはこのアンプ二点である。この時期であればさすがに鬼も笑うまい。
2011年11月02日 水曜日 c3g プリアンプ
ここのところオーディオに関して何かする気にもなれなかったのだが、大学が学園祭で休みでぽっかりと時間ができたので、久々に工作意欲が出てきた。しかし家には受験生がいてあまりうるさくもできないからドリル作業などは避けたほうが無難だ。ので、既存のアンプの改造にリハビリがてら取り組んでみた。
タンゴの NP-126 を使ったプリアンプを今までに何通りか試してみたがどれも今一つ納得が行かない。現状では 6C5 の単段なのだが、音も靜特性も今ひとつ。そこでもっと強力な球を使ってみようと思い、手持ちで思い当たったのが c3g。説明の必要もない有名な球だが、ドイツの電話用五極管で、ローノイズかつ長寿命が特徴だ。これを三結にすると低内部抵抗ながらμが40ほどもあるという高gm管で、Epは高く取れないがプレート損失が3.5Wまで許容されるのでかなり電流も流せる。Ep-Ip曲線を眺めて動作点を Ep=150V、Ip=10mA、負荷10k としてみる。んで回路はこうなった。そのままだとややゲインが高くなり過ぎそうだったので軽く負帰還をかける。
ソケットを変えて、CRを入れ替えて配線をいじって1時間くらいの作業。実測するとゲインが負帰還ありで約12dB、ノイズはほぼ測定不能、周波数特性面ではやや高域にピークが見られるので若干補正が必要かもしれない。
音質的にはかなり満足。ゲインは必要十分だし、パッと音場が広がってレンジ感もある。c3gとNP-126の組み合わせはなかなかの実力ではなかろうか。
2011年08月18日 木曜日 最近のこと
忙しかったりしておよそオーディオに構っていられない。音楽は聴く。
最近聴いたものをいくつか。
もとはといえば同人音楽だが、エレクトロニカをベースに結構幅が広い。シリアスでいい。
Chords\bermei.inazawa collection
- アーティスト: bermei.inazawa,霜月はるか,茶太,片霧烈火,riya,Annabel,b
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2011/05/04
- メディア: CD
- 購入: 4人 クリック: 31回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
言わずと知れたジャーマンプログレの金字塔的アルバム。
- アーティスト: Faust
- 出版社/メーカー: Rer
- 発売日: 2005/02/08
- メディア: CD
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
マニュエル・ゲッチングとクラウス・シュルツェ。トリップミュージックのはしり?
アシュ・ラ・テンペル・ファースト・アルバム(紙ジャケット仕様)
- アーティスト: アシュ・ラ・テンペル
- 出版社/メーカー: ディスク・ユニオン
- 発売日: 2004/12/17
- メディア: CD
- クリック: 11回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
和製シューゲイザーの代表格だが、サーフだったりもしてミクスチュア的。「特撮」とか絶望先生とか最近ではピンドラとかで有名。
- アーティスト: COALTAR OF THE DEEPERS
- 出版社/メーカー: 日本クラウン
- 発売日: 1998/03/25
- メディア: CD
- クリック: 22回
- この商品を含むブログ (20件) を見る
こんな感じなので、およそオーディオマニア的音楽を聴かないこともあって、現状ですっかり満足している。9月初めの学会が終わったらアンプの一台も作ろうかとは思っているが……。
2011年05月19日 木曜日 U-608
うわ、2ヶ月以上も放置してたのか。地震以降いまいち音楽をゆっくり聴く気分にもなれないまま学期が始まって、もともと学期中はあんまりオーディオのことを考えてる暇もないんだが、先日ひょんなことからタンゴの U-608 を入手したので、これを使って小さなアンプを暇を見つけて作ろうかと考えている。節電(笑)しなきゃいけないし。
非常に古いトランスで、当時は入門用という位置づけだったから、これで自作を始めた爺さんたちも多いのだろう。タンゴらしく中高域の特性は立派らしいが、いかんせん小さいので低域は期待できない。なのでせめて内部抵抗の低い出力管を使いたい(こういう小さなトランスには珍しく2.5kのタップがある)。手持ちの球であんまり電流が必要なくて rp の低い球というと 6S19P があるが、これはミューは低いわバイアスは妙に深いわでなかなかドライブが大変そうだ。逆に低域をすっぱり諦めてペントードで昔懐かしい路線を狙う手もあるかも。間を取って、ECC99 のパラシングルなどというのも考えられるし、6CK4 なども使えそう。いっそ 71A でミニワット?
そんなことを考えてる時期が楽しいのだが、ここのところ妙に自分なりに凝ったアンプが多かったので、単純で適当なアンプが作りたい。かといってそこそこの音も出て欲しい。さて。
2011年03月14日 月曜日 こんな時だから
余震が続いて精神的に不安定な感じ。この先生活がどうなるのかが読めず不安で家での仕事にも手がつかないし、大学に出勤するにも電車が動いてない。
こんな時なので球いじりでストレスを発散する。もっとも大掛かりなことはできないので、震災のまさにその時点で手を付けていたアンプの改造を継続する。SG-205 に差し替えていたシングルアンプの出力管を 6A3 に換装。Philco ブランド(おそらくSylvania 製)でバネ釣りフィラメントのごく古いものと思われる 6A3 が二本あったので。メインのPPアンプとあわせてどっちも 6A3 になってしまった。出力管の負荷を 5k とし、フィラメント電圧とカソード抵抗を入れ替えればいい感じになると踏んで、フィラメントが 6.3V に近くなるように調整し、カソード抵抗を 800+470Ωの合計1270Ωに。これだと Ep が若干高すぎてプレート損失が定格を超えるので、整流管を 83V からソケットごと 5U4G に交換する。5Z3 の手持ちがあったら楽だったんだが。これで Ep=300V、Ip=48mA くらいで出力は4Wほど。NFBが 5dB くらいで仕上がりゲインが 26dB とうまい具合に収まった。周波数特性も 30Hz から 60kHz までほとんどフラット。
音はこのアンプ史上一番いい。やはりオーディオ用直熱三極管に如くものはなしか。
2011年03月13日 日曜日 地震
怖かった。うちは東京だから東北の被害とは全く比べられないが、それでも生まれて初めて経験したレヴェルの揺れで肝を冷やした。ちょうどアンプの測定をしていて、揺れたのですぐに電源ケーブルを引っこ抜いておさまるのを待ったがどんどんひどくなる。もう物が崩れるのを抑える余裕もなく、机の上からは測定していたアンプは落ちるし、棚に置いてあったアンプも落ちるし、ツイータも落ちるし、CDは散乱するしで阿鼻叫喚。家自体にも人的にも大きな被害はなかったが、俺の部屋限定で大変なことになった。
幸いツイータは無事だったし測定していたアンプに差してあった 6A3 も無事。ただ 6P45S が一本割れてしまった。収納箱ごと棚から落ちた真空管の中味も見たところは無事である。しかたがないのでウクライナに 6P45S を1ペア発注した。
それにしても、昼間だったのが不幸中の幸いで、夜だったらベッド脇の棚の上に置いてあったものが寝ている俺の上に落下したわけで、考えるとぞっとする。何をする間もなく津波に流されてしまった人々のことを思うと胸が苦しくなるな。しかし、ちょうど11日の夜に終了するオークションに入札していたのだが、出品者はうちよりもずっと被害の大きな北関東方面の人だったにもかかわらずすぐに送ってくれて、荷物もちゃんと今日届いた。その人にも、運輸やインフラを機能させてくれている人たちにも頭が下がる思いである。その一方でデマや差別的言辞を垂れ流したりいたずらに不安を煽ってる連中もいる。そういうクズが極少数であることを祈るものである。
2011年02月22日 火曜日 小変更
■ 小変更
6P45S アンプだが、まだ若干出力管に流れる電流が多いので、カソードフォロワの Ep を少し下げるべく 6.5k の抵抗を 8.2k に変更する。またカソードフォロワのグリッドに 82pF のコンデンサと 18k の抵抗をぶら下げて補正を行い、一方 NF 抵抗とパラに入っているコンデンサを 270pF に減じた。これで出力段の Ip が 78mA になり、かつ周波数特性も 50kHz までフラットとなった。このあたりが落としどころだろうか。この変更による聴感上の違いはない(笑)
■ さらに小変更
もみじ饅頭さんのアドヴァイスに従い、出力管の第一グリッドをカソードではなくシャーシに落とす。これだけで、Ip が結構減ってむしろ調整の範囲が広がってよい。そのおかげで 6AN8 のアンバランスが顕になったので、新品を5本入手してみたが、両ユニットとも揃った2本なんてのはないので、三極部が揃ったものを選んだ。これで完成形か?
もみじ饅頭@広島
お久し振りです。
水平偏向管の活用例としては、大変な秀作ですね。多くのビルダーは、プレートキャップに感電するのを嫌って水平偏向管を警戒していますが ・・・・・ 。
さて、出力管の動作で、G1はゼロバイアスとして計画されているようですが、実効値は+0.8ボルトです。グリッドの初速度電流が原因です。従って、回路図中のG1は、直接シャーシに接地することで、真のゼロバイアス(+−ゼロ)動作となります。
これにより、プレート電流は僅かに低下しますが、その分だけ
G2電圧を上げることで旨くバランスし、出力管の初速度電流のバラツキは解消する筈です。
商業主義とは無縁の心癒される試作例ですね、大人の趣味に相応しい中身の充実した回路です。
mandana
ありがとうございます。水平偏向管は、オーディオには適さない特性ですが、効率が良く優秀なことは間違いないので、この用法を知ったときは我が意を得たり、というところでした。予想外の好結果に自分でもびっくりです。
G1 についてのアドバイスをありがとうございます。明日にでもG1の行き先をカソードからシャーシに変更してみます。







私は既にリタイアしており安心しておったのですが、まだ「日本原子力学会」に籍があって、呼び出し(無給です)をくって東京くんだりまで出張しました。 ・・・ 作業内容は省略します。
こういう時、帰宅して自室に篭もって半田鏝を握ってニンマリすることは、心が癒されますよね。あまり、他人さまには言えませんが・・。押し付けでご免なさい。
今回の出張では、ネットワークのパーツをゲット、ビンテージ・タンノイ(MONITOR RED)が生き返りました。
これから、元気を取り戻して東北の再建の協力します。
道楽も含めて可能なかぎり日常を回すことで安定を図るのが一番なんでしょうね。冬場の乾燥した空気がいいのか、うちのJBLは好調です。