君たちに明日はない


「私はもう用済みってことですか!?」リストラ請負会社に勤める男とリストラ候補者の織りなす勇気沸きたつ人間ドラマ。山本周五郎賞受賞作。


自分への戒めを含めた備忘録と感想メモ。


社員の仕事は様々な問題を解決することであって、規定作業を繰り返すだけでは話にならない。よって問題があるとしてそれに対して愚痴を言うだけの人間は不要。どう問題を解決すべきか提案するなりが求められる。これは常々思うところ。


作中に出てくるリストラ候補者の恨み節は現実にもどこかで聞きそうなものがある。何十年間、家族を犠牲にして会社に尽くして来ただの、片道何時間かけて真面目に働いただのという恨み節は筋違い。会社はそんなことを依頼していないし、それは自分の意思決定。会社相手に恩の売り買いのようなものが存在すると思っている人は多いらしい。これだけ結果出したのだからこれぐらいの役得や不正も許されるなどと考えるのも愚か。どれもこれも勘違い。


業績連動給を謳いながらも毎年給与が上がっていく場合、同じ働きをしているだけではその人の費用対効果は下がっているという当たり前の現実を受け止められない人は危うい。昔、少しばかり評価が良かったからと慢心して文句ばかり言う輩は要注意だ。


態度や姿勢を勘違いした年配高給取りに対する組織の処遇は予想以上に冷酷で短気だ。これは現実にも度々目にする。


勘違いの先にあるのは惨めな結末。当たり前に考えておかしなことはおかしいわけで、自分を突き放して認識してやらんといかんという当たり前のことをリストラという舞台装置で語っている。暗いことばかりではなく楽しめる人間ドラマ小説。

君たちに明日はない (新潮文庫)

君たちに明日はない (新潮文庫)