まんぷく::日記

2006/11/01(水) 晴れ

[][]立ち読みでもいいから本や雑誌を読んでください 立ち読みでもいいから本や雑誌を読んでくださいを含むブックマーク 立ち読みでもいいから本や雑誌を読んでくださいのブックマークコメント

さっき、近所のコンビニエンスストアで漫画を立ち読みしていたら、突然、隣りに立った店員に「お会計していただきます」と声をかけられた。

(中略)

立ち読みをやめてほしいなら、そう言えばいいじゃん。「それ以上お読みいただくなら、ご購入してもらいます」でもいい。なんの警告もなしに、いきなり「買え」はないんじゃないかと。

Something Orange

それはまた、すごい方針のコンビニだ。

上の記事を書いた人は「たしかなのは、ぼくはもうそのコンビニへは行かないだろうということです」とコメント欄で発言している。このコンビニは、潜在的なお客さんを一人失ってしまった。

逆に言えば、こういう方針を採ることで目先のお客さんが一人減っても、入れ替わりに別のお客さんが二人以上増える目算があるということか。しかしそれは一体どういうものなのか。

本を作る側の自分としては、すでに何度も書いているように、本や雑誌はどんどん立ち読みしてほしいと思う。図書館古本屋はもちろん、ブックオフだってまったくオーケー。その代わり、面白い本を見つけたら、そのことを人に話したりネットに書いたりしてほしい。あと買う前の本は、なるべくていねいに扱ってください。

ただ乗りしかしない人に対しては、「面白いと思ったら次は買ってね」「立ち読みですんじゃう商品でスイマセン」と思う。立ち読みすらされない本や雑誌に比べれば、立ち読みされるだけでも幸せなのだ。

この書き方、本や雑誌を読む習慣を持つ人は「心配しすぎ」と思うかもしれない。しかし、音楽業界がここ数年味わってきた混乱を思い出してほしい。それは出版業界も何年後かに必ず歩くことになる道であり、本の未来を占う貴重なモデルケースである。

音楽業界は、MP3の普及からiTunes Music StoreiTMS)でのネット販売が立ち上がるまで、CDなどにパッケージ化された商品の売り上げを守ることにこだわりすぎた。CCCDなど、過剰だが穴のある著作権保護のしくみは、音楽にお金を払っている人だけが不便になり、ただ乗りの人は引き続きただ乗りできた。おまけに、「CCCDはなにか面倒そうだから買わなくてもいいや」という人も出てきて、売り上げを大きく落としてしまった。

個人レベルでは、音楽は本よりもデータ化しやすい。また音楽の本質は音そのものであって、CDなどのパッケージに入っている必要は実はない。そのぶん、音楽をコンピュータで楽しむスタイルへの移行にストレスが少なかった。

本は基本的に、組み版や手ざわりも含めて成立する商品である。そして流通のしくみは今のところ、紙に印刷して製本した大量の現物を、直接扱う方法にとどまっている。電子ブックとかケータイ小説の市場や電子ペーパーの技術はまだまだこれからだが、いつまでも「まだまだこれから」であるはずがない。本が電子化してゆく将来、レコード会社JASRACのように、既得権益を守ろうとして醜態をさらすことだけは避けたい。

本は音楽と同じ嗜好品であり、もしなくなっても死ぬわけではない。本に気持ちよくお金を出してもらえる環境作りを怠れば、出版業界の方がゆるやかに死んでいくだろう。

「どんな方法でもいいから本を読んでいてほしい」という書き方は、その危機感の表れのひとつである。そして出版業界は、人に読まれるのにふさわしい本を作り続けていかなければならない。

関連記事

この日記の中から、「本を買うこと」について書いたエントリをいくつか、時系列で紹介。

この場での収支は、単純に人件費や交通費を考えると赤字である。しかし本、特に書籍の販売は、1冊が10冊を呼ぶものだ。本を読んだ人が気に入れば、ほかの人に紹介してくれるだろう。紹介された人が興味を持って、本を買ってくれるかもしれない。それのくり返しで、こつこつと売り重ねていく。

まんぷく::日記 - 本の即売

本を作っている立場からすると、どんな本であれ、本を読んでくれるのはありがたい。「本を読んだ方がよいらしい」と考えてくれるだけでもありがたいものだ。

まんぷく::日記 - 「出版業界が狙う”ジェネレーションY”」(ビタミンX)

古書店やブックオフ、Amazonマーケットプレイスで自分が編集した本を見つけたら、「古本屋に売った人はこの本を一度は買ってくれたのだから、それはそれでありがたい」と考えている。

「それでも、古書ではなく新刊を買ってほしい」と思う出版人は、新刊で買いたくなるような本、古本屋へ売る気にさせない本を目指すしかないだろう。

まんぷく::日記 - 「ブックオフは出版界にとって『悪』か?」

ブックオフなどの古書店には、今まで本を読まなかった人を読書体験に誘う効果がある。そういう人を取り込むことで、結果的には出版業界全体が活性化するはずだ。

まんぷく::日記 - 読書体験拡張装置としての古本屋

古書店で買った本でも、それが面白ければどこかで紹介してくれるかもしれず、それが別の読者を呼んでくれるかもしれない。出版社はその場では損をするけれど、長い目で見て得になる可能性もちゃんとある。

まんぷく::日記 - 「献本した本が古書店に・・・」(EDITOR NAVI)

出版業界は業界内で誰が儲けているとか誰が損しているとか考える前に、本を買って読んでもらう機会そのものをもっと増やし、人が本を読むことへの抵抗を減らすことを考えたい。

まんぷく::日記 - 「双風亭日乗 - アマゾン『なか見!検索』って、どうよ?」

古本屋での売買では出版社は儲からないけれど、存在そのものを忘れられる不幸に比べればはるかに幸せなのだった。

まんぷく::日記 - YouTubeと古本屋

「やっぱり本は頼りになる」と思ってもらえるといいなとも思った。立ち読み(=書店や出版社は儲からない)だからどうこうとは思わない。ネットで得られる情報より、本の方が信頼できると思われれば、次は書店で本を買ってくれるだろう。

まんぷく::日記 - 独学で過払い金返還訴訟に勝つ

追記:こんな記事も書いてました。参考になるかと思います。

Xbox360YouTubeが、「嘘を嘘と見抜きやすい」と同時に「本当に優れたものを見つけやすい」状況を作り出している。作る方は大変かもしれないが、いい仕事を目指すのは当たり前だし、いい仕事をすればそのことも伝わりやすい。昔よりはずっとよい世の中ではないか。

まんぷく::日記 - YouTubeとXbox360が「嘘を嘘と見抜きやすい」世の中を作る
2003 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2004 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2005 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2006 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2007 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |