新JISかな規格書の補完・「供試装置による4段配列とは何を指しているのか?」

(参考: http://www.ykanda.jp/input/jis/jis08.jpg)
 みのりさんから頂いたコメントに絡んで。


 新JISかな規格書において、「4.2.2.指の運動特性について」で示されている鍵盤配列のうち、供試装置(1)の鍵盤配列概要を転記します。


 ただし、この供試装置の型番および測定時構成は「無料公開情報には存在していない」ので、この点については無視して「普通のJISキーボードを同じ理屈で並べ替えした場合の概要」のみを示してみます。この方法であれば「新JISかな規格書の読み下し」で通りそうなので、ここにそのまま書いても大丈夫でしょうから(※つまり、供試装置は普通のJISかなフルキーボードを搭載しているわけではない、ということ)。
 細かな差異は知らなくとも問題ない気がするのですが、詳しく実験内容を知りたい方は、カナタイピストにおける指の運動特性について(1983年7月13日、有料) をご覧ください。


 なお、この説明を読む上では次の約束事を頭に入れておくと良いかも。

  • 「○T型」とは、「上から○段目」に「JISかなTop(最上段)」のキー列を置いた「型」、ということらしい。
  • 「A段〜E段」というのは鍵盤配列を「下」から数えたもの。
    • E段は「1234567890-^\」なの最上段。
    • D段は「QWERTYUIOP@[」などの上段。
    • C段は「ASDFGHJKL;:]」などの中段
    • B段は小指シフトキーや「ZXCVBNNM,./_」などの最下段
    • A段はスペースバーなどの機能キー段


 「上から1段目にJISかな最上段がある」1T型4段かな配列。

ぬふあうえ おやゆよわ ほへー
 たていすか んなにらせ ゛゜
 ちとしはき くまのりれ けむ
 つさそひこ みもねむめ ろ

□□ぁぅぇ ぉゃゅょを □□□
 □□ぃ□□ □□□□□ □□
 □□□□□ □□□□□ □□
 っ□□□□ □□、。・ □

 「上から2段目にJISかな最上段がある」2T型4段かな配列。

たていすか んなにらせ ほへー
 ぬふあうえ おやゆよわ ゛゜
 ちとしはき くまのりれ けむ
 つさそひこ みもねむめ ろ

□□ぃ□□ □□□□□ □□□
 □□ぁぅぇ ぉゃゅょを □□
 □□□□□ □□□□□ □□
 っ□□□□ □□、。・ □

 「上から3段目にJISかな最上段がある」3T型4段かな配列。

ちとしはき くまのりれ ほへー
 たていすか んなにらせ ゛゜
 ぬふあうえ おやゆよわ けむ
 つさそひこ みもねむめ ろ

□□□□□ □□□□□ □□□
 □□ぃ□□ □□□□□ □□
 □□ぁぅぇ ぉゃゅょを □□
 っ□□□□ □□、。・ □

 「上から4段目にJISかな最上段がある」4T型4段かな配列。

つさそひこ みもねむめ ほへー
 たていすか んなにらせ ゛゜
 ちとしはき くまのりれ けむ
 ぬふあうえ おやゆよわ ろ

っ□□□□ □□、。・ □□□
 □□ぃ□□ □□□□□ □□
 □□□□□ □□□□□ □□
 □□ぁぅぇ ぉゃゅょを □


 なお、この中には新JISかな規格書において、「4.2.2.指の運動特性について」で示されている鍵盤配列のうち、供試装置(2)〜(3)の鍵盤配列については、何ら記述がなされていません。


 後に出たカナタイピストにおける指の運動特性について(続報)(1986年11月12日、有料) だけを見ていると、

  • JIS C 6236(JIS X 6004)の1〜2年前に、奇妙な(段数不明の)鍵盤配列を用いたテストをしている

ことは目に付くのですが。
 ちなみにこの奇妙な鍵盤配列、実は文献中にはアンシフト側しか示されていません(というか、図表の項目名として存在しているのであって、鍵盤配列としては提示されていない)。
 そのままコピーするわけには行かないので概要を一言で説明すると、

  • NICOLAかなを少々弄って、上段(D段)右端にあった濁点・半濁点を右手中段(C段)付近に置いたもの

だったりします。
 ……配列から想像する限り、たぶん最上段(E段)へのカナ割り当てはないですね、これは。
 もっとも不思議なのは、なぜにここで「濁点を逆手親指キーで指定することを前提に設計されている」配列を基にした「3段供試配列」を測定に使用したのか?ということですね。
 だいぶ元配列の基本設計を無視(NICOLAでの1シフトモード利用は本来エミュレータ環境用の緊急避難用)しているようにも思うのですが、その理由についてはよく解りませんでした。


 とはいえ、NICOLA似の配列が(新JISかな配列規格書における)供試装置(2)〜(3)の鍵盤配列であったのかどうかという点についてはまったく書かれていないので、正直言ってこれは解らないですね……もしかすると途中で作成された「JIS C 6236(JIS X 6004)のベータ版配列」であったのかもしれませんし。
 この点については、却って謎が深まってしまったかもしれません。


 ちなみに、供試装置(1)における4段配列については、1T〜3Tまでの配列が「Z」位置に「つ/っ」を持っています。
 そのため、Zのキーが不当に高評価を受けた可能性はあるかな……と想像していたりします。
 もっとも、最終決定には測定値だけでなく人力評価も参考にされている( http://www.ykanda.jp/input/jis/jis10.jpg )ので、今までの「です・ます問題」に関しては「人力評価」の結果が多分に絡んでいる可能性もありそうです。