201252・・・展覧会という形式(新谷記)

展覧会という形式をかりるほどのことか、という問いかけは今もあらゆる個展で
いえる事態である。堀内さんも仕事の合間をぬってこの連載コラムのために
出向いたのであろうから、それで内容的にとくした気持ちになれないときには
そう問いかけたくなるのはわかる。
だけど「新人の作品を観に行くのはADの務めだ」と言っていたので
己を励ましていたように思われる。

そのころ堀内さんの机の上にご本人手作りによる直径20センチほどの紙製の素敵な
時計が置かれていた。時計というかスケジュール計というか。
堀内さんが机を離れる際にどこにいるかを表したもので、円グラフ状になっていて
マッサージとか本屋とか展覧会とかメニューが手描きされており
円の中心には大きな矢印(針)が複数おかれ、それぞれを指しているのであった。
スタッフは留守中の電話や用件にそれをみて対応するのだったが、
そういう超多忙な生活がほとほとイヤになったらしいころには消えていた。

同じページに石元さんのコラムがあったので並べておいた。
石元さんは堀内さんが23歳で「ロッコール」のADになったころから
敬愛してやまない写真家だったから、ここに置くのはふさわしいと思った。
「遊びのなかでほんとうの物をみる」という言葉は考えるヒントになる。

ロッコール創刊号とめずらしく厳しい顔の若い堀内さん。
平塚市美術館での堀内展・1999年・図録より転載)