マンガばっかり

マンガ批評

アイドルを探せ


★★★★
吉田まゆみ1984〜1987まで「mimi」に連載した80年代を代表する少女マンガ。
1987年には菊池桃子主演により映画化もされている。
宮台たちの書いた『サブカルチャー神話解体』に出ていたことから読むことにしたのだが、80年代というものを、ファッションや風俗、大学生たちの感性なども含めてとてもよく表現した作品だと感じた。
もっとも、あの時代を生きていないと、どこが「それ」なのかわからないとは思うけれど…
今になって思うのは、「少女マンガ」とはいいながら、ほとんど少年マンガ/青年マンガとの差を感じさせないユニセックス(ユニジェンダー?)的な内容だなということだ。
ヒロインの藤谷知香子をショートカットにしたあたりに、すでにこれまでの少女マンガが引きずっていたものを切り捨てているところもあるのだが(岡崎京子に似てる!)、吉田まゆみには、「女の子のキモチ」よりも「ワカモノのキモチ」の方を押し出したい気持ちがあったのではないかと思った。
文庫本4巻のカバーには、「チカって、なんか好きになれない」「一途なカンロちゃんの方が好き」といったファンレターもあったとのことで、「主人公という人は、嫌われたことはなかったので、初の〝キライ″を耳にした時、実はちょっと動揺した。ショックだったのでなく、手応えを感じたからだった。〝嫌いだけど目が離せない″――そう勝手に解釈させていただいて、いい意味で読者の期待を裏切っていきたい、と思い始めたのも、この頃だった」と書いている。
さもありなん、と思う。
吉田まゆみは1954年生まれだが、1990年に開始された『東京ラブストーリー』(青年誌「ビッグコミックスピリッツ」掲載)の作者は女性の柴門ふみ(1957〜)、1980年から始まった『めぞん一刻』(「ビッグコミックスピリッツ」に連載)の作者は高橋留美子(1957〜)。
高橋留美子の先見性が際立つわけだが、それにしても彼女たちが男女のジェンダーを越えて「恋愛モノ」を定着させたのは確かなように思う。
(No.818)