『ローラーガールズ・ダイアリー』(ドリュー・バリモア/2009)


銀座シャンテ・シネにて楽しみにしていたドリュー・バリモア初監督作品。思わず立ち上がって「ロックンロール!」と叫びたくなるような、スクリーンの女優たちと手をつないで踊りだしたくなるような、痛快な作品だった。横一列に並んだ化粧台に向き合う白いドレスを着た少女たちの背中にシネスコサイズのカメラがスーッと寄るファーストショットから観客のココロをグイッとつかんでは、3分間のポップミュージックの魔法をこれでもか、と画面にまぶす。少女(17歳!という設定がモノスゴク活きているじゃないか!)2人が両親にウソをついて初めてローラーゲームの会場に向かう車中にラモーンズが爆音で響く。エアーギターと絶叫する少女、車から降り立った少女の爽快な足の滑り、大盛況の会場を上昇するカメラ。この一連の魔法にかけられた画面連鎖がもたらす多幸感といったら!いざ、反抗と待機と屈辱と許容(そのメマグルシイ速度こそが青春だ)の戦場へ。そう、全ての始まりは控え室のメイクアップだった。このメイク室は物語の終盤、強度を堪えた美しい反復をみせる。線の細いエレン・ペイジのいくらでも称賛したいキュートな笑顔と逞しさ。Make-up!Do it alright?



エレン・ペイジのチームメイト=ドリュー・バリモアが何の前フリもなく突然馬乗りになって男をボコボコに殴っては、「彼ってドMなのーー、ガッハッハッハー」と豪快に笑うシーン(本気で爆笑しました)のように、ナスティな身振り=反抗はとことん愉快に。ランドン・ピッグのようなUSというよりはUKなイケメンロックスターとの焼かれるような恋を表裏一体の身振りを忘れずロマンチックに。ガールズファイトはとことん過酷に。エレン・ペイジは壁にふき飛ばされる(カット割ってない。リアルファイト)。ドリュー・バリモアのひとつひとつの演出/アイディアは冴え渡っている。ここに処女作で一気にウェス・アンダーソンと肩を並べてしまったかのようにさえ思えるポップミュージックの魔法が並走する。音楽が少女の予感や準備や待機の絶妙な間にスッと滑り込んでくる。エレン・ペイジとランドン・ピッグの初めてのデート、車の上で仰向けになりながら二人が唄うシーン。空に向かって恋人たちは同時にクラップする。空を見上げて手を叩く。まるでポップミュージックの魔法は(二人の)手の鳴る方にだけしか響かないんだと言わんばかりに。アウトテイクのドリュー・バリモアローラーゲームの会場で「さぁ、みんな音楽に合わせて!」と演出しているじゃないか。このグルーヴィーさはただごとではない!


ローラーガールズ・ダイアリー』は私たちが3分間のポップミュージックの魔法をまだまだ信じていいんだということを教えてくれるかけがえのない映画だ。魔法は世代を超える。17歳は一度限りであって一度限りではない。エレン・ペイジが敵役のジュリエット・ルイス(!)と交わすハイタッチが何よりの証だろう。必見!そしてドリューの新たな船出にハイタッチ!


Do you believe in Magic?


大プッシュしたいので、以下、素敵な予告編。

以下、『ローラーガールズ・ダイアリー』公式サイト。
http://roller-girls.gaga.ne.jp/

Whip It

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「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」

岡崎京子に強い思い入れがあるすべての人と同じように私にとっても岡崎さんは「著作をすべて読んでます」では済まされない存在です。だから昨日の小沢健二のライブの報告に胸がいっぱいになって泣いたあげく言葉を失くしました。岡崎さんのある意味で止まってしまった、でも確実に(きっと変わらない)ヤンチャな微笑みと共に動いている時間。オザケンが意を決して動き出した時間。遠くに思いをとばすことしかできないです。夜に散歩をするときは今でも岡崎さんの絵を思い出している。

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね

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リバーズ・エッジ 愛蔵版

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