問題です。次の要件を満たす「ただひとつの」けん盤配列は、設計可能でしょうか。

  • 「左手だけを使って文字入力したいという人」と「左手をだいぶ多めに使って文字入力をしたいという人」と「左手をすこし多めに使って文字入力をしたいという人」と「左右をほぼ均衡に使って文字入力をしたいという人」と「右手をすこし多めに使って文字入力をしたいという人」と「右手をだいぶ多めに使って文字入力をしたいという人」と「右手だけを使って文字入力をしたいという人」の誰にとっても満足できる【ただひとつの】けん盤配列。
  • 上記を満たしつつ、「連続シフト方式の親指シフト入力法を使いたいという人」と「非連続シフト方式の親指シフト入力法を使いたいという人」と「文字キー同士同時打鍵の入力法を使いたいという人」と「同時打鍵入力ではない方法を使いたいという人」の誰にとっても満足できる【ただひとつの】けん盤配列。
  • 上記を満たしつつ、「清濁分置の入力法を使いたいという人」と「清濁隣置の入力法を使いたいという人」と「清濁同置の入力法を使いたいという人」と「清濁分離の入力法を使いたいという人」の誰にとっても満足できる【ただひとつの】けん盤配列。
  • 上記を満たしつつ、「カナ系の入力法を使いたいという人」と「行段系の入力法を使いたいという人」と「速記系の入力法を使いたいという人」と「漢字直接入力系の入力法を使いたいという人」の誰にとっても満足できる【ただひとつの】けん盤配列。


 実はこれ、入力効率や使いやすさを完全無視してもよければ、【片手入力配列を鏡面配置へと展開したもの】を下敷きにして、「要件を満たすけん盤配列」そのものは設計可能……なはずなのですが、少なくとも「既存のほとんどの配列よりも、使いにくい」代物になるはずです。
 そもそも「カナ系の美味しいところを捨てるうえに、行段系の定義を片っ端から漢直定義に奪われて、そのくせ漢直部分もきれいに実装するのは難しく、しかも速記定義がかぶるからロールオーバーは絶対にできない」という、各入力法のうち「制限・制約」の部分が丸かぶりになってしまうわけで……けん盤配列の設計にあるべき「何を捨て、何を我慢して、そしてどういう利点を得るか」という設計バランスが、まったく組み立てられない最悪の状態になるわけで。
 ……って、そもそも「カナ系の美味しいところを捨てた」時点でカナ系じゃなくなる……ので、結局「全ての条件を満たす解」は無いのかorz。


 ちなみにこの問題、「情報処理装置用キーボード配列」がらみで該当部署にキャストしてます。
 「イマドキのけん盤配列」が、どうやって設計されているか……というのをグダグダと解説するよりも、こういう話を出して現状を説明するほうが手っ取り早そうな気がしましたので。
 ……向こうでの調査開始が遅くなればなるほど、「設計済み評価打鍵前のけん盤配列」と「評価打鍵まで済んだけん盤配列」が増えていくわけで……果たしてどうなることやら。


 ……いや、それ以前に「こんなに荒い分類」だけでけん盤配列が語れれば、話は単純でいいんですけどね……2文字の1交換だけで致命的な問題が出る場合すらある「けん盤配列」が、こんな荒さで語れたら苦労しなくて済むのだけれど。
 #【飛鳥カナ配列→かえであすか】とか、【NICOLA(親指シフト)→かえでにこら】のように、「ある視点では似てるのに、設計意図は全然違うものになってしまっている」例について、一体どういう解説が可能なのかと悩むこともあって……。