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2009-08-28 サバイバーの方の手記掲載のお知らせ このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

8/22に発売された「婦人公論」に 「レイプ加害者は上司だった。弱い私が格闘した涙の軌跡」が4ページにわたり掲載されています。サブタイトルは「会社の“保身”にも傷つけられて」とあります。サバイバーの方の手記です。


性的描写はなく、淡々と当時の状況を綴られています。ぜひ多くの方に読んでほしいです。

以下、「婦人公論 9/7号 p34〜37」より引用します。



 


 被害に遭ったのは就職して2年目の夏、7月に2回、8月に1回、いずれも同一人物の上司。

 このことを話した人から「なんで逃げなかったの?」「なぜ1回で終わらなかったの?」と聞かれる。これらの疑問は私を追いつめる言葉の暴力以外のなにものでもなく、これが二次被害なのだと思い知った。


「逃げられるわけがない」

「一度レイプに遭ったら、二度目はすべての思考回路が停止する」。

これが私の正直な気持ちである。



こちらに書かれている通り、逃げられるわけがない、男性の力に適うわけがありません。こんなにも当たり前のことが理解されていません。

そして、ダメージのあまり、逃げる余裕さえ、判断能力さえ奪われてしまうのが現状です。


長期的で重篤な被害が潜在化するのは、あまりのダメージに、身を守る手立てをとることもできず、誰にも相談できずサポートを受けられるところがなくどうしていいかわからないこと、

必死で大したことではないと思い、被害のことを否認し必死でいつもどおりの生活を続けようとすること(精神医学的な防衛反応です)、

特に顔見知りで同じコミュニティに属していると、周囲に知られたくないために口をつぐまざるをえないこと、その場(学校や職場)を離れるという行動をおこすことを考え実行する余裕さえないほどダメージを受けていること、等があります。

職場のセクハラも、キャンパスセクハラも深刻です。(セクハラという言葉をここで使うのは不適切かもしれませんが、犯罪行為でしかないものもセクハラ事件とされているのが悲しい現状です)


また加害者に脅されているということも多々あります。地位を利用した脅しだったり、写真や映像をばらまくという脅しだったり。本当にやるせない気持ちです。

何度か顔見知りによる被害が多いが、警察はその実態を把握できていないと書きましたが、そういう事情もあるのです。


私はいわゆる「事件」として相手が逮捕され刑事裁判にかけられた性被害以外にも、性的な被害を受けたことがあります。


例えば。

人気者で中心的な存在だった同級生に、レイプ未遂のようなことをされました。ですが本当のことは言えず、「無理やりキスされた」ということにし、そしてそのことさえも親しい人にさえ打ち明けられませんでした。

何でもなかったんだと必死で思い込もうとしていました。ですがその人とはその後口をきくことはできなかったし、廊下ですれ違うとき等も、苦しかったです。そして、事実を知った人もそのくらい、という認識で、より、辛かったのを憶えています。


また、「事件」に遭った後、何度も被害に遭うことはないと思っていましたが、車にひきずりこまれそうになったりしたこともありました。幸い逃れられましたが、ほんの一瞬の差で、どうなっていたかわかりません。車のナンバーを見る余裕なんてありませんでした。あまりに手慣れた手口に、他に被害に遭った女性がいるのではないかと、このことも、思い出すととても苦しいです。


また、この手記と似た状況だったこともあります。

被害後ろくに働けなかったのですが、なんとか契約社員の口を見つけ、必死で一生懸命働いていたとき。上司にホテルに連れ込まれかけました。情けないことに、私は「えっ」と声を発したきり思考回路がショートし、凍りついたように身体が固まり動けなかったです。

それ以上はされませんでしたが、それまで全く、私のことを女と見ていないという言動をずっとしていたので、そういう対象とされていることさえ、全く思いもよらないことでした。例えば、自分の好みのタイプや、他にも男同士で話すような話題を私にしていたので、私は自分がセクシャルな対象と見られているとは思ってもみませんでした。

翌日、私はさらに上の上司との面談があったため、その件で、忙しい勤務時間中には話せず食事をしながら話した後のことでした。

なんとか無事に帰りつきたいため、驚かれるかも知れませんが私も冗談と受け取っているかのように振る舞いさえしたのです。本当はとても怖かったのですが。


なんでもなかったことにしたいため、たいしたことではなかったと必死に思い込もうとし、それからの仕事でも何事もなかったかのように接していたつもりでした。

それでも、全く今までどおりということはできず、今までのようにたわいのない話をすることもできなくなりました。私の態度が変化したのが気に入らなかったのか、上司は仕事上の嫌がらせを始めました。


私は退職するまでこのことをさらに上の上司に言えませんでした。ホテルに連れ込まれかけた翌日の面談でも話すことは出来ませんでした。必死で冗談とすませようとしていたし、また、そのしばらく前に、同僚の男性(ちなみに婚約者がいた)にもしつこく誘われ困っていることを相談したことがあったからです。

こんなに短い間にそういうことが立て続けにあると、私の方が問題視されると思いました。

同僚の男性の件を相談したとき、女性上司は「あなたがかわいいから」と言い、女性上司から話を聞いた男性上司は「男性だからそういうこともあるかもね」と発言したと聞いていたからです。

そしてこの二人は、社内でも人望があり、私もお世話になっていたため、彼らがおかしいのではなく、自分が悪いのかと責め続けました。

そのことをふとしたきっかけで知り、唯一味方になってくれたと思っていたのが、先述した上司で、あれこれ同僚と二人の仕事がなくなるよう配慮してくれたりなどし、私は信頼していました。ですが今思うと最初から計画的だったのだと思います。見抜けないようにしていたのです。

もしあのとき、更なる性被害を受けていたら、私はどうなっていたかわかりません。

この手記にもありますが、一度被害を受けると絶望しきって、何も考えることも感じることもできなくなります。


また、「事件」として裁かれた件でも、加害者がすぐに自宅を出て行かなかったのがとてもとても辛かったです。

仮にそのまま加害者に居座られ自宅を占拠されたとしたら。

絶望が深すぎて、逃げることも諦めていたでしょう。あまりに怖ろしい異常な人でした。

考えることさえできなくて、自分の感情を感じ取ることさえできなくて、何より恐ろしすぎて、言いなりになっていたでしょう。必死で、たいしたことはないのだと思い込もうとしたり、私のことをそれだけ好きなのだという気持ち悪いことさえ、勝手に思い込もうとしたかもしれません。

こちらの手記にもあるように、力では適わないのですから 「逃げられるわけがない」ですし、「一度レイプに遭ったら、二度目はすべての思考回路が停止する」のです。


たとえば私は事件後、監禁されていたとしても、殴られたり脅されたりして、おそらく食事を作れだの家事をしろだの命令され、言いなりになるしかなかったでしょう。たとえ逃げたとしても完全に逃げることは不可能なのですから。さんざん自分の友人にさえ危害を加えられ、実家も把握され、脅されていたのですから。

例えば食事を作る買い物に行かされたとしても助けを求めることはできないほど深い絶望にいたと思います。こういう監禁もあるのです。

何も感じることができない感情が麻痺した状態になりますし、どうしたらいいか考える力も判断能力も奪われてしまうのです。


サバイバーからの手紙にあるように、重篤で長期的な被害ほど、認められません。本当に、紙一重だと思い、やりきれない気持ちです。


今回、婦人公論に載っている手記には、サバイバーの方の退職を思いとどまるよう説得したのに、加害者を会社にとどまらせる会社の保身体質に対して、カウンセラーの方が介入されたことが書かれています。これは皆さんに広く知ってほしいので、こちらも引用させていただきます。


 


 ついに管理職をカウンセリングルームに呼んで、「カウンセラー対管理職二人」で直接話し合う場を持つ運びとなったのだ。


 カウンセラーは 「今の彼女の心の状態はこういう状態です」 と、ルーズリーフの紙をクシャクシャに丸めてポイッと投げたそうだ。そう、私の心は、乱暴に丸めて潰された紙のようになっていた。


 「元に戻そうとしてすぐに広げようとすると、破れてしまいます。ゆっくりゆっくり開いていくしかないのです。でも、元に戻ったように見えても、皺が必ず残ります。これが心の傷なのです」


 このカウンセラーの語りで、管理職はやっと私の傷の深さと重さを理解したようだ。(略)

ところが、休職中も心は休まることはなかった。加害者に会わなくても襲われるフラッシュバックや悪夢、うつとの闘いが続いた。これは一生かけて背負っていく問題なのだと覚悟した。




乱暴に丸めて潰された、クシャクシャになった紙のような心。

元に戻そうとすぐに広げようとしたら破れてしまう。

ゆっくりゆっくり開いていくしかない。

元に戻ったように見えても、必ず皺が残ってしまう。


とても、納得のいく、悲しい、そして的確な説明だと思いました。

周囲に理解されにくいことを身を持って体験した身としては、被害に遭われた方の周囲の方にも、ぜひ読んでほしいです。


最後にこう書かれています。



 一番つらかったのは「孤独」だった。事件の記憶が蘇ると死にたくなる。だけど、さらに性犯罪被害者を苦しめるのは、周りの反応やそれに伴う感情の嵐。(略)


 性行為とは何だろう。考えるたびに涙がとまらなくなる。過去につきあっていた彼氏と関係を持ったことはある。同じ行為なのになぜ汚いと思い、思い出すと恐怖を感じ、息苦しくなってパニックに陥るのだろう。今後好きな人ができても、順調に交際が進むとは到底思えず、苦しむに違いない。


 今回投稿した理由は、事件に区切りをつけたかったからである。「忘れる」のではなく整理して、記憶に縛られたり囚われたり引き戻される連鎖を断ち切りたかった。あえて過去の記憶や弱さと対峙するという苦しい作業を行い、回復していくと信じて。


 なぜ私がこういう目に遭ったのか答えを捜していたが、いまだに見つからないし、答えはないのかもしれない。いまは加害者へ思いを伝えればこの気持ちを手放せるかもしれないという期待を胸に、「出さない手紙」をしたためてみたい。自分を取り戻すために。



 「加害者へ ― あなたは職場を裏切り、家族を裏切り、部下である私を裏切りました。つらかったです。初めからすべてが仕組まれていたのではないかという疑念。最初の一年の信頼関係が根こそぎ崩れたこと。これらが私を苦しめます。あなたは、パワーをコントロールして私を心理的に支配しました。でも私はそれに気づかず、むしろ頼っていた部分もありました。それは私自身にも問題があり、自己肯定感が低かったと思います。


 管理職同席のもと、あなたが私に謝罪した日。私は 『人間である限り、今が一番楽しいと思う権利があるはず』 と口にしました。これはカウンセラーが私を励まして言ってくれた言葉。あなたも職が変わってそう言える日が来ることを願っています。だけど周囲を騙し、自分を騙し続けてきたこと、それは命のある限り問い続けてほしい。


 もがき苦しんで、失くしてしまった自分を必死で捜してきました。希望が持てずにろうそくで足下を照らすように暮らし、泣いて泣いて涙が涸れるまで泣きじゃくり続けたあの体験を、いつか人のために役立てたい。性犯罪の予防教育に携わりたい。そう心に誓っています。それが実現したとき、自分と徹底的に向き合う時間ときっかけを与えてくれたことに感謝するのかもしれません」



「人間である限り、今が一番楽しいと思う権利があるはず」、この言葉は胸にズシリときました。


今が一番楽しいと思う権利、それが奪われてしまうのです。

何も感じない、何も楽しくない、自分はゾンビのようだと、この手記にもありますが、生きているという感覚がなくなるのです。自分だけ白黒のようだと思った感覚が私にもありました。

現実感がなく、ひどい鬱状態。恐怖によるパニック。過呼吸など。挙げるときりのない身体症状に苦しみます。

今はこうしていますが、あまりにひどい苦しみです。



 加害者に会わなくても襲われるフラッシュバックや悪夢、うつとの闘いが続いた。これは一生かけて背負っていく問題なのだ。


とも書かれています。


私も、傷は薄くはなっても、消えることはないように思っています。

性被害は、心をもこんなにも蝕むものです。


多くの方に読んでいただければと思い、ご紹介させていただきました。ぜひ全文、通して読まれることをおすすめさせていただきます。


手記を書かれた方、掲載のことを教えてくださった方、ありがとうございました。

読ませていただいて、救われたような思いです。多くの方がそう思うと思います。

この場を借りて御礼を申し上げます。


婦人公論 2009年 9/7号 [雑誌]婦人公論 2009年 9/7号 [雑誌]
(2009/08/22)
不明

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