Sig’s Book Diary

関心本の収集

『日本沈没 第2部(上)(下)』

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日本沈没第1部』を読んだのは、いつのころだったか。当時、大陸移動説が単なる冗談ではなく、大陸が移動して巨大地震を引き起こし、日本列島がいくつものプレート境界に位置していることを明らかにしたプレートテクトニクス理論が紹介され、まもなく出版された『日本沈没第1部』は、衝撃的だった。SF小説は現実を先取りしていることをこの作品でも知ることになった。
作品の発表以降、地球科学は物理学と並んで日本のスター自然科学になったのではないか。もちろん、スター自然科学になったというのは、この作品が引き金となったということではない。そうではなくて、一般庶民にとって、地球科学的な知識が日本沈没という想像しがたい姿として提示されたのである。その後、神戸震災によって、地震のメカニズムはプレートテクトニクス理論に基づく東海・東南海の構造地震だけではなく、活断層型あるいは直下型の自身のほうがスポットライトを浴びることになるのではあるが。

さて、作者の小松左京はすぐにでも第二部に取り掛かるつもりであったであろうが、第二部の構想は、地球科学の問題にくわえて、日本人アイデンティティや国土を喪失した日本人社会、さらには国際政治などに関連する事柄が描きこまれなければならないことになって、なかなか日の目を見ることがなかったわけである。第1部出版ののちに明らかにされたプルームテクトニクス理論やマクロな地球環境の変化(温暖化や寒冷化)、地球シミュレーター、さらには、ソ連の崩壊(「日本沈没」の時代設定は、それより前である)や東アジアの状況も含めて、第2部は描かれることになったわけである。

先日読んだ『深海のYrr』もそうなのだが、環境問題を絡めたストーリーは魅力的である。ただ、本作品の中で触れられている人類生存の許容範囲と地球そのものの許容範囲とが大きく異なるという点、これは、重要な視点ではないだろうか。つまりは、人類は地球の支配者では、決してないことであろうか。つまりは、地球は人類の思惑や生活、行動とは、無関係に宇宙的なスケールでのダイナミズムの支配下にあるのであって、全球凍結であれ、温暖化であれ、それは、地球のスケールでは大きなサイクルの一つにすぎないわけである。
これまでなんども繰り返されたきた生命の大絶滅、つまりは、当時生存している種の90%以上もが絶滅し、その後、再び生物の大拡散が起こってきたこと、こうした大状況にあっては、人類は全く無力である。たとえば小惑星の衝突によって引き起こされたというP/T境界の前後の生命種の入れ替わりがそうであろう。ビッグインパクトの結果、恐竜の時代が終わり、細々と生き延びた小型哺乳類がその後の繁栄を享受し、その後、何度も繰り返される寒冷化や温暖化のプロセスによる人口変動などを経験して、現在にいたっているわけである。人類といえども、こうした状況を享受する以外になすすべもなかったわけではなく、現在の自然科学はいかに進歩を遂げたとはいえ、こうした大変化に対応することはできないだろう。

また、そうした、マクロな状況にかかわらず、ミクロな政治状況でパワーポリティクスが相変わらず幅を利かせることもまた、ありそうな話で、本作品でも、また、先の『深海のYrr』でも、アメリカのユニラテラリズム(単独行動的独善)が同様に描かれるところである。一般的な作品の結末は何がしかハッピーエンドに終わらざるを得ないことはわかるが、なにか現実は、そんな風にハッピーエンドには終わらないよな、という感じがしてならない。
本書では、国土を失った日本人による地球シミュレータやメガロフロート、環境に適合した開発などを活用して、再び訪れた氷河期を生き延びる人類がえがかれ、そして、惑星移住で新たな日本人コミュニティを形成しうるのかとアイデンティティ問題は先送りにされるのだが。ストーリーの中でパトリオティズムとコスモポリタニズムの葛藤も描かれるのだが、これら、二者択一の問題でもないようにおもえる。両極の間多様な筋道もあろうかと思う。

日本沈没第1部』も再読してみようかな。

日本沈没 第二部〈上〉 (小学館文庫)

日本沈没 第二部〈上〉 (小学館文庫)

日本沈没 第二部〈下〉 (小学館文庫)

日本沈没 第二部〈下〉 (小学館文庫)

伊豆湯ヶ島「arcana izu」

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湯ヶ島に連泊している。
昼食を取りに西伊豆方面に出掛けたが、海岸線の国道何箇所かでがけ崩れの復旧工事がおこなわれていて、前日の雨の被害が出ていたようだ。

<一口のアミューズ 3種のアルモニー>
アルカナ青汁、茄子のカネロニ、清水・本マグロの赤ワイン浸け焼き
<冷前菜>
ビオファームまつき・インカの目覚めと鮎の燻製、長野・グリーンアスパラガスのサラダ仕立て、トリフのヴィネグレット和え
<伊勢海老料理>
南伊豆産・伊勢海老のナージュ仕立て、カルダモンとクリュスタッセの薫り
<魚料理>
相模湾、活け平目の骨付きロースト、赤軸ホウレン草と天然クレソンサラダ、ソース・エミュリション
<肉料理>
静岡産・和牛ロースのグリエ、山葵添え、椎茸・ソラマメ・姫とうもろこし
フロマージュ
前夜と違うのがシェーブル、他はウォッシュ2種とブルー
<デセール>